1989年7月発売
奥信濃の秘境・秋山郷と東京六本木の2ヵ所で続けざまに起った美人姉妹殺人事件!両方の殺人には、伝説の鬼女が出現していた。探偵事務所のアルバイト女子学生の私は、一緒に殺された犬のゼウスに犯人を示す鍵があると気づき、第三の殺人を阻止しようとするが…。鬼女の魔手は、容赦なく私に向ってくる。
寝台特急「さくら」で射殺死体が発見された。車内に残された5千万円の札束は、少女誘拐殺人事件で支払われた身代金と判明した。一人娘を殺された及川俊郎が誘拐犯をつきとめ、4年前の復讐を遂げたのか?しかし及川には「さくら」の前を走る「あさかぜ82号」に乗車していたという鉄壁のアリバイがあった。
レジャーライターの釣部渓三郎は、初夏の笹子奥野沢では女の全裸死体、また寸又峡の栗代川では身元不明の男の死体を発見する。二つの事件の関連は?男の所持品の中に渓流用の珍しい毛バリが1本。毛バリが語る男の隠された素顔。おなじみ釣部と上条アキのコンビの推理が冴える渓流ミステリー。
昭和57年9月ー東京・荒川の河川敷で、関東大震災直後に故なく虐殺された朝鮮人を慰霊するための遺骨発掘作業が行なわれた。だが、遺骨は見つからず、3年後、別の白骨死体が隅田公園で発見された。身元捜査が開始される…。過去と現在が交錯する二重、三重の深い謎を描く、本格社会派ミステリー。
独身実業家沖邦彦の花嫁公募に殺到した若い女性の群れから最後に4人が選ばれた。平凡なOLの中山美佳もそのうちのひとりである。4人は沖と京都へ旅する。第1夜に美佳は沖と結ばれ、幸せにひたるが、他の花嫁候補の身に惨事が起きていた。そしてまた、次の犠牲者が…。華麗トリックをちりばめた秀作集。
第二次世界大戦でアメリカが誤って撃沈したとされる補給船大阪丸。だがこの船にはアジア諸国から収奪された巨額の金が極秘に積みこまれていた。いまこの黄金が引き揚げられると、各国経済は大打撃を受けかねない。所有権の問題と引揚げの是非をめぐって各国の国際戦略がからみ合い、南シナ海は緊張に包まれた。長編海洋スパイ小説の傑作。
世界の金相場を壊滅しかねぬほどの膨大な黄金を積んで沈んだ「大阪丸」。その測り知れない財宝を、3人の男の、どす黒い野望が狙っていた。国益よりも自分の利益が優先のCIAコンサルタント、日本財界の大物、台湾の将軍。舞台はラングレー、丸の内、基隆の軍港、さらに海中深くに目まぐるしく移動し、国際緊張は一気に高まっていく。
“戯作者”の精神を激しく新たに生き直し、俗世の贋の価値観に痛烈な風穴をあける坂口安吾の世界。「堕落論」と通底する「白痴」「青鬼の褌を洗う女」等を収録。奔放不羈な精神と鋭い透視に析出された“肉体”の共存ー可能性を探る時代の補助線ー感性の贅肉をとる力業。
原爆投下から30数年、〈女〉は長崎を訪れた。坂の上の友人の家で、人々と取止めない話を交しながら死んでいった友たちや、14で被爆した自らの過去を回想する。日々死に対峙し、内へ内へと篭り、苦しみを強いられ生きる被爆者たち。老い。孤独。人生は静まり返っているが体験を風化させはしない。声音は低く深く響く。原爆を凝視する著者が被爆者の日常を坦々と綴る名篇。
高校2年の有加。趣味は写真。そのウデを親友の鈴子に買われて新聞部の臨時カメラマンに。口ではイヤがっても内心はウキウキ。だって陸上部のエース、慎治に堂々と接近できるんだもの!それに姉の志穂が、陸上部で彼の2年先輩だったから、共通の話題もあるし…、と心ときめかせていたら、優という一年坊主から、いきなり愛の告白。少女たちが織りなす、甘やかな恋の輪舞曲。
おれがゆり子と知り合ったのは、ひょんなことからだった。高校入学後まもなく、通学のバスの中で、金が足りなくて困っていたおれに、彼女が「返さなくていいわ」と言って、バス賃分をくれたのだ。おれはいつもは自転車通学なので、彼女に会いたいと思いながらも、その後は二度会っただけだった。だが、夏休みも残り少なくなったある日、彼女にむしょうに会いたくなり、自転車を走らせた。
私ー小川桃子は童話作家になるのが夢。大の仲よし、成美や奨二、喜芳たちと、17回目の夏をむかえようとしている。でも、長袖のブラウスは着たまま。1年前の交通事故の傷あとが左腕にあるからなの。その原因となったのは、姉の萌ちゃんの彼の拓哉くん。実は萌ちゃんにも言えない秘密が、私と拓哉くんの間にはあったの…。17歳の夏に、永遠を夢見た少女の、物語。
ボクは、小川モネ。かわいくも、きれいでもないけど、れっきとした女子高生。両親が離婚して、祖父母の所にやっかいになってる。ボクのいちばん好きなひとは、順三郎。彼もボクのこと、やさしく見つめ返してくれる。そして、親友の貴子が好きなのは、順三郎のイトコの綸堂。彼もお家の事情がかなり複雑なんだ。白い層雲の下のボクらのサマータイムロマンス。結果は、涙の夕立、のち快晴。
ひっこみ思案の過去を忘れ、今度こそ明るい学園生活を送るのよ!一大決心(?)とともに高校へ通いはじめた結花。クラスメートの島海緒や彩女とは気が合うし、勢いで入った軽音部も性にあっているみたい。ユーウツの種といえば、昔のいじめっ子・金太と再会したことぐらいだけど、でも不思議。金太とケンカするのさえ、楽しくなってきた気がするの…。学園恋愛ジャンクション、第1弾。
鳥取の砂丘でテレビCM撮影中の舞妓に毒が盛られ、祗園花見小路では同輩が殺された。しかも、事件は意外な方向に飛び火し、俳優の元の妻に続いて、疑惑の俳優自身も、琵琶湖畔の別荘で謎の死を遂げる。それは自らの犯行を侮いての自殺だったのか、それとも他殺か?トリックの女王山村美紗が、舞妓小菊と高名な日本画家沢木のコンビを配して描く、斬新華麗なミステリー・ロマン。
「猫の蚤とりになって暮らせ!」-藩校始まって以来の秀才、剣術の腕前も並み以上、それなのに主君の勘気に触れ、「猫の蚤とり」となって女客めあてに春を売る侍の、奇妙な運命を描く表題作。獄中で一世一代の枕絵に挑む絵師、浮気が露顕して女房に追い出された商家の婿養子、将軍家好物のかれいの煮付けの小骨を抜く侍…。愛すべき江戸の男たちをめぐる6つの物語。