1988年発売
心を病んだ一人の女の愛する男への妄執を、ゴシック小説仕立ての怪奇・スリル・サスペンスで描き出した表題作「エミリーに薔薇」他7篇を収録。「アザサロム、アブサロム!」「響きと怒り」など、難解をもって鳴る17の長篇が築く険阻な大連峰を踏破する第一歩として、必読の短篇集。
関東テレビ総務課制作庶務係、宇賀神邦彦。タレントや局の連中が撤きちらす面倒ごとを裏側から始末する、落ちこぼれテレビ屋だ。人は彼をトラブル・バスターと呼ぶ。スリルと笑いのハードボイルド活劇。
高校生なのにヤクザの組長、しかも超能力者、そのうえすごいハンサムの裕次郎が足走学園に転校してきた。実はこの学校を「地上げ」しようという計画なのだ。ところが校内で殺人事件が起こり、いつのまにか犯人探しをすることになってしまった。怪しい奴はたくさんいるが…?爆笑ギャグ満載の学園ミステリアスコメディ。
秀吉の朝鮮出兵によって日本へ連れてこられ、家康のキリスト教弾圧で流罪の身となったおたあジュリア-。数奇な運命ともいえるその生涯を流麗なタッチで描いた感動の歴史小説。
敗戦直後の没落貴族の家庭にあって、恋と革命に生きようとする娘かず子、「最後の貴婦人」の気品をたもつ母、破滅にむかって突き進む弟直治。滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた『斜陽』は、昭和22年発表されるや爆発的人気を呼び、「斜陽族」という言葉さえ生み出した。同時期の短篇『おさん』を併収。
「恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです」-世の中の営みの不可解さに絶えず戸惑いと恐怖を抱き、生きる能力を喪失した主人公の告白する生涯。太宰が最後の力をふりしぼった長篇『人間失格』に、絶筆『グッド・バイ』、晩年の評論『如是我聞』を併せ収める。
墓碑は断崖の突端に立っていた。銘板には、なぜか自分の名前が刻まれている。没年月日は四年もまえー。不思議な夢だった。そのあまりに生々しい感触に不安をおぼえたデイジーは、偶然知りあった私立探偵ピニャータの助けを借りて、この“失われた一日”を再現してみることにしたが…。アメリカ女流随一の鬼才が、繊細かつ精緻な心理描写を駆使して描きあげた傑作長編の登場。
愛する妻の貞節を信じ切れない夫は試しに妻を誘惑してみてくれと親友に頼みこむが…。突飛な話の発端から、読む者をぐいぐいと作者の仕掛けた物語の網の目の中に引きずりこんでゆくこの「愚かな物好きの話」など4篇を精選。『ドン・キホーテ』の作者(1547-1616)がまた並々ならぬ短篇の名手であることを如実にあかす傑作集。
一条寺文麿往くところ、巷は戦場と化す。今回は京都。古都は風前の灯だ。…尾花建設の令嬢マリが京都を根城とする暴力組織『新鮮組』に誘拐された。観光会館入札にからむトラブルだ。最愛の女性を奪還すべく過激に封鎖された京都に乗りこむ文麿。待ちうける罠、予想外の恋。ノンストップロマン第3弾。
国際情報小説の旗手・中村敦夫の力作第二弾。バリ島開発の利権をねらう日本商社は、故スカルノ大統領夫人を利用して、右翼の重鎮・工藤の担ぎ出しを計る。インドネシアの現代史に深い関わりを持つ工藤を迎え撃つ、イスラム過激派集団。秘密情報機関ドッギーズの日本拠点員・堂田将司が激発する事件を追う。