1988年発売
イスラエルのキブツに隠遁していたソールは、元モサドである義父が失跡したために課報の世界に戻ることになった。一方、砂漠で贖罪の生活を送っていたドルーは、バチカンの枢機卿の行方不明事件を追及すべく、〈石の結社〉の召喚を受けた。世界各地で、老人たちが次々と謎の失踪を逐げていたのだ。まるで〈夜と霧〉が甦ったかのように-〈夜と霧〉とは、反ナチ分子を恐怖の底に陥れるためのヒトラーの勅令だった。そのナチの悪夢が再び到来したのだろうか?それぞれの失踪事件を追ううちに、ソールとドルーは邂逅する。二人の戦士は手をたずさえ、奥深い陰謀に立ち向かっていくことになるが…?屈指のストーリー・テラーによる、手に汗握る冒険長篇。
清流とゆたかな木立にかこまれた城下組屋敷。普請組跡とり牧文四郎は剣の修業に余念ない。淡い恋、友情、そして非運と忍苦。苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を、精気溢れる文章で描きだす待望久しい長篇傑作!
新月の妖しい光の下、魔性の巫子・嫦娥は短剣を片手に舞いを舞っていた。やがて銀色の刃物は、若い娘の胸に深々と突き立てられた。処女の新鮮な生血を浴び、ゾッとするような笑みを見せる嫦娥…。不可思議な力をもつ嫦娥と、比類ない強さの黒騎士を中心に、月族は、いままさに九州の地を平らげようとしていた。立ちはだかるのは、大和の日見子。霊力をもつ巫女同士の全面対決は、目前に迫っていた。日見子の軍に、タケトは在った。愛する娘を惨殺した嫦娥に、復讐を誓っていた。裂帛の気合とともに、豪剣・多雲が唸る。
長野県警・諏訪署の人情刑事、道原伝吉は雪どけの八ケ岳・縞枯山へ急行した。目から血を流した男の凍死死体が見つかったのだ。続いて、犯人と思われる美女の絞殺死体が…。捜査が進むにつれて、男の死には2人の男が繁りを持つことが明らかになった。2年前連続して起きた遭難事故、それも縞枯山で!犯人の焦点を絞れず難航する捜査の裏には、美しい姉妹の悲しい恨み節が隠されていた。事件の影に潜む3つの殺意を伝吉は解くことができるだろうか?ズッコケ刑事貞松とのコンビも快調な、道原伝吉シリーズ最新刊。
天保の江戸市中。因業金貸しの松兵衛が息を引きとった。いまわの際に家人一同を呼び集めていわく、「大事な宝を屋敷に隠してある。見つけたやつにその宝をやるが、代りに子供の面倒を見ろ」。さあ大変。松兵衛の妾お政、下男の儀平、甥の治郎七らは宝さがしに目の色かえて狂奔。騒ぎが騒ぎを呼ぶが、“ゆっくり”と異名をとる八丁堀同心若月雨太郎、冴える推理で見事解決。傑作捕物控シリーズ第4弾。
奄美へ向かうYS11機が、吐〓喇の孤島・蛇石島に不時着、カメラマンの竜崎らは、分け入った山中で野生山羊とヒッピー達の死骸を発見した。急ぎ事故現場に戻ったものの、彼らを待っていたのは自衛隊武装集団による乗員乗客の大殺戮であった。一人危地を脱した竜崎だったが、YS11機は海に沈んだと発表され、彼を助けた漁船員は抹殺された。島で何が進行しているのか?竜崎の逃亡が始まった。長篇冒険小説。
報道記者の風見孝治は、かつて解放戦線の総攻撃を前に、恋人のビェン一家を国外へ脱出させ、自らはサイゴン陥落の歴史的瞬間を取材するため、アメリカ大使館に篭った。重傷を負った風見が生き残り、ビェンは死んだ。-8年後、神戸でビェンの弟妹に再会した風見は、この2人の後で蠢く陰の男たちの正体を知らされ、ビェンの死の真相を追った(表題作)。他、重い旋律でかなでるサスペンス・ロマン5編。
嘉永2年、江戸南町奉行所見習同心・加田三七は御奉行遠山左衛門尉景元に抜擢され、弱冠25歳で定廻り同心の大役に就いた。そんなある雨の夜、岡場所の女おきくが殺された。現場の寺裏には足駄の歯跡があり、女の首には黒ずんだ痣があった。三七は岡場所の持主・権兵衛の行方を追ったが、権兵衛もその夕、水死体で発見。首にはやはり黒い痣が(「犬と猫と鼠」)。他12篇を収録する人情捕物帳傑作。
