1989年11月発売
プロ・サッカー・チーム〈スターズ〉の花形選手が競技場の控え室で殺された。首の骨を折られ、全身を打撲している。しかしそれは事件の発端に過ぎなかった。数日後、死体発見者のカメラマン、マンクガイアのもとに犯人から奇怪なメッセージが送りつけられ、さらにチームから第二の犠牲者が…。スリリング、かつエキサイティングなスポーツ・ミステリの登場。
1950年代、ジョージア州の小さな町コトン・ポイント。自らの規範にしか従わない男パリス・トラウトがひきおこした黒人少女殺害事件は、パリスの妻ハンナ、弁護士シーグレイヴズなどを捲込み、やがて町を席捲する大きな渦となっていく。保守的な町で行なわれる裁判とその後の一連の事件が、さまざまな人々の愛憎、偽善、悲しみとともに明らかにしていく、アメリカ深南部の核。スリラー風の展開と深い人物造型で絶賛された1988年度全米図書賞受賞作。
モントリオールからヴァンクーヴァまで、ロッキイ山脈を越えて驀進するカナダ大陸横断鉄道。各地の競馬場でレースをしながら、車内ではミステリ劇を楽しむという趣向の特別列車が、競馬振興のためにカナダ・ジョッキィ・クラブの支援で企画された。ところが、乗客の中に危険な男が1人いた。英国人の馬主ジュリアス・アポロ・フィルマー。脅喝によって名馬をおどしとったり、さまざまな不正を働いている国際競馬社会の敵である。今度は何を企んでいるのか?かねてからフィルマーを内偵中の英国ジョッキィ・クラブは、保安部員トー・ケルジイをカナダに送った。ケルジイは身分を隠し、ミステリ劇の覆面俳優として、ウェイターに化けて特別列車に乗込んだ。馬、馬主、厩務員、競馬ファン、そしてひそかな陰謀を満載して、大陸横断列車はスタートした。行手には、ロッキィの大自然と大いなる危険が待ち構えている。サスペンスが鉄路を走る。待望のシリーズ第27弾。
混成浪士隊の分裂は早く、清河八郎は去り、やがて横暴を極めた芹沢鴨も、近藤勇の命で斬られた。殺戮が日常化するにつれ、総司の天稟の剣技は冴え、一方、新選組内には殺伐の風も吹き始めた。愛人おあいを冒した労咳は総司の頑健な肉体をも蝕み、ついに池田屋での乱刃の中で喀血、時代は総司を置き去りにしはじめる…。若き剣客・沖田総司の眼から時代の激浪を見つめた歴史長篇完結篇。
12月21日、大手スキーメーカー、エトワール社の社長・大河原剛司が、雪の志賀高原でガラン沢に跳び込み、そのまま行方不明になった。スキー歴50年のベテランとは信じ難い事故だった。翌年2月16日、剛司の妻・萌子が、谷川岳でスキーのエッジで頚動脈を切り、出血多量で死亡。3月末、今度は剛司の養子・恒介までもが…。事故か、殺人か。社長一族を襲った不幸の陰に潜むものは?長篇スキー推理。
総合商社・伊藤物産大阪本社に勤める高山一平は総務課長に抜擢されて半年、主管者会議や重役会の準備で大忙し。しかも、上司のイビリで神経をすり減らす毎日。課長は三等管理職、部長は一等管理職、その隔たりは筆舌に尽しがたいのだ。同じ課長仲間と飲んでは上司のこきおろしに怪気炎を上げるのだが、何とも虚しい。ゴルフコンペで上司の鼻を明かさんと、一平は特訓を開始するのだが…。長篇企業小説。
次期通産省次官の椅子を狙う産業政策局長・長尾浩一は、電気通信事業をめぐる通産省と郵政省の熾烈な主導権争いの渦中にあった。規制緩和に傾く通産省、強化を図る郵政省。事態は暗礁に乗り上げた。その頃、長尾がかつて秘書を務めた元首相・田上に縋ったとの噂が流れた。航空機疑獄で告発された後も政界に隠然たる力を保つ田上だったが…。政官財三つ巴の第二次VAN戦争を活写する迫真の問題長篇。
