1988年4月発売
キナくさいとは思った。だが依頼人はすこぶるつきの美人、しかも同業者ときている。男として、あとへは退けない。依頼は、私の故郷にいるらしい娼婦殺しの犯人の捜査に力を貸してもらいたい、というものだった。私は依頼人の女探偵パメラとともに故郷を訪ねた。が、男の正体をつきとめても、パメラはなぜか無関心だった。不審に思って調べてみると、問題の犯人はとうに逮捕されていたのだった。となると、パメラの狙いは何なのか?現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンのオフ・ビートな活躍を描く話題のシリーズ第一弾。
ルポ・ライターの失踪、怪文書、東京都知事狙撃事件…。西新宿に探偵事務所を構える沢崎が立ち向かう難事件の背後には巨大な陰謀が隠され、鮮やかなラストシーンに向って物語はスピーディに展開してゆく。レイモンド・チャンドラーに心酔する、ジャズ・ピアニストの著者が2年の歳月をかけ完成させた渾身の処女長篇。いきのいい会話と緊密なプロットで贈る、期待の本格ハードボイルド登場。
マサチュセッツ州のど真ん中に小さな町ホイートンで、コカイン密売の調査報道をしていた新聞記者が射殺され、睾丸を切り取られるという事件が起こった。この無残な殺害事件の調査を依頼されてスペンサーは勇躍ホイートンへ向かう。そしてスペンサーの調査が進むにつれ、三人の女性が浮かび上がってくる。果して事件の真相をにぎるのは誰か?そうこうするうち新たな殺人事件が起こり、スペンサーの身にも危害がおよぶ。そこでスペンサーは恋人スーザンと盟友ホークに応援を求めるが…。何十億ドルという規模のドラッグ・ビジネスの世界に挑む私立探偵スペンサーの活躍を描く、人気シリーズ第14作。
帝和医大附属病院手術部の雨宮博子は、有能なナースとして高い評価を得ている。特に、第1外科部長で消化器外科の権威である苅谷教授は、野心家の博子にとってなくてはならぬ存在であった。その苅谷が、政界の長老の手術中、突然よろめき、メスを落とすというアクシデントが起きた。苅谷の健康に疑惑を抱く南雲助教授に反撥を感じながらも、博子は不吉な予感に襲われる。会心の長篇医学ロマン。
幕末の京。仁孝帝の没後にその皇女として生れた和の宮は、有栖川家の若宮・熾仁親王と婚約し、興入れの日を楽しみに待っていた。だが、公武合体を狙う岩倉具視らによって、この婚約は覆された。二人の宮は、幼少より和の宮に仕える夕秀の手引で駆落ちを図るが果たせず、和の宮は将軍家茂に嫁した。家茂の病没、十五代将軍慶喜による大政奉還の後、二人は江戸で再会を果たすのだが…。華麗なる長篇悲恋絵巻。
保険調査会社〈トリプルI〉に所属するウルフ・ラニハン。マンハッタンでは少しは知られたタフな調査員だ。おやじは元海兵隊中将のデヴィッドスン。得意先は保険会社。保険金が支払われる前に、キナ臭いところがないか調査するのがウルフの任務だ。女には弱く、バーボンにも目がない。ヤバイことだって平気でやってのける、ろくでなしウルフが手がけた13の事件を一挙掲載。本邦初訳。
世界放浪の果てに、日本に漂いもどった青年と、自らの青春を持て余した家出娘…。都会の雑踏のなかでの一瞬の出会い、同棲、出産。小さい生命がもたらした天と地の輝きのなかで、若い二人が抱きとめた、愛と性と死と大自然の讃歌。野間文芸新人賞を受賞した表題作の他に、九州南端の港町に住む少年の眼を通して著者の原風景を形象化した処女作「行者シン」を収めた、文芸賞作家の代表作。
行方不明になったイギリスの科学者ミッチェルの写真がスイスのグラビア雑誌に掲載された。だが写真のミッチェルは巧妙にメークをほどこして生きているように見せかけた死体であった。敵を欺く策略か?見破られるのを予期した挑発か?-太陽光線を瞬時にエネルギーに変換する発明をめぐって、イギリス情報部と第三国スパイとの虚々実々の駆け引きと暗闘。古典的スパイ小説の傑作。
昭和三年、『週刊朝日』の懸賞小説に入選、のちに物議をかもした『芦屋夫人』を始め、耽美派文学の真髄に迫る珠玉短篇集の復刻版。伏字部分は、すべて注釈つき。即日発禁処分となった幻の話題作、半世紀を経て、ここに完全収載。
夫が多忙と出張で愛欲を満たされない妻の美那子。彼女は恵里子との甘美なレスビアンの快楽に浸っていた。美那子を夢中にさせる恵里子は、芸能プロダクションを隠れ蓑に会員制クラブ「火の館」を経営していた。そのクラブこそ、女を次々に誘拐し性の奴隷に調教して政界に送り込む闇の組織だった。組織の罠に陥り、恵里子との倒錯した性愛に溺れ、行方不明となった美那子。やがて、彼女を探す妹の香世は、手掛かりを求めて恵里子と組織の中に飛び込んだ。そして、めくるめく愉悦にふるえながら元大物政治家の計画を知るが…。長篇官能小説。
僕、冴木隆。都立フツー高校3年。涼介親父がやってる探偵事務所のアルバイト探偵ってワケ。今回、内閣調査室副室長の島津さんから依頼された仕事は、来日する東南アジアの島国ライールの王女ミオの護衛だった。でも、政情不安に加えて、高齢で病弱な国王チャウモット3世の王位継承をめぐって謀略渦巻くお国柄。政府筋に雇われた殺し屋の「ドリル」と「ヒューズ」が僕たちを狙って暗躍したかと思ったら、間隙をぬって「カマル教団」がミオを本国に連れ去ってしまった。愛するミオを追って、僕と親父はライールに飛んだ、のはいいんだけど…。オチコボレ親子探偵のドタバタ・アクション!
