1989年発売
将門は著者の最も食指を動かした人物の1人である。反逆者としての歴史の刻印を除きたい気持もあったが、純粋で虚飾のない原始人の血を将門にみたからだ。都にあっては貴族に愚弄され、故郷(くに)では大叔父国香に父の遺領を掠められ、将門はやり場のない怒りを周囲に爆発させる。それは天慶の乱に発展し、都人を震撼させる。富士はまだ火を噴き、武蔵野は原野そのままの時