1989年発売
筑豊人には百年の間、石炭採掘によって日本経済を支えたという誇りがある。その誇りこそが、雑草のように逞しい根強さとなって、若者達に伝承されなければならない無形の遣産だと思う。筑豊炭田に奏でる青春讃歌。
交通事故で、たったひとりの弟を失い悲嘆に沈む天涯孤独な美歩。彼女の悲哀のプロセスを見守る桂田にも、娘貴和を同じ事故で失った深い悲しみと、妻の狂気の苦悩があった…。励まし、すがる二人の間に生れた愛が、美歩を立ち直らせようとする時、桂田は死の周辺にむらがる黒い影を感じ、密かに追い続ける。
カリフォルニア州サリーナスにほど近い港町キャナリー・ロウで、ある日突飛なパーティーが催される。-皆から「先生」と呼ばれ尊敬されている生物学者、ビジネスにはうるさい雑貨商リー・チョン、女主人ドーラの経営する売春宿の女たち、「ドヤ御殿」と名づけられた小屋に寝泊りする浮浪者たちが巻き起す笑いと涙の物語。
人生というばくちに敗れ、はずれ者として死んでゆく男虫喰仙次に対する深い親愛と共感を綴る表題作ほか、入学試験に失敗し挫折してゆく叔父〈御年さん〉や元海軍司令の父に寄せる想いを描く作品など7篇を収録。
冴えない性具研究家の周囲に若く美しい女たちが群らがりだした。夢にまで見た女陰にいきり立った男性自身を力強く打ち込み、男は童貞を捨てたのだが、妖しく淫らな風に煽られるようにして、女たちはますます痴態をエスカレートする。どうやら、彼にはセックスに思いを残す淫霊がとり憑いたらしい-。
暗くよどんだアパートの1室に帰っていくOLの、唯一のストレス発散はセックス!言葉巧みに上司を誘い、ホテルの狭い部屋で、つかの間の情事にひたる女たちは、さまざまなテクニックを使っては濡れた股間を開き、男を招き入れ、むさぼり、吸いつくし、歓喜の声をあげて狂ったように求め続ける。
赤壁の大敗で、曹操は没落。かわって玄徳は蜀を得て、魏・呉・蜀三国の争覇はますます熾烈にーー。呉の周瑜、蜀の孔明、両智将の間には激しい謀略の闘いが演じられていた。孫権の妹弓腰姫(きゅうようき)と玄徳との政略結婚をめぐる両者両様の思惑。最後に笑う者は、孫権か、玄徳か?周瑜か、孔明か?一方、失意の曹操も、頭角を現わし始めた司馬仲達の進言のもとに、失地の回復を窺う。
「三国志」をいろどる群雄への挽歌が流れる。武人の権化ともいうべき関羽は孤立無援の麦城に、悲痛な声を残して鬼籍に入る。また、天馬空をゆくが如き往年の白面郎曹操も。静かな落日を迎える。同じ運命は玄徳の上にも。--三国の均衡はにわかに破れた。このとき蜀は南蛮王孟獲に辺境を侵され、孔明は50万の大軍を南下させた。いわゆる七擒七放の故事はこの遠征に由来する。