1989年11月発売
ベルリンの富裕な銀行家の子として生まれたペーターとパウリのヴィンター兄弟は、若くして第一次世界大戦に従軍する。だが、過酷な戦争が終わった時、彼らが忠誠を誓った皇帝は退位し、第一級の強国だったはずのドイツ帝国は崩壊した。社会主義革命の暴動、大インフレの中、ヒトラーのナチが登場し台頭していく。-20世紀前半のドイツを舞台に、二人とその家族の波瀾の生涯を描く。
父の事業を継いだペーターの妻はユダヤ系アメリカ人だった。ナチに逮捕された彼女の釈放をかちとるべくペーターはアメリカへ渡る。一方パウリは父の庇護を失い、ゲシュタポの弁護士となった。第二次世界大戦が勃発し、ペーターは連合軍情報部の連絡員となって故国に潜入する。-とうとうたる歴史の流れを克明に辿りながら、揺れ動く時代に生きた人びとの姿を重厚に描く長編小説。
天の川のように人は流れ、時は流れる。別れた夫も難問にぶつかっている。性のざわめき、体の不調が私を襲う。あの頃は二人で居る孤独、今は一人で居る孤独の中に日々は過ぎてゆく。女性のシングル・ライフをつみめる長編小説。
かつては中世ボヘミアの王、いまはアインシュタインの友人。この男、名はアロバー、当年とって、千歳という。不老不死の甘き香りを求めて、男は旅立った。流れ流れて一千年。辿り着いたのは、二十世紀末のニュー・オーリーンズだった。同じ頃、シアトル在住の美人ウェイトレスのもとに、真っ赤なビートが届けられる。いったい誰が、何のために?鍵を握る究極の香水、K23とは。
ぼくはもう、こんな両親のもとでは一時間も暮せない。本当に理解しあえる両親を求めて、自由契約裁判を起したケース。テキサス、ハワイ、アラスカ、ニューヨークと契約養子を願う“理想的な親”のもとを訪ねて歩くが…もしもあなたが父親なら、子供に「ノースするぞ」といわれた要注意!この物語は、そんな親子の物語。
秋も深まってきた10月のある朝、ふだん静かなフラトロラム村が興奮につつまれた。パブ栗駒亭に泊っていたアメリカ人旅行者が刺殺体となって発見されたのだ!昼は村の便利屋、夜は密猟者という二つの顔を持つダン・マレットは、犯行のあった晩、新任司祭の就任式でこのアメリカ人を目撃していた。そして、新任司祭の若妻サンドラがこの男を見たときの苦渋の表情も、式のあとで彼女がこっそりパブへ忍んでいった姿も…。“殺人”だけでも珍しいのに“アメリカ人”というおまけまでついて、パブでの噂話はいやがうえにも盛り上がった。一方、怯えるサンドラの姿に同情したダンが、警察の目を彼女からそらせようと、容疑者になりそうな村人を片っ端から犯人に仕立ててはその推理をパブで流していったため、村は容疑者だらけに!自由と自然を愛するアウトドア探偵ダン・マレットの活躍を描く、英国流ユーモアただようシリーズ最新作。
突然姿を消したコラムニストのバリーの行方を突き止めてくれ-ニューズ社から私立探偵エイモス・ウォーカーにこんな依頼が舞いこんだのは、彼とバリーがヴェトナム時代からの親友だからだった。まずウォーカーはバリーのオフィスを調べ、埋め草記事を集めたマニラ・フェルダーを発見した。空港に駐車された車のトランクから発見された死体、地元の労働組合の委員長の二年前の死亡記事、デトロイト市警の警視の早期退職の記事…。これら雑多な記事のなかにバリーの行方を示唆するものが含まれているのではないかと考えたウォーカーが詳細を知ろうと動きだした矢先、記事にでていた警視が自殺した。はたして、これらの記事の裏には、どんな繋がりが隠されているのか?そして、バリーの失踪はそれにどう関わっているのか?正統派ハードボイルドの伝統を受け継いだ、タフなデトロイトの私立探偵エイモス・ウォーカー再登場。
『ソフトウェア』の騒動から30年。スタアン・ムーニーと名前を変えて、月で探偵稼業にいそしむステイ=ハイに、ユカワ博士から女性助手の行方をさがしてほしいと依頼があった。遺法の麻薬“マージ”がらみの事件らしい。“マージ”は人体のタンパク質をどろどろに溶かし、この世のものとも思えぬ法悦境を味わわせるという代物。しかもロボットがこの麻薬を悪用し、人間・ロボット双方を超越する存在をつくりだそうとしたことから、ムーニーはとんでもない事件に巻きこまれていく…。ディック記念賞受賞のシュールでポップな正統派マッドSF。
1966年。アメリカ人ウォルター・エンディコットがフィラデルフィアのホテルに滞在中、部屋に異変が生じた。いきなり照明が消え、ラジオの音がとぎれ、フロントへの電話もまるで通じない。しかたなく下へ降りてみるとホテルの様子ががらりと変わっていた。設備はみすぼらしく老朽化しており、自分の泊まっていたホテルとは似ても似つかぬものだった。外に出てみると、そこにはホテルに着いたときとまるで違った風景がひろがっていた。そもそも、ここはフィラデルフィアなのか?真相を追求すべく、エンディコットは街をさまよい歩くが…?