戦国時代に天下の覇を競った名将たちの卓抜な政略と戦略について記されたものは多いが、その心に分け入ったものは少ない。父を追放した武田信玄、兄を放逐した上杉謙信、父を殺し弟を討った伊達政宗、乱暴狼藉の限りを尽した織田信長、その信長を本能寺に屠った明智光秀、そして秀吉…。下克上の世を激越な心と鋭利な先見性で生き抜いた名将たちの屈折した心と天才性を余すところなく描いたユニークな伝記。
殺人犯が精神異常者だったら、正式の裁判を受けないですむー両親や検事はそれを選んだ。だが被告のクローディア・ドレイパーは、私は責任能力がある、裁判を受けたいと主張する。マクミラン検事VS.レビンスキー弁護士の法延における熾烈な闘いと、人間らしさを求めて自らの恥部をもさらけ出して苦悩するクローディアの姿を描く感動の法廷ドラマ!ワーナー映画化。
江戸への道中、病に倒れた小山田庄左衛門を救ったのは豆腐屋の半次と、おえん、おせいの美人姉妹だった。病癒えた庄左衛門は、やがておえんと恋仲に。血気もいつしか衰え、仇討は武士の作法にすぎないのではないかとの思いに悩まされ始めていた。その頃、内蔵助は内匠頭の弟によるお家再興を願い出たが容られず、逐に討入りを決意。時に、元禄15年12月14日。そして庄左衛門は…。長篇歴史小説。
映画館から出たとたん銃撃戦にまきこまれ、とっさに麻薬ギャングを射殺してしまった子持ちの中年私立探偵ブレイニーは一躍有名に。しかしこの事件をきっかけに彼の人生は大きく変っていく…。百万ドルの宝石の争奪を発端とするスピード感にあふれるスケールの大きなストーリー、連続殺人とその謎解き、凄惨なアクションシーン、そして哀切でショッキングな人間ドラマへと展開する結末!シリアスな読みごたえと娯楽性をかねそなえたハードボイルド小説の傑作。
大統領選挙に沸くアメリカ・ワシントンを震憾させる事件が続出した。ボーイング747撃墜、ソ連大使館参事官補ブコフスキー殺害-。CIA長官ウェブスターは、これを利用して組織内の厄介者ティーム・ストライカー壊滅をはかるが、追い討ちをかけるように直属法務官ナンシーが惨殺された。依頼を受けた地獄の傭兵部隊『鬼道組』は、敵の本拠地フォート・デトリックを襲撃。ついに隊長の連城と魔王の兵士ノーマンが対峠した。自爆シークエンスが発令されるなか、二匹の野獣は血みどろの死闘を繰り広げるが、この裏には驚くべき筋書きが用意されていた。
警視庁の天才警視、岩崎白昼夢。東大卒、国家公務員上級職試験3番合格。警視庁捜一に入庁以来、冷徹な頭脳と大コンピュータで難事件を解決。妻のみずえ警部補は、特例により同じ捜一に勤務する。幸せの絶頂にいる岩崎に、またもや事件が舞い込むー。南米の駐日大使が惨殺され、死体のそばには奇妙なカードが落ちていた。カードに秘められた国際シンジケートの陰謀を岩崎警視の推理で暴く。シリーズ第7弾。
警視庁捜査1課の荒竹十三のもとに、殉職した元同僚・飯岡の弟、邦朗が訪ねてきた。姿を消した恋人の槙未弥子を捜してほしいとの依頼だった。絵はがきを頼りに、未弥子が消息を絶った尾瀬に向かった二人だったが…。尾瀬沼畔の山小屋を出た彼女の足取りはそこで途絶えた。沼田署の必死の捜索によって、未弥子は山小屋近くの湿原で、首を切断された無残な姿で発見され、別の女性も同じように殺されていた!変質者の犯行なのか?同僚の白鳥と事件を追う荒竹は、未弥子の元恋人が、冬の尾瀬で不可解な遭難死をしている事実を掴むが…。大湿原を舞台に繰り広げられる惨劇を、奇抜なトリックを駆使して描いた、書下ろし長編推理小説の傑作。