1988年9月発売
渓流釣りを楽しんでいる私の前を、若い女の射殺死体が流れていった。それを引き上げようとして溺れかけ、私は死体にまたがり、やっとの思いで激流を下りきった。こうして命を助けてもらったからには、恩返しをしなければならない。私は、彼女を殺した犯人を捜しだす決心をした。やがて、彼女は高名なシェイクスピア学者の娘と判明した。どうやら裏には、最近発見されたシェイクスピアの未発表戯曲がからんでいるらしい…現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンがアウトドアに展開する華麗なアクション!シリーズ第二弾。
勤め先をくびになったテロリズム専門家ブース・ストーリングズのもとに、まるで待っていたかのように大仕事がとびこんできた。フィリピンの新人民軍(NPA)の指導者アレハンドロ・エスピリトを500万ドルで買収して香港へ亡命させろというのだ。依頼者はフィリピンに投資している謎の資本家グループ。エスピリトさえいなくなればNPAは骨抜きになり、アキノ政権は安定して、自分たちの利益も上がるというわけだった。何やら裏のありそうな仕事を手伝うために、海千山千のプロフェッショナルたちが極東に集結してきた。500万ドルの取引きをめぐって、虚々実々のゲームが開始された。スピーディでしたたかで、粋、ロス・トーマスの『女刑事の死』に続く待望の新作。
ローラが初めて声を聞くその男は言った。「ぼくは癌でもうじき死ぬんだけど、あなたが毎朝ほほ笑みかけてくれるのを見てとても楽しかった」娘を保育園に送っていく途中、いつも近所のアパート・ビルの日よけの下に坐っている男、デーヴィッドの突然の言葉。みちたりた結婚生活を送り、女性誌の投稿原稿のリーディングの仕事をしているローラの平穏な日常は、この日を境に大きく変わった。結婚問題カウンセラーをしているデーヴィッドにも妻と息子がいたが、死を目前にして、彼は毎朝会う生気にみちたローラに深い恋心を抱いていた。同情に始まったローラの気持ちも、やがてどうしようもなく愛へと傾いていく。そしてその結びつきは、それぞれの家族との間にさまざまな波紋を呼ぶ-。ニューヨークの秋から夏までを舞台に、生と死のはざまを漂う愛の行方を描く、哀しく、温かく、エレガントな長篇。
800万の夢と哀しみ、愛と憎悪、そしてささやかな希望のミックス・カクテル。Sex&Drug&Violenceが交錯し、あらゆるものが揃う街、ニューヨーク。殺意がスウィングし、野望と絶望がブルースを奏でる。チンピラや娼婦、殺し屋、男娼、ポン引きたち-。大いなる夢とせつない優しさ…心にしみる9つの人生。
「ヤヒコニ イッテ ウラ…」女は死の間際に謎の言葉を遺した。出雲崎で起きた殺人事件の被害者を、美緒は取材旅行中に三度目撃していた。弥彦山頂から日本海を見つめる孤独な姿が、妙に印象に残っていたし、事件前夜、彼らは同じホテルに宿泊していた。被害者は水原千秋という銀行員。業務上横領の疑いがかかり失踪中であった。そして事件の数日後、弥彦神社裏の杉林から、被害者のイニシャルが刻まれた指輪が発見された。女の最後の言葉とどう関わっているのか?混迷する捜査に、美緒と荘の推理が冴える。
リゾート気分でタンブーラにきたノイズ。密かに思いを寄せるネコは、夜な夜な男を買い漁る日々。ヤケになってネコの封印された過去を検索するが謎は深まるばかり。そこへ現れたベスト・ヒップのお嬢さんジーナをネコへの恋のさやあてにできて有頂点に…。だが、ノーマーシイなネコはジーナさえ、強敵ドゥーガーを誘き出す手段に使う。ジーナは二重の囮-と気づいたときネコはすでにドゥーガーの手中におち、意のままに動く操り人形にされてしまった。絶体絶命のネコが最後に放った死の投げキッスとは?驚愕のラスト。殺戮のラブゲーム。