エンディコットの入りこんだのは、彼自身の世界とは様相の異なる並行世界だった。並行世界の存在を知ったエンディコットはこの世界のアメリカ政府に、上院議員の地位と引き換えにその情報を売った。ほかの並行世界に通じるポイントを次々と発見したアメリカ政府は、各世界の資源・情報を収集すべく、現地に秘密工作員を送りこんだ。のみならず大統領ロビンソンは、並行世界の存在を利用して世界を破滅に導きかねない恐ろしい計画をひそかに進行させていた…。多重世界をめぐる国際的陰謀を背景に新鋭が壮大なスケールで描く傑作SF長篇。
幽霊退治ならまかせとけ!幽霊を捕まえるためならば、たとえ火の中、水の中、ヘドロやスライムだってへっちゃらさ。クリスマス・シーズンのニューヨーク、そのにぎやかな街なみの裏にひそむ恐るべき敵の気配を察知したゴーストバスターズは、ただちに活動を開始するが…最新のSFXとスリルにみちた展開で描きだす傑作映画の原作。
ある日、一頭の牝馬がビショップ親子の牧場につれてこられた。ダッチェスという名のこの馬、何かと厄介事を起こして他の馬となじまない。それもそのはず、実はダッチェスこそ、神話時代より、善と暗黒の馬との確執の中心であるアパルーサ種最後の牝馬だったのだ。彼女の存在に気づいた暗黒の馬は、アパルーサ種絶滅の格好の機会とばかりに〈死刑執行者〉を送り出した。片や善の馬の軍団の首領ダンサーは、ダッチェスを救うために神性を捨て、一介の馬として天界から俗界へと下るが…。『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』をしのぐ傑作。
時を同じくして妖魔の火円に灰を撒くという、義兄グラトンとの妖魔殲滅の計画は、タリオンがヴァンクリフによって帝国側に捕えられることにより頓挫した。タリオンはグラトン側の様子を探るべく心眼をこらすが、なぜか突然その心眼が閉ざされてしまう。グラトン側の様子のわからぬままに、タリオンは斬首刑に処されることになった。だが処刑の直前、ラトーと、謎の美髯の戦士デイオーザ率いる一団の戦士達の死を賭した活躍によって、無事に危地を脱することに成功した。そしてタリオンはディオーザから驚くべき事実を明かされたのだった…。
雨の夜、公邸へ帰る枢機卿の車が、暗殺者に襲われた。運転手の一瞬の判断で枢機卿は難をのがれるが、その運転手は死亡した。数時間後、災厄は再び訪れた。公邸へ戻った彼を公安警察と称する男が拉致し、人里離れた建物の中に軟禁したのだ。いったい何が起こっているのか?不安と疑惑の霧を晴らすべく、枢機卿は脱出を決行、独力で調査を開始する。執拗な追跡者の手をのがれ、闇の世界をさまよう彼は、やがて驚くべき事実を探り出した!東欧の一国を舞台に、国家を揺がす隠謀を描くベストセラー・サスペンス。CWA賞、ブッカー賞候補作。
世界の目が集まる華麗なパリのファッション界。今そこに、二人の女性がデビューを飾ろうとしていた。たぐいまれな美貌と天性の経営手腕に恵まれた日本人、中村由紀と、その娘ドーン。二人の斬新なデザインは、すでにパリ中の話題になっていた。だがファッション・ショウを目前にして、何者かが卑劣な妨害の手を伸ばしてきた。窮地に陥った由紀の脳裏に、五十年前、十六歳で上海に渡つた自分の姿が甦る…。戦火の中国大陸から世界のファッション界へのしあがつてゆく一人の日本人女性と、彼女をめぐる男達の愛と戦いを描く感動の大河ロマン。
1931年の上海で、由紀はアメリカ副領事のサムと激しい恋に落ち、愛の結晶を身篭った。だが自分との関係がサムの経歴に傷をつけることを恐れ、由紀は彼の前から姿を消す。身重の体で路頭に迷った彼女に手を差しのべたのは、サムの友人でもある日本領事館の伊藤大佐だった。やがて中国大陸の戦火が上海を覆い、激しい戦闘の中で由紀はドーンを出産。サムと伊藤が和平工作に全力を傾ける一方で、彼女は念願のファッション・サロンを開き、自立への道を歩みはじめるー。戦争の荒波の中で逞しく成長してゆく由紀の姿を歴史的事件を織りまぜて描く。
中国への侵略を止めるよう首相に直言した伊藤は満州に左遷された。彼とともに満州へ赴いた由紀とドーンは、太平洋戦争、ソ連軍の侵攻そして東京裁判と、数数の試練を経て、日本のファッション界で地位を築いてゆく。苦難を乗り越え、今パリの桧舞台に踊り出た二人は、ファッション・ショウに全てを賭けていた。その成功を妨害しようとする者は一体誰なのか?由紀は自分の夢を実現するため、立ち塞がる敵に敢然と戦いを挑む。二人の男性への愛の狭間で揺れ動きながら、自分の生き方を発見してゆく日本人女性の波瀾の半生を描く壮大なドラマ。