1989年発売
西暦紀元前54年、エジプトの首都・アレキサンドリア。エジプトに滅ぼされた小国キルマの生き残りアシラスは、大商人イスペロに育てられ、野性的な13歳の少年に育っていた。ある日アシラスはプッチ、ペロポとともに、運河で溺れかけた少女を救うが、彼女はプトレマイオス朝の王女・クレオパトラだった。彼女との出会いにより、アシラスの不思議な運命の扉が開かれようとしていた…。
芥川賞100回記念出版。全受賞作家の名作、出世作を総集する待望の全集。第1回受賞作、石川達三氏の「蒼氓」から第100回受賞作に至るまで、文学史上にその名を留める不朽の作品群。芥川剰選評・受賞者のことば・年譜収録。
夫との旅の途中、清教徒の町セーラムでアンジェリクは病に倒れた。高熱と悪夢に苦しみながら双子を生んだ彼女の枕元には“魔女”と恐れられる二人のクエーカー教徒の女が。突然町に姿を現わした黒衣のイエズス会士、秘密を告げようとして謎の死をとげた若者…病床のアンジェリクの胸は忍び寄る不安に波立つのだった。
作家の間宮は過疎村の廃屋が気に入り、家族とともに東京から移住してきた。夢見村の自然は素晴しかったが、墓地には大きな秘密があるようだった。村人たちも沈黙の中で何かを隠そうとしている。家の持ち主の「妻」にも二代にわたり異変が起こっていた。追いつめられていく若い家族の限りない恐怖!ホラー長編。
膨大な額にふくれあがった借金をすべて踏み倒す。この役目を誰にやらせるか?思案に暮れた島津重豪は、茶坊主の調所を大抜擢、駄目でもともとと大坂に派遣する。回天の事業はまさにこの時はじまったー。地位も財力もない身で瀕死の薩摩経済を再建、維新の胎動に挑戦した不屈の男の経営手腕を描く長編。
黄河学術調査団のメンバーとして中国に渡ったカメラマン笹井には、もうひとつの目的があった。太平洋戦争当時軍属として中国大陸にいたことのある父が、昨年中国再訪の旅に出たまま失踪してしまったのだ。その謎を解きたい、と笹井は決意していた。その笹井を次々奇怪な事件が襲う。何が父に起きたのか?悠久の大河を舞台の鮮烈ミステリー。
リオのカルナヴァル(謝肉祭)の最後の夜、暗殺者であるおれは、組織の裏切者・金承春を狙ってビルの高層階に待機した。金はリオの非合法地域に潜伏中だったが、カルナヴァルの日にはどの住民も例外なしにサンバの踊り手として山車の上に乗らなければならない。おれは今、狙撃の瞬間を静かに待っている。
強者だけが生き残れるサハラ砂漠ー。テロリストの一味は、乾ききった死の世界の奥へと逃げ去った。ローマ大使館で人質にされた、12歳のいたいけな小女を嬲り殺したあげく。もはや許せない。大統領直属の殺し屋コーディー軍団の、凄まじい反撃が開始された。ご存じ無敵ヒーローの胸のすく冒険活劇。
処女作「風宴」の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作「桜島」の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作「日の果て」。「桜島」「日の果て」と照応する毎日出版文化賞受賞の「幻化」。無気味で純粋な“生”の旋律を作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。
グリム童話が不思議に交叉する丘の上の家。“姉がひとり、弟が二人とその両親”-嫁ぐ日間近な長女を囲み、毎夜、絵合せに興じる五人ー日常の一駒一駒を、限りなく深い愛しみの心でつづる、野間文芸賞受賞の名作「絵合せ」。「丘の明り」「尺取虫」「小えびの群れ」など全十篇収録。