1988年発売
桃園で供物をととのえた3人は、再拝して誓いの言葉を述べる。「ここに劉備、関羽、張飛の3人、兄弟の契りを結び、心を一つにして力を合わせ、苦難にあい危険にのぞむものを救けて、上は国家の恩にむくい、下は民草を安らかにしたい」と。
洛陽に還御した天子は、衰微している漢室を救えるのは山東にいる曹操以外にないと勅命を下し彼を招聘した。精兵20万を率いて入洛した曹操ではあったが、やがて帝を奉じて都を許都に移し、権力をことごとくわが手に収めてしまった。
冬のさなか、劉備は諸葛孔明の教えを乞おうと臥竜山にむかったが、二度とも会うことができない。年改まったある吉日、三たび孔明をたずねた。劉備の、世の乱れを憂える真情と「三顧の礼」に応えて孔明は、彼とともに新野に出、天下の形勢を論じることとなった。
鬼神不測の術をもつ諸葛孔明は、七星壇を築いて東風を祈り、孫権と劉備の率いる呉・蜀連合軍は、折から吹き出した風に乗じ火攻めによって曹操の水軍を焼き払う。これぞ赤壁の戦いである。敗走に敗走を重ねた曹操は、関羽の義にすがって逃げのびた。
一たんは魏王の爵位を受けた曹操であったが、奇策を駆使する孔明の前に敗色濃く遂に漢中を捨てた。それを見るや諸侯もすべて降伏。蜀の勢いは大いに上り、「わが君はおん年五十をこえ、仁義のほまれ高く」と孔明、劉備に皇帝の位につくことをすすめる。
曹操の策略に落ち入り、さしもの豪傑関羽も落命。だが曹操の夢には夜毎に関羽が現れ病篤く、跡を曹丕に托して死を迎える。張飛は部下の恨みを買って寝首をかかれ、劉備もまた二弟の亡霊が自分を招いているのを見て、死の近いことをさとるのだった。
南中を平定し成都に還った孔明は、劉禅を擁し中原の地をうかがうが、戦況はかばかしからず病も重い。弟子に自分の亡き跡を細かく指示して息絶える。それを知った司馬懿は進軍する。だが車に孔明の木像が端座しているのを見、仰天して逃げ出してしまうのだった。
蜀、魏、呉の創業の英雄たち、劉備、関羽、張飛、孔明、曹操、孫権らはすでに亡く、2代目以降の守成の時代となるやその活力の低下は苦しい。やがていずれも晋の皇帝司馬炎の軍門に下り天下は統一された。太唐元(西暦280)年のことである。
イスラム世界の民話・伝説が奔放不羈な空想の翼に乗って燦然と花開いた物語の饗宴アラビアン・ナイト。千と一夜にわたってシャハラザードが繰り広げる綺談のアラベスクは歓喜と陶酔の夜へとあなたをいざなう。文学的香り高いマルドリュス版の完訳。
バグダードの床屋、自称「沈黙家」が、生来の詮索好きから、恋にやせ細った若者をさんざん悩ませたあげく、自分がいかに慎み深く口数が少ないか、6人の兄を引合いにとうとうと語りだす「仕立屋の話」はまさに抱腹絶倒の面白さ。シャハラザードの話術が冴える。
回教王オマルの側女ソフィーアとは、実は海賊にさらわれて王のもとに献上されたキリスト教徒の王女にほかならなかった。復讐を誓うキリスト教徒軍と回教徒軍のあいだに、延々王家3代にわたる戦いが始まる。『平家物語』をおもわせる『千一夜物語』中の最長篇。
勇猛果敢の若き王子カンマカーンが登場。イスラム軍・キリスト教徒軍の最後の対決が迫る。前巻にひきつづいて語られる長篇物語の終幕の後は、孔雀や烏や狐など、小さな動物たちの語りだす知恵の数々が、さながら小粒の真珠のようにきらめく寓話集「鳥獣佳話」。
七たびにおよぶ航海の行く先ざき、海に陸に空に地に、シンドバードが出会う世にも怪奇で不思議な事どもと驚くべき冒険の数かず。このおなじみ「船乗りシンドバードの物語」を生み出したのは、旅に憧れ未知の世界に好奇心をもやす、古今かわらぬ人間の心だ。
正直男が曳く驢馬を歩いている最中に盗んだ泥棒の手口とは?愛人にするのによいのは青年か壮年か2人の細君のおしゃべりの結論は?読み書きのできぬ男がどうやって学校の先生をつとめたのか?愉しい21の小話からなる「智慧の花園と粋の庭」ほか。
盗みと詐欺の達人がその腕をみこまれて警察の隊長にとりたてられたと聞き、自分の評判をたてようと老婆ダリラがくわだてた悪だくみの数かずとは?バグダードの巷を舞台に、老若貴賎、男と女が入り乱れての無類に愉しいピカレスク「女ぺてん師ダリラ」の物語。
狩に出た教王ハールーン・アル・ラシードの前に現れたのは貧乏漁師のカリーフ。「どうだ、ひとつ俺の手伝いを始めて漁師の仕事を覚えないか?」王をしがない貧乏人とかん違いし、こうもちかけたが果たしてその成り行きは?「カリーフと教王の物語」ほか。
魔法のランプを手に入れたことから、魔神の助けを得て大金持となり、ついには王女をめとって一国の王にまでなるという、あまりにも有名な「アラジンと魔法のランプの物語」。時代をこえ、民族をこえて、永遠の夢を贈りつづける魔法の書物アラビアン・ナイト。