『竹の子探偵局』は美貌でセクシーな弥生と陽気なアシスタントの則子の二人だけだが、弥生をリーダーとする各国の要人の子女ばかりで構成された竹の子族“世界席捲”の協力で内閣特別調査局が抱える難事件を次々に解決してきた。今回新たに特調局より持ち込まれた事件は、中南米から侵入してくる麻薬のルート解明と組織の壊滅だった。弥生と則子の二人が仕組んだ罠、その驚くべき結末!?翔んでるギャルの痛快ミステリー。
東京・渋谷で画廊を経営する村上康雄は、同じビルの喫茶店のレジ係・斎原茜が絵を描くことを知り、急速に恋に陥ち、結婚することになった。ステーション・ホテルでの挙式の当日、康雄は、この結婚になぜか反対する茜の両親とはじめて会った。気まずい雰囲気のうちに、結婚式が始まる直前、茜は、ウェディングドレスのまま、忽然と消えた。いったい何事が…。失意の康雄は、茜の過去を何一つ知らないことに思い当たり、茜の故郷・山形県温海温泉に向かった。そこで知った衝撃の事実!さらに戦慄の殺人事件が。直木賞受賞の女流が、北国の旅情と、花嫁失踪の謎とを見事に融合させたミステリー秀作。
京都の春を彩る「ミス振袖コンテスト」。その審査員に選ばれたキャサリンは、会場で「3・16」と書かれた謎の紙片を受けとった。3番の女性が突然倒れ病院へ。16番の女性の運命は!?しかし大会は強引に進められ、優勝者に王冠がかぶせられた瞬間…!本格推理の醍醐味に満ちあふれた、名探偵キャサリン傑作集。
捜査も遊びも恋愛も、目一杯楽しんじゃう孔雀警視・扇野笙子。今度の特別任務は、政変真っ只中のパナ共和国秘密警察長官の護衛だ!せまる暗殺団の魔手、火を噴く笙子の挙銃!長官はゼッタイ守ってみせる。だって彼って美しくてかわいくて…。不敵でセクシーな笑みを浮かべて、ご存じ孔雀の息もつかせぬ大活劇。パート11。
一流企業のエリートサラリーマンだった神野泉と菱田隆三は、あやしげな不動産会社の新人研修会で初めて知り合った。そこで思わぬ大金を手に入れた二人は、かつて自らをワナに陥れた取り込み詐欺の完全犯罪を計画、被害者から加害者へと変身した…。実際に起きた日本最大の知能犯罪に鋭く迫る長編力作。
資産家、鍋原家の主、栄造はガンに冒され療養所で伏している。留守宅は、長女の左多子夫妻、長男の孝夫、高校生の謙二で守っている。ある朝、謙二の部屋で見知らぬ男が死んでいた。そして孝夫、謙二は行方不明…謙二のライダー仲間矢崎らは捜索に乗り出した。多彩な登場人物と巧妙なトリックで魅了する著者渾身の新境地。
針持天八、48歳。勘がすべての誇り高き迷探偵。酒と女が大好きでひたすらマイペース。奇想天外な頭脳を持った彼には、これまた摩訶不思議な依頼が持ち込まれる。マンションに1人住まいの女性から、いたずら電話の調査依頼があった。電話の内容は、針持が大好きな“あの最中”の女の声。そして、ことは殺人事件にまで発展。
1987年、CIAは、ニカラグアの反政府組織〈コントラ〉を支援して、サンディニス政権を叩こうとしていた。窮地に陥った政府は、ソ連原潜キーロフを略奪。核ミサイルを米本土に向けた。アメリカはニカラグアから手を引け!そして、この危機の渦中には、幼い頃からテロリストとして手を血に染め、今は敵味方に分かれて闘う、名門セグラ家三兄妹の姿があった…。-政情不安な中米を舞台に展開するポリティカル・サスペンス。