1988年9月1日発売
密命を帯びた福は伊勢参宮と清水寺詣でにと上洛して禁中に参内。従三位春日局の称号を賜った福は、家光の幕閣作りに参画し、大奥では家光の男色を直して多くの側室を配し、徳川の天下を築いていく。波瀾万丈の完結編。
この物語には、そうザラに居ないようなふたりの男が登場する。ひとりは今年45歳の笹田昇介。もうひとりは、28歳が終わろうとしている大滝一郎。笹田昇介は、都心を縄張りにする一家の最高幹部にのしあがり、自分の組を率いて親分と呼ばれたほどの男だ。大滝一郎も、大阪の球団からドラフト1位に指名され、新人王まで取ってしまった。住んだ世界が違っても、ふたりとも異能の男といえるだろう。元ヤクザの親分と元プロ野球選手の男の誓いは“塀の中”から始まった。2人が狙う標的は男2人と女1人。武器は“パイナップル”。方法は奇想天外!“塀の中”で絵図はできあがった。
“善意”から生じた悲劇は、“悪意”から生じたそれよりも、よりいっそう恐ろしいものだ。天才探偵神津恭介は、ある日、美しい婦人の訪問を受けた。愁い顔の彼女が語るのは、2年前の恐ろしい殺人事件だった。犯人はすでに死刑の宣告を受け、刑の執行される日を無実を絶叫しながら待っている。神津は女の話から真犯人を推理した。しかし、何らの証拠もない。彼は婦人に、真犯人へ“決闘”を申し込ませるーという大時代奇想天外な策をさずけたのだった…!?(「私は殺される」)-表題作のほか、伝説の女魔術師松菊斎天章が住んだという屋敷で起こった怪奇殺人事件(「鏡の部屋」)など、戦後の不安定な世相を舞台にしてくりひろげられる鬼才神津恭介の、快刀乱麻を断つ名推理のかずかず!
世はあげて財テクブーム。警視庁捜査一課を5年前に定年退職した祖父の元警部矢車彦之進と2人暮らしのユカは、ちょっとおっちょこちょいだが明るく活発な京北女子大の英文科2年に席をおく美人女子大生だ。ユカのクラスでもいま財テクが大流行、なかでも、親友の庄子と奈緒は夢中。2人は庄子が帰省のおり知り合った証券会社の新入社員西野の紹介で買った株で大儲けし、すっかり味をしめてユカにまで財テクをうるさく押しつける。が、間もなく大暴落。なけなしの資金を無にした2人は西野を責め立てた。その庄子が何者かに殺され、解剖の結果、意外や庄子は妊娠2ヵ月、そしてまた殺人が追っかける。-財テクとセックス、清純なお嬢さん探偵ユカは完全な“迷路”にはまり込んだ。
「生贄を連れて来なさい」一夜、知り合った奇妙な男ケイに、なぜか小野寺慶吉は逆らえない。ケイは、相手の意思を封殺する計り知れない力を持っていた。命じられるままに生贄を送り込む慶吉。さらにケイは、恋人麻耶子まで狙っているらしい。慶吉は、すべてを麻耶子に打ち明けた。だが、摩耶子は驚くべきセリフを口にした…。長篇恐怖推理。
国の東西を秀吉勢に挟まれた、越中富山城主佐々成政の一行は、密かに厳冬の飛騨山脈に挑んだ。家康に援軍を求めるためである。だが自然の猛威にさらされて、兵たちは次々と倒れていった。無謀とも言うべきこの飛騨雪中行を、彼はなぜ敢行せねばならなかったのか?やがて明らかになる驚愕の真相とは?知将成政の数奇な冒険を描く歴史推理の傑作。
SF界にニューウェーブ旋風を巻きおこし、現代SFをリードしたJ・G・バラード。「私は、宇宙ものに背を向け、宇宙の果てをのぞくのを終わりにして、視線をこんどは人間の内部に向け、心のなかや神秘的な時間の問題というまったく新しい方向に出発した」と宣言する著者の自選短篇コレクション。「時間が語りかけてくる」「強制収容都市」ほかバラード自身によるメニューは、その手法を知り、その作品世界を楽しむための最良のテキストだ。序文としてバラードの文学宣言、また各作品ごとに自身の解説を付す。
チャーリーが殺された。毒舌が得意で、事あるごとに周囲の神経を逆撫でにしていた男、それがよりによって、唯一の親友が結婚する朝、撲殺体となって発見されたのだ。日頃の言動ゆえ容疑者には事欠かなかったが、いざとなると、明確な殺意は杳として浮かんでこない。だが捜査が行きづまるかに見えたとき、事件は意外なところからほぐれだした…。
一度は〈闇の者〉ジェレラクの手により地獄に堕とされた伝説の騎士、ディルヴィシュ。いま、彼はこの世のものならぬ漆黒の鋼の馬ブラックを伴い、ボータロイに甦った。彼を待ち受けるものは〈西の将〉ライリシュ、そして宿敵ジェレラクの要塞、氷の塔…。神話性をたたえた、異才ゼラズニイの代表的ヒロイック・ファンタジイ、ここに邦訳なる!
諸国林立する〈百王国時代〉のアストゥリアス王国。戦略的才能を買われ、若くして王の旗手となった男、バード。王女との婚約さえ果たし、彼の未来は約束されたかに見えた。だがこのとき、この戦乱の歴史に奔弄される自らの運命を、バードは知るよしもなかった…。のちに“ギルガードの狼”と呼ばれ、王国の歴史を変えた男の若き日々を描く雄編。
アストゥリアス王国の危機に、放浪生活から呼び戻されたバード。人々は彼を英雄と讃え、“キルガードの狼”と呼んだ。折しもハスター家は百王国を統一せんと動き始めていた。この脅威を前に、バードと実父ラファエルは、ダーコーヴァを手中に収めるべく画策し始める。そして〈盟約〉を提唱するヴァージルの来訪。果たしてバードは百王国の覇者となるか?
家族というものには主人公がいない。イタリア統一の波乱の時代に生きた文豪マンゾーニの家族模様を、膨大な書簡を通して事実が自ら語るにまかせて再構成した、ギンズブルグの長編力作。
早野えりかは通訳の仕事でスポーツ用品メーカーを訪ねた。その関係で、そこの広報担当の中西、ホテル経営者であると同時に元スキー・レーサーでもある柏木らに出会った。えりかは柏木に魅かれるが、障害として中西が立ちはだかり、さまざまな事件が邪魔をする。愛と仕事のはざ間でもまれる二人の姿!!