1988年7月1日発売
神田川沿いの夜更けの寂しい道を小道具屋の喜三郎が刀箱の包みを背に歩いてきたところへ、山岡頭巾に面を包んだ怪しの浪人が出現した。峰打ちに斬られて刀を奪われたこの男を救ったのは、柳橋の芸妓お恵と白羽二重の着流しに朱鞘を落とし差しにした若侍であった。“気まぐれ峻太郎”と名のった若侍は、実は北町奉行白木左京の一子であった。若さま峻太郎がまき込まれた宝剣粟田口国綱をめぐる怪事件とは?直参4千石の大身駒木根大内記の用人仙石修理と愛妾おいくノ方とがたくらむ陰謀とは?黒羽二重を着流しにした殺し屋、剣客土門戒九郎と気まぐれ若殿峻太郎の対決は…。
東京浅草一帯のテキ屋の大元締笠松源蔵の跡取り鉄平は、テキ屋渡世を嫌うでもなく、といって松源一家の名跡を継ごうともせぬ、時勢に背を向けた一匹狼のインテリやくざだ。背中一面に散らした朱彫りの桜、人呼んで“朱桜”の鉄平の生まれついてのやくざな血は、一切の非道を許せない。やくざ渡世は“仁義”の2文字が守り本尊!定法破れば血で血を洗う、侠気血潮が煮え滾る。
かつて京都府警を戦慄させた“死人使い”で暴力団瓜生組の息子義龍が、名門敬神高校に入学した。時を同じくして中東ヨルダンからアブダル・パシャが転校して来た。それが古都の夜を恐怖に彩る暗闘劇の序曲となった。美人教師轟梨江子の死霊化と、義龍に送りつけられた20を超える同級生の死体。謎の道士の出現と彼を執拗につけ狙う妖鬼陣吾座竜。はたして、母葉子が願う義龍が継ぐべき“闇世界の覇王の座”とは何なのか?そして彼の命運を握る美少女雪絵の存在の意味とは?ベストセラー『魔界行』で読者を魅了した第2の主役を得て、妖悪の世界を描くファン必読の問題作ここに誕生。
永源寺峻の留守番電話に、先輩とも師匠ともいうべき楽田総一郎から「緊急の用件で会いたい」とメッセージが入っていた。青山の楽田宅を訪れると、そこには胸に深々とナイフをつきたてられた楽田の死体があった。楽田の葬儀の日、峻は突然、ツッパリ少女に声をかけられた。依頼は天才画賀シャトーブリアンの傑作「マダム・ロスタンの肖像」を見つけてほしいというものだった。その絵を楽田はどこかに隠したらしい。隠し場所のヒントを娘に遺していた。それはまさしく暗号ー松本清張の『点と線』の初版本に、すべてあり、解く鍵は三つ。スタジアム、十メートル下、ガンジン。-永源寺峻は必死に推理した。そして解けた答は意外にも…。乱歩賞作家が綴るミステリ・ファイル。
ひげの濃い中年男と、すべすべした若い男とどちらが恋人として素敵なのか?二人の女がそれぞれの相手を自慢し合うが、さいごに、やはり中年男のほうがいいということになる話(「いずれを選ぶか。青年か、はたまた、壮年か」)。何百人もの人間や宮殿さえも入ってしまう袋の話(「不思議な袋」)など、艶ばなしや奇想天外な話にみちた一冊。
地底深くに眠る黄金の鉱脈、それは欲望と野心に燃える男たちをとらえてはなさない魔力を秘めているかのようだった。新鉱山所長となったロッドも策謀に巻き込まれ、破断層への掘削を部下に命じた。だがその地層こそは多量の地下水を貯えた禁断の地層だった。大自然の脅威にさらされた南アフリカの金鉱山を舞台に、男たちの闘いを活写した冒険巨編。
ぼくの目の前で、少年がトラックにはねられた。事故のあと町の人間が聞いてきた。「あの男の子、はねられる前は笑ってました?」笑って?…ここはアメリカの小さな町。1人の天才作家が終生愛した町。ぼくは彼の伝記を書くために逗留している。だが知らなかった、この世には行ってはならない町があることを。ファンタジィ・ホラー驚異の処女作。
〈百王国時代〉。ファルコンズワードに生まれ育ったロミリーは、動物と交感し、調教することのできる稀有な〈ちから〉を受け継いでいた。だが、それだけの能力を持ちながらも、女であるがゆえに認められぬロミリー。彼女はついにファルコンズワードをあとにするが…。おりしもハスター家の王位をめぐる争いは、カダリン川を越えようとしていた。
ファルコンズワードを離れ、少年を装って続けていた旅の日々にも、終止符が打たれるときがやってきた。ロミリーは、ソードウーマンの誓いをたて〈剣の姉妹〉のメンバーとなる。そしてカロリン王の女鷹匠として迎えられるが、ハスター家の争いは、超能力兵器をもちいた全面戦争へと向かつつあった。少女の成長を綴ったブラッドリー入魂の大作。
アメリカSF雑誌界に一時代を築いた人気雑誌〈ギャラクシー〉。本書はその創刊30周年を記念して刊行された、ファン注目の短編集の下巻である。編者はかつて2代目編集長を務めた作家フレデリック・ポール。P・K・ディック、I・アシモフ、L・ニーヴン、J・ディプトリー、R・A・ラファティら一流作家の作品を収録し、それぞの著者による〈ギャラクシー〉誌にまつわる覚書を添えた。
エリックたち一行は、貿易船エクスカリバーを拝借し、連邦領タウ・セチへの違法ジャンプを計画する。だが、彼らが実際にジャンプした先は、あろうことか連邦統治領警戒網の外側ー深宇宙に燃えさかるノヴァの真正面であった。この劫火を前に、エクスカリバーには重大な欠損が生じる。さらに、漂流する彼らの眼前に、大宇宙船団が現れたのだ。
「どうしたんですか!」平介もギョッとなって息を呑んだ。倒れている男はピクリとも動かない。どうやら死んでいるのではないかと思われた。「吉野はん、吉野はん」芳太郎は必死になって男を揺すっている。が、やはり反応はなかった。(これは殺人事件だゾ)平介は背筋にゾクッとするものを感じた。土間には黒ずんだ血が生々しく流れている。えらいものに巻き込まれた、という気持ちもあるが、同時にムラムラと好奇心も湧いてきた。自分がこれほどヤジ馬根性の旺盛な人間だとは、26歳の今まで気がつかなかった。平介はにわかに探偵気どりになって素早い一瞥を店内に投げかけた。-美術店の一人息子が客の美貌に眼がくらみ、高価な壷を騙し取られて…。行く先々で起こる奇妙な事件、アンティーク探偵『推古堂』平介がくり広げる長編ミステリー。
ある日、ヨギの僧院・守護僧セミヤザからの手紙を受け取ったインディ。留守中の師匠アザゼルのかわりに薬草を届けるために僧院へ向かった。もちろん、マジカルキャット・ミュアとともに。セミヤザは、大魔術師ヨギの力を封印した聖櫃を狙う魔道士ギィのたくらみを話した。そして、それを阻止するためにはエクトロイの岩山に散らばる5つの鍵(タブレット)が必要だという…。使命感に燃えるインディは再び大冒険に旅立つ。行く手をはばむ数々の難関。そして、あっと驚くラスト…。これは、新感覚の魔界RPGだ。