1989年7月1日発売
トーニ・コンロイは166分署の婦人警官として、生まれ育ったマンハッタンの下町に赴任してきた。彼女は自分の娘と弟の生命を奪った麻薬に対して復讐戦を挑むつもりだった。だが、ひそかに当時の捜査記録を見て、2人の死が事故ではなく、殺人だったことを知る。トーニは勤務が終わると私服に着がえ、ひとり犯人を求めてジャンキーたちのたむろする街に出る…。異色の警察小説。
20世紀末のある日、ニューメキシコ砂漠の天文台が、奇妙な電波信号をキャッチした。それは厖大な素数系列で、発信源は26光年彼方のヴェガ系惑星と判明した。地球外知的生物からの電波探査機関〈アーガス〉の責任者エリーが、待ち望んだ瞬間だった。世界の専門家が協力しついに信号は映像化されたが、スクリーンに現われたのは、あまりにも意外な…。著名な天文学者の処女小説。
ヴェガ系惑星から届いた〈メッセージ〉解読のため、世界中の知識が総動員された。やがてそれはある機械の設計図であることが分った。再び全世界の協力の下で作り上げられたその〈マシーン〉に乗って、エリーたち5人の地球人代表が、ヴェガに向けて旅立つことになったー。宇宙の先進文明との接触を主題にして、最新の科学情報を基盤に、著者の卓抜な空想が展開する雄大な叙事詩。
中米の国、コスタリカ。国連食糧農業機関の職員であるイギリス人カーターは、この国の深刻な食糧危機を解決するべく派遣されたが。が、順調に進んでいた画期的な援助計画は突然妨害を受け、彼は失踪した。カーターを追って妻サマーズはジャングルに入り、陰謀の真相を知った…。世界的複合企業体の巨大な権力に翻弄される個人を描き、第三世界の現実に鋭く切り込んだ異色の冒険小説。
今度の作品『人間の幸福』では、大自然の力である神は、人間の幸福を、どんなふうに考えているか、ということを書きました。人間の本当の幸福は、この現実の世界に生きながら、大自然の神の世界にいる人間のような気持ちで生きることだと教えられて、それはどういうことなのか、二人の女性が現代社会のなかでどう生きていくか、ということを書いています。
五十歳になったことをきっかけに書き始めた連作から、還暦を迎えて急逝したわずか三ケ月前に書き上げられた表題作まで、予感するように死を意識した日日の心情を私小説風に綴った短編群。「暴飲暴食」「五十歳記念」「心臓破り」「風と灯とけむりたち」「第三の男」「傷は浅いが」「引越貧乏」の七編を収録。
探偵ブルーが、ホワイトから依頼された、奇妙な、ブラックという男の見張り…。アメリカ文学に初めて現われたエレガントな前衛。カフカが書いたような探偵小説と評された、その代表作。ニューヨーク三部作の最高傑作。
刑事弁護士となったホープのもとへ、初めて殺人事件の弁護の依頼が飛び込んできた。依頼人は、妻の女流映画監督をナイフで惨殺したとして逮捕された夫のカールトンで、犯行に用いられたナイフが、血染めの彼の衣服と一緒に自宅の庭に埋められているのが発見されていた。ナイフと衣服はどちらも事件の十日前に家から盗まれたものだとカールトンは主張していたが、自宅に押し入るところや庭に何かを埋めているところを隣近所の者に目撃されており、ホープは、映画を見ていたという彼のアリバイの立証に全力を注いだ。だが、ホープにはひとつ気にかかることがあった。被害者の女流監督が秘密主義で撮影していたという映画のフィルムがどこにも見当らないのだ。その頃、ホープの知らないところでは、フィルムを求めて、さまざまな思惑を持った男たちが行動を開始していた…!新たなる展開で巨匠が放つ、殺人童話シリーズ最新作。
縦と横が50キロメートルの巨大宇宙母艦プラットフォームから射出された超弩級戦艦群が、惑星ルビンを包囲していた。《ブラック・ヒルズ》は、そこに釘づけのローダン一行を救出しようとするが、撃墜されてしまった。十数人の生きのこりとともにかろうじて脱出したドン・レッドホースは、スペース=ジェットで包囲網突破をもくろむ。だが、戦艦群の攻撃をかわしきれず、やむなくプラットフォームに不時着、何者が操縦するかもわからない巨大艦の内部に突入するが?
