1989年6月発売
夫との旅の途中、清教徒の町セーラムでアンジェリクは病に倒れた。高熱と悪夢に苦しみながら双子を生んだ彼女の枕元には“魔女”と恐れられる二人のクエーカー教徒の女が。突然町に姿を現わした黒衣のイエズス会士、秘密を告げようとして謎の死をとげた若者…病床のアンジェリクの胸は忍び寄る不安に波立つのだった。
作家の間宮は過疎村の廃屋が気に入り、家族とともに東京から移住してきた。夢見村の自然は素晴しかったが、墓地には大きな秘密があるようだった。村人たちも沈黙の中で何かを隠そうとしている。家の持ち主の「妻」にも二代にわたり異変が起こっていた。追いつめられていく若い家族の限りない恐怖!ホラー長編。
膨大な額にふくれあがった借金をすべて踏み倒す。この役目を誰にやらせるか?思案に暮れた島津重豪は、茶坊主の調所を大抜擢、駄目でもともとと大坂に派遣する。回天の事業はまさにこの時はじまったー。地位も財力もない身で瀕死の薩摩経済を再建、維新の胎動に挑戦した不屈の男の経営手腕を描く長編。
黄河学術調査団のメンバーとして中国に渡ったカメラマン笹井には、もうひとつの目的があった。太平洋戦争当時軍属として中国大陸にいたことのある父が、昨年中国再訪の旅に出たまま失踪してしまったのだ。その謎を解きたい、と笹井は決意していた。その笹井を次々奇怪な事件が襲う。何が父に起きたのか?悠久の大河を舞台の鮮烈ミステリー。
リオのカルナヴァル(謝肉祭)の最後の夜、暗殺者であるおれは、組織の裏切者・金承春を狙ってビルの高層階に待機した。金はリオの非合法地域に潜伏中だったが、カルナヴァルの日にはどの住民も例外なしにサンバの踊り手として山車の上に乗らなければならない。おれは今、狙撃の瞬間を静かに待っている。
強者だけが生き残れるサハラ砂漠ー。テロリストの一味は、乾ききった死の世界の奥へと逃げ去った。ローマ大使館で人質にされた、12歳のいたいけな小女を嬲り殺したあげく。もはや許せない。大統領直属の殺し屋コーディー軍団の、凄まじい反撃が開始された。ご存じ無敵ヒーローの胸のすく冒険活劇。
処女作「風宴」の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作「桜島」の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作「日の果て」。「桜島」「日の果て」と照応する毎日出版文化賞受賞の「幻化」。無気味で純粋な“生”の旋律を作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。
グリム童話が不思議に交叉する丘の上の家。“姉がひとり、弟が二人とその両親”-嫁ぐ日間近な長女を囲み、毎夜、絵合せに興じる五人ー日常の一駒一駒を、限りなく深い愛しみの心でつづる、野間文芸賞受賞の名作「絵合せ」。「丘の明り」「尺取虫」「小えびの群れ」など全十篇収録。
結婚生活に失敗した独り暮しの作家矢添と画廊で知り合った女子大生紀子との奇妙な交渉。矢添の部屋の窓下に展がる小公園、二台の揺れるブランコ。過去から軋み上る苦い思い出…。明晰・繊細な文体と鮮やかな心象風景で、一組の男女の次第に深まる愛の〈かたち〉を冷徹に描きあげ人間存在の根本を追求する芸術選奨受賞作。
すべてのチェックポイントをクリアすれば憧れのタレントとデートができる『魔界オリエンテーリング』。その先では数々の殺人事件が待ちうけていた。事件の陰に見え隠れする犯人の姿。それを追う星子たち、そして十文字右京。すでにマサルは凶悪な犯人らによって眼をやられてしまった。オリエンテーリングのゴールも間近。そして犯人もすぐそこに迫っている!おまちかねの後編!登場だ。
一色舞、14歳。名家のお嬢様である。通っている学校も名門の白鳳学園、当然また由美やおケイとは出会っていない。舞には、怒った時にだけ怪力が発揮できる超能力をもっている。そんな舞に、お見合いの話がもちあがった。すっかりその気になっている両親の顔をたて、舞はOKした。相手は名家中の名家北白河家の次男・慧、お見合い中に、生徒の誘拐を目撃した舞は、犯人を追いかけた。
ヘンな噂が広まっている。出るってゆーのよ、あたしの学校の化学実験室に。ゆ…幽霊が!?その真偽を確かめるべく、あたしたちはいつものメンバーで肝だめし大会。そしたら…死んでるうっ!えっ、幽霊だから死んでるのは当たり前だって?ち、ちがうのよ、ホントに殺されちゃった死体が出ちゃったの!おなじみ北野&明石刑事を加えて、犯人と幽霊、両方の足どり大捜査のはじまりよ〜っ。
女の子であることを隠しながらも、ロックグループ“トレジャータイムス”のリードボーカルとして、人気急上昇のレイラ。そんな彼女の前に、ひとりの少女が現れる。レイラを男の子だと信じ、彼女になりたいというその少女は、以前にレイラをふった男、今泉雪則とつきあっているはずの菜々絵だった。かつての恋敵の出現におどろき、雪則との苦い別れを思い出して動様するレイラだが…。
あたし、菜々子。城南中の1年生で、いま妖精に夢中なの。そんなあたしに、友だちの千佳やユキはひややかな態度。イジワルなクラスメートの麻由にも、バカにされちゃったし。でも、あたし平気なの。だって担任の羽渕先生も、妖精が好きだったんだって!あたし、先生に教えてもらった妖精ティタニアをよぶおまじないを、ためしてみた。すると、ある夜、キラキラ輝く不思議な夢をみたの…。
エリート然とした端整な悠二、やや不良っぽくニヒルなかおるー博習館高等部総務部整副委員長のふたりは、女子の間で人気を二分している。この両美形には、大人びた物腰の杏子とボーイッシュな幸子がいつも補佐している。今、彼らの関心事は文化祭のイベント。自主性を重んじる校風とはいえ、学校の承認をとるまでには容易ではない。このイベントが、やがて学園の伝説になろうとは…?
あたしは高野圭子、高一。入学前の春休みにこの街に引っ越してきた。ところが何と、隣の家に同じクラスの男子がいて、その名前が原田達彦、前の中学であたしをフッたヤツと同姓同名!彼は見かけは軟弱な優等生だけど、シンは強くて骨っぽい。あたしはいつか惹かれてきった。でも、彼は、夢を実現させるために、人生を賭ける決心をしたと言う。あたしを置き去りにして、彼は何を…?