1988年発売
「開け、胡麻!」呪文を唱えるや、洞窟の岩はするすると口を開き、仰天するアリ・ババの目の前にまばゆいばかりの財宝の山があらわれたー。今も昔もかわらない、夢を抱きつづける人間の心が生んだこの魔法の呪文の物語「アリ・ババと四十人の盗賊の物語」ほか。
王子は宴から消えた美しい乙女を捜し求めて、彼女が落していった足環を町中の娘にはめさせる。アラビア版シンデレラ物語「足飾り」をはじめ11の短篇を集めた『のどかな青春の団欒』。あふれる歓喜と驚嘆のなかに人生の真理と教訓をひそませた物語の一大宝庫。
アラブ民族の歴史をはるか父祖の時代からたどった15のエピソード集「知識と歴史の天窓」など6篇。夜ごと、聞き手の心を驚きの限り驚かせ、喜びの限り喜ばせてきたシャハラザードの物語世界も、迎えていよいよ千一夜目、ここに華麗な幕を閉じる。
性に飢えた男は、狙った女を妄想の中で弄ぶ。そして、それが現実の行動に及ぶとき…。ベストセラー『生贄』シリーズに続き、警察調書をもとに迫真の描写で読者を圧倒する『暴行』シリーズの第3弾。
「行方不明になった19歳の留学生ベティを捜してほしい」-ブロンド美女のリタ・ターナーは、新宿のうらぶれた見上の事務所でそう告げた。リタに恋の兆しを感じた見上は、さっそく調査を開始した。が、唯一手掛かりであった男が惨死体で発見され、事件は意外な展開を見せはじめた。リタとのベッドまでの距離を測りつつ、調査を続行する見上の前に、やがて奇妙な宗教団体が浮かび上がった…。大好評『ニヒリズム・バーゲン』に続いて描くニュー・ハードボイルドの第二弾。
3年半の刑期を了え、出所した柴山は思わず目を疑った。かつて雑木林だった場所に中学校が新設され、強奪した2500万を埋めた欅の巨木のそばに住込みの警備員室があった。これが複雑怪奇な事件の発端となった。夜の校庭に忽然と現われた机文字〈9〉、机に彫られた〈怨〉の鏡文字、またその文字が記された脅迫状、さらに欅の下の殺人…。これら一連の事件は同一犯の仕業か、それともー。巧妙なトリックと画期的な手法で読者に挑戦する長編本格推理の傑作。
『南柯の一夢』の主人公は官僚を嘲笑する自由人である。そういう男が役人になって栄達の限りをつくし、得意と失意をたっぷりと味わう。味わったところで夢からさめ、槐の根もとを堀るとどうだろう、夢みたとおりの小さな蟻の王国があったのだ゛唐代伝奇の面白さは、幻想を追っているようで実は深く現実の人間の本質をついているところにある。
北の都ケベックにようやく訪れた春。アンジェリクの身辺にも矢つぎ早に事件が。謎の神父が放った密使との闘い、夫ジョフレのひそかな裏切り、刻一刻と町に近づくインディアンの大襲撃…。そして、フランス本国から最初の船で届けられたルイ14世の親書の内容は、アンジェリクにさらに重大な決断を迫るものだった。
みんな何かを知っている、みんな何も喋らない。新興住宅地で起きた母子心中事件の真相を追うTVレポーターの美希子、その行く手に見え隠れするのは誰?オランウータンと名乗る若い男は味方か敵か?都会の無関心と異常な沈黙が引きおこす恐怖の日常!筆者が新境地を拓く、長編サスペンスホラー!
青森県新郷村。キリスト伝説の地で、男が十字架に首を吊った。同行の美少年は、謎の言葉を残して闇に消える。さらに京都、香川と怨霊伝説の里で怪事件が続発し、美少年の姿が見え隠れする。彼に取り憑いたのは崇徳院の怨霊か?そしてソロモンの秘密は四国に眠るのか?興奮と戦慄の書下ろし歴史ホラー!
海面下8千メートルの深い闇で、2億年の眠りにつく生命体があった。現代人の欲望はその海底に放射能廃棄物を沈め、「彼」に巨大な目覚めを呼びおこしてしまう。人類への復讐を誓う「彼」は、地を震わせ大気を裂いて、列島に襲いかかった!人も大地も食いつくされる!文明社会への警鐘、長編パニックの傑作!
非行少女の更生を願い、絶海の孤島に施設が建造された。だが、幼くして性の歓びを知り、放恣で率直な日常にいた少女たちの前には、悪魔の罠ともいうべき悲劇が待ちうけていた。3人の死亡者を出し、28人となったはずの少女たちが、何度数え直してみても、31人いるのなぜ?恐るべき魂の告白を聞け!
日常はしがない学習塾の講師である萩生真介だが、実はテレポート(瞬間移動)能力を身につけていた。ある日、萩生のもとを三矢財閥の社長夫人と称する妖艶な美女が訪れ、一人息子・矢切鞭馬の個人教師になってくれと頼む。これが矢切一族に取り憑く妖鬼との死闘の始まりだった。バイオレンスエロスの長編。
正体不明の船のやとわれ船長だったわたしは、2度目の出航で親友の成瀬と交替した。ところが成瀬は殺される。船に疑惑を抱いた彼は、ひそかに何かを探っていたらしい。わたしが友を殺した敵を追い求めると次々奇怪かつ危険な徴候に襲われ…。美しい大自然と人間の悪を精緻に描く秀作。日本推理作家協会賞受賞作品。
オイル王国のサウジアラビアにクーデターが発生。同国駐在のすべての外国人、世界経済を左右するアメリカのオイルマンたちが、出口なしの窮地へ!必死に脱出をはかる日本人商社員たち、革命軍との虚々実々の駆け引きに狂奔する各国の要人たちの取るべき行動は!?壮大なスケールの新クライシス・ノベル。
青春の光と影を鮮烈に描く長編ロマン。ニューヨークでジャズ・ギタリストへの道を歩んでいた俊夫を見舞った不幸なアクシデント。水色の瞳と北欧系のシルバー・ブロンドの髪を持つ娘・モイラとの出会いと愛の日々。競走馬アバター号との関わりから始まった。一人の日本青年の失意と再起の軌跡をたどる意欲作。
世界が軍縮と平和の幻想に酔っているとき、裏では恐るべき計画が着々と進められていた。アメリカの喉元に、ソ連の秘密核ミサイル基地を建設しようというのだ。CIAとKGB、くわえてGRUが死闘をくり広げ、ソ連政治局内部の派闘争いもからんで事態は恐るべき様相を見せはじめる。息もつかぬ迫力で読者をひきずり込む、娯楽巨編。
鏡のなかを通りぬけたアリスは、またまた奇妙な世界へ。おしゃべりな花たちの咲く庭をふりだしに、鏡の国を歩くアリスのまえに、つぎつぎとおかしな住人があらわれてー。「ふしぎの国のアリス」につづくキャロルの作品で、チェスゲームを織りこんで構成された、夢とユーモアにあふれたファンタジーの傑作。
ローラの一家は、インディアン居留地の小さな家を去り、長い旅のすえに、ミネソタのプラム川のほとりに移った。広大な肥えた大地で、小麦の収穫に目を輝かす父さん、学校へ通いはじめたメアリーとローラ。順調にすべりだした生活はある日とつぜん、いなごの大群におそわれたー。新天地を求め、力強く生きるインガルス一家の物語第3作。