1989年11月発売
物語はある一族の一枚の写真から始まる。中央には、ドーン家の頂点をなす女ソフカ。そして彼女をとりまく4人の息子と娘たち。放蕩を尽くした夫はすでに亡い。ソフカは、このブルジョワ家庭を律する厳しい意志の女として生きてきた。だが、そのからだの奥底には、もう一人の別の女がひそんでいる-。倦怠。反目。情熱。孤独。…ドーン一族の男と女が、それぞれにたどる人生。4枚の結婚式の写真が、抗いがたい血の宿命を絵解きしていく。
いま、注目を集めるビルマ。その厳しい社会状況の中で、たくましく“現実”を描出する女性作家たち-。ビルマ最高の文学賞《国民文学賞》を四度受賞のモゥモゥ(インヤー)始めマ・サンダーなどベテラン作家から新進まで12人が、庶民の多彩な夢と人生を活写して“知られざる国”ビルマを浮き彫りにする1974年〜85年の12作品。明日への希望をこめて綴ったビルマ《ミャンマー》の熱きアンソロジー。
虚言癖のある男の妻に恋した主人公の千々に乱れる心の動きを克明に追った表題作「嘘つき」ほか、「五十男の日記」「モード・イーヴリン」の中篇3作を収録。登場人物の内面に〈視点〉を置くという画期的な手法で20世紀文学の扉を開いた、ヘンリー・ジェイムズの傑作心理小説。
母親のあえぎ声を聞きながら育った亜由子は、高校2年の17歳。そろそろ処女と決別する時期だが、ボーイフレンドも童貞で、あと一歩進むことができない。そんな時、別れていた実の父と同居することになり、次第に彼女は父に魅かれていく。そして、遂に父の腕に抱かれた時、彼女は歓びの声を-。
白昼の新宿東口スタジオ・アルタで、美少女アイドル伊藤久美子が多くのファンの頭上でバラバラになった。しかし、目撃者はいても、死体の一部すら発見できない。多くの目撃者たちは夢を見ていたのか!?だが、美少女たちは衆人環視の中で次々に惨殺され、姿を消していった。一体、美少女たちはどこへ?時を置かずに渋谷に出現した《玄夢教団》のドーム。そのドームでのみ見ることができるという、夢サーカス。姿を消したはずの美少女たちが舞う、世にも不思議な、華麗で哀しいサーカスの秘密とは?
三年まえ友人平岡への義侠心から自らの想いをたち切った代助は、いま愛するひと三千代をわが胸にとりもどそうと決意する。だが、「自然」にはかなっても人の掟にそむくこの愛に生きることは、二人が社会から追い放たれることを意味した。
アンナは兄オブロンスキイの浮気の跡始末に、ペテルブルグからモスクワへと旅立った。そして駅頭でのウロンスキイとの運命的な出会い。彼はアンナの美しさに魅かれ、これまでの放埓で散漫だった力が、ある幸福な目的の一点に向けられるのを感じる。
激しい恋のとりことなったアンナは、夫や子どもを捨て、ウロンスキイとともに外国へと旅だった。帰国後、社交界の花形だったアンナに対する周囲の眼は冷たい。一目愛児に会いたいという願いも退けられ、ひそかに抱くひとときがアンナに与えられるのみだった。
アンナは正式な離婚を望む。が夫は拒否。ウロンスキイはアンナを愛したが、社交界で孤立してゆく彼女に次第に幻滅を感じる。絶望したアンナはついにホームから身を投げる、「これで誰からも、自分自身からものがれられるのだ」とつぶやきつつ。
サンフランシスコのとある病院で、キルシーは今まさにパイを投げつけようとしていた。といっても、これは笑い療法という治療法のひとつで、コメディアンのキルシーは患者を笑わせるのが仕事なのだ。と、相棒に命中するはずのパイが、突然ドアを開けて入ってきた男の顔面に…。慌てて謝るキルシーと、クリームをぬぐう男の目が合った。天才物理学者とキュートなコメディ・ガール、2人の胸の鼓動は高鳴り出した。
差出人不明の手紙に呼び出され、好奇心からハイドパークへ出向いたヘルストン伯爵。そこへ、1頭の馬が猛スピートで駆けてきたかと思うと、目の前で、緑色の乗馬服の女が馬から落ちた。驚いて駆け寄る伯爵に、女はレディ・チェビントンの娘カリスタだと名乗り、チェビントン館からの招待を断ってくれと思いもかけない言葉を口にする。「うちにいらしたら、無理やりわたしと結婚させられてしまうからよ」。