業界の老舗・中京デパートに入社し、2年でニューヨーク支店に赴任した住江進介は、エリートとして目覚しい活躍をしていた。しかし、同族経営の社長派と反社長派の勢力争いの渦に巻き込まれ、次第に組織の捨て駒と化していった。そして38歳の今日、“企業内棄民”となり、流通センターの片隅で伝票整理に追われているー。デパート業界を舞台に、同族経営に翻弄される社員の悲劇を描く長篇企業小説。
冷酷非情な作戦本部を辞めたクィラーは、酒場で廃人同様となった元同僚と出会い、彼の仕事を肩代わりする。それは東南アジアで麻薬の女王として君臨するスー・ウーリンを暗殺する指令だった。シンガポールからタイのジャングル、そしてベトナムへと飛びながらスーの暗殺団と孤立無援の闘いを展開するが…。意外な結末とあふれる緊張感、英国情報部の腕きき工作員クィラーの頭脳プレイを描くシリーズ最新作。
ブルゴーニュ生れの私生児、「キキ」ことアリス・プラン。12歳でパリに出た彼女はやがてキスリングのモデルとなり、一夜にしてパリのセックス・シンボルとなる。フジタ、ピカソらエコール・ド・パリの画家たちは競ってキキを描き、愛人マン・レイ、ブラッサイは、その独特の美を写真に写し、ツァラ、デュシャンらシュルレアリストたちは、彼女の奔放さを愛しつづけた。「モンパルナスの女王」と謳われ、栄光の道を歩みながらも、キャバレーで歌い踊る、無邪気な少女でありつづけたキキ-。彼女の純粋さゆえの栄光と悲惨の生涯に、モデルでジャーナリストの新鋭モルガールが迫る、初の本格的伝記ロマン。
「純な魂が降臨したんだよ。魂の存在を誰も信じないこの時代に…」老人はニューヨークで出会った自分そっくりの青年“天使”について語った。ポー風の物語にはじまり、ルイジアナの美しい屋敷に住む一家の崩壊がゴシック的につづられるかと思えば、SF童話風に核シェルターでの一家族の残虐行為が“長靴”によって話されていく…。注目のアメリカの新人マグラアが、超自然物から精神分析までを巧みに使い、ゴシック小説を現代によみがえらせたエレガントで不気味な短篇集。米英でベストセラー。
冴木隆の父親・涼介は、女に弱く、頼りがいゼロの私立探偵。そんな涼介に、モンローばりのグラマー美女ジョーンから来日中の必殺調毒師タスクを捜して欲しいとの依頼があった。ところが何を血迷ったのか、ジョーンは涼介にタスク特製の48時間後に効く毒をみまってくれた!!中和できるのはタスクが持っている解毒剤だけ。絶体絶命、どうする隆…。ドタバタ親子が繰り広げる、笑いとスリルいっぱいの探偵物語。
経済危機と反政府運動に揺れるパナマで、住菱商事の支店長が誘拐され身代金四百万ドルを要求された。統幕別室から離れた鬼道組はこの事件に当たりパナマへ潜入。実態を追う連城たち精鋭は背後に潜むCIAと魔王の兵士・ノーマンの陰謀を掴み、支店長救出のため密林深く追撃する。
菅原道真の二十五代目で元侍従頭、現在は日本橋にある銭湯の主人・唐橋在家、通称杏之介は、光格天皇の政事に関わる重大な密勅を受けて、東海道を京都へと向かっていた。公家の慣習を嫌い改革を進めた杏之介が半ば追放という形で京を離れて以来の道中であった。だが、杏之介の存在に末だに嫌悪を抱く異母弟の陰謀により、道行き刺客に狙われる。執拗に迫る刃に立ち向かい、殪した杏之介が旅の果てに見るものは…。
店の金を持ち逃げした銀座のホステスを追って、鹿児島へ飛んだ取立て屋。やっと見つけた女は、取立て屋をネグリジェ姿のまま迎えた。男はホステスの色仕掛けを甘んじて受け、その夜にもう一度集金に来ることを約束した。ところが、男を部屋で待っていたのは!男女の性と暴力をテーマに、官能とサスペンスで描く傑作集。