謎の存在が作りあげた人工天体〈中院〉から、マンダラのように伸び広がる神秘の星域〈眷属〉。この空間の特殊なパワーが、ついに人類の超光速飛行を可能にした。人類は地球を捨て、果てない宇宙へと飛び出した。だが、その前途に思わぬ強敵が立ちふさがったー神出鬼没でなみの武器では倒せない怪物が、平和なコロニーや宇宙船を血の海に変えはじめたのだ!この事態を解決すべく、分子破壊銃を手に掃討作戦を開始した不死者の総括官コルランは、恐るべき真相に一歩、また一歩と迫ってゆく…壮麗な宇宙を舞台に新鋭が放つSFアクション!
五千日も続く冬の到来を前に、竜座の第三惑星では大混乱が生じていた。原住種族ヒルフのなかでも蛮族として知られるガールが、他部族の食糧を略奪しに北から移動してこようとしていたのだ。この惑星に移住して、何世代もたつ異星人ファーボーンは、ガールの大軍に立ち向かうべく、ヒルフの温和な部族トバールと同盟を結ぶ。だが、ファーボーンの頭アガトとトバールの族長の娘ロルリーが出会ったとき、事態は大きく展開するのだった…異種族間の相克を、ル・グィンがみずみずして筆致で鮮やかに描いた、『ロカノンの世界』につづく長篇第2作。
どらが鳴った。あと13回その響きがこだますれば、アコマ家の姫君マーラは修道女になる。その厳粛な儀式の最中、闖入者が現われた。アコマ家の兵士だ。どうやら、マーラの父と兄が戦死したらしい。一転して名家の長となったマーラ。それは、ツラニ帝国の生活のすべてを支配する〈高等会議ゲーム〉のはてしない権力闘争に身を投じなければならぬことを意味していた。聞くところによれば、父と兄の死もこの〈ゲーム〉での陰険な策謀によるものだという。弱冠17歳のマーラに、栄して権謀術策にたけた男たちを相手に闘うことが出来るだろうか?
一代で巨万の富を築き、大会社の社長となったヴェトナム帰還兵のダン・ゴールドマン。彼はサバイバル・ゲームをするため、スコットランド沖の自分の島に赴いた。同行者はダンの右腕のピーター、野心家の若手重役ボブ、そして心に深い傷を持つダンの美しい秘書ジョージー。それぞれの思いを胸に秘めながらも、彼らはゲームを心ゆくまで楽しむはずだった。だが、そこには復讐に燃える暗殺者が忍び込んでいたのだ。やがて不気味な銃口が火を噴き、島は一転して地獄の戦場と化した!大型新人が『待ち伏せの森』に続いて放つ力作冒険サスペンス。
「おねがい、来て」留守番電話に吹きこまれた少女ポリーの声はリッチの助けを求めていた。彼は恋人のカリンと共に雪道をひた走り、ポリーの父親が経営する宿を訪れるが、娘は不在だと冷たくあしらわれる。不審に思ったリッチは、宿の一角でポリーが虐待を受けているのを発見。しかし、警官を連れて現場に戻ったとき、彼女の姿は消えていた。少女の身を案じるリッチの前にやがてアイネズと名乗る妖しい女が現われ、ポリーは実は悪魔に取り憑かれているのだと告げた。
悪魔に取り憑かれ、恋人カリンを惨殺したリッチ。兄のコナーは殺人罪で起訴された彼を救うべく奔走する。だが、悪魔払いも効果なく、惨殺事件の目撃者たちは次々と奇怪な死を遂げてゆく。悪魔の狙いは世界の注目を集める裁判で、おのれの力を誇示することにあった。悪魔の手が自分の家族にまで伸びたとき、コナーは絶海の孤島より霊力を持つ弁護士を呼ぶ決意をする。かくて法廷において悪魔対人間の凄絶な死闘が開始された。
悪名高い上院議員が、選挙を控え、自宅で刺殺されていた。家の者をわざわざ外出させているのも奇妙なら、犯行現場にいわくありげな小箱が置かれていたのも奇妙だった。出てきた手紙から、いかがわしい婦人との交際が明らかになるが、事件の様相を一変させたのは、脅迫状だった。アーロン・ドウなる囚人からのもので、復讐をにおわせる文面だった。しかもこの男は最近出所したばかりだったのだ…!現代的な女探偵の先駆ペイシェンス・サムを登場させ、老探偵ドルリイ・レーンとの見事なコンビぶりを描く型破りの本格探偵小説。新訳決定版。