いつ、どこからともなくTOKYO副都心の超高層ビル群の一角に根を張った正体不明の漂着神と呼ばれるもの。“彼”が放つ奇天烈な電脳の機械たちが電飾の街や団地を襲い破壊をはじめた。真昼野正彦の仕事は、“彼ら”を解体することだ。それが、“彼ら”の死なのだ。機械的に冷静に処理さえすればよい。そんなある日、朝里という少女と出会った。彼女は機械たちを収集していた。それが、真昼野が漂着神の坐す禁区に敢然と戦いを挑む運命のはじまりになろうとは!覚めた文書と野太いユーモアそして壮大な寓意をこめて期待の新星が放つ大型エンターテインメント。
売り出し中の新人歌手・結城ちひろが誘拐された。大手カメラメーカー、ゼネラル・フィルムの新製品『パチリコ』の宣伝に起用し、CMソングとなる新曲とともに大々的な宣伝作戦を繰り広げようとした矢先だった。事件は商品のイメージダウンになると、だれもがちひろの起用に反対したが、ディレクターの長谷川宇一は、逆に事件を宣伝に利用しようと考えるー。乱歩賞受賞の新鋭コンビが放つ長篇ミステリー。
テレビ局ディレクターを辞職した生沢功治を、元GHQ将校ナヒマンと名乗る男が尋ねてきた。戦後失踪した父の昭吾に逢いにきたという。翌日、ナヒマンは「ザンメルは生きている」という謎の言葉を残して殺害された。ザンメルとは何か?父の失踪に匿された真相は?別れた妻子までが誘拐され、生沢は国際的な謀略の渦中に巻きこまれていった。長篇ハードボイルド・サスペンス。
駿州清水港で人足請負い業を営む山本長五郎こと清水の次郎長を親とたのむ石松は、親分のはからいで久しぶりに生国の三河の森へ墓参りに帰った。そこで石松は幼馴染みの兄貴分百姓惣吉が剣道指南で乱暴浪人の鬼藤桂之進に無礼討ちされた場面に出くわす。怒り心頭の石松は惣吉の弟常吉の肩入れをし敵討ちに乗り出す。傑作時代小説「殴られた石松」ほか「人斬り伊太郎」「飛び吉道中」「引返し百太郎」を収録。
旗本の三男、山瀬仁三郎こと不知火の仁吉は、深夜出会った美女野々山操が肥後宇土藩主細川元政を仇と狙う事情を知り、細川家の内情を探り始める。その頃、江戸市中を騒がす盗賊日本左衛門と鼠小僧次郎吉が夜の巷を横行。そのうえ奇怪な朱鞘の浪人が出没し、剣魔情鬼と恐れられていた。敢然、百鬼夜行の大江戸に乗り出したのは、千変万化、姿を変えて活躍する天下御免の新隠密《阿ノ一番》-。長篇時代小説。
幕府隠密以上の権限を持ち、江戸参勤の大名の動静を探る《阿ノ一番》山瀬仁三郎こと不知火の仁吉の活躍で,宇土藩主細川元政抹殺を謀る家老らの奸計が明るみに出た。さらに、悪家老に殺されたはずの細川家の家臣・中江銀之助こと朱鞘浪人港伝次郎は紅蓮の炎と大捕物陣に囲まれ、壮絶な死闘を展開していた。その網の目の外で繰り拡げられる日本佐衛門と鼠小僧の対決の場へ急ぐ《阿ノ一番》-。長篇時代小説。
世情騒然たる幕末。官軍の横暴に業を煮やし彰義隊に加わった旗本・伴鉄太郎だが、彰義隊は壊滅、自らも手傷を負った。1868年、傷の癒えた鉄太郎は榎本武揚率いる艦隊に乗り組み、一路蝦夷へ。大暴風雨と寒さに耐え、ようよう箱館に辿り着いたものの、幕軍は五稜郭占拠わずか八カ月にして降伏。討死を免れた鉄太郎、士籍を返還して北海道開拓の道を選び、石狩に腰を据えることになった。長篇歴史小説。
はれて大学へ入学したものの、キャンパスの華やいだ雰囲気にいまひとつ乗り切れずにいる僕の目の前に、素敵な彼女が現れるが…。現代の大学生の生活や風俗を瑞々しい感性で捉えたデビュー作。潮賞小説部門受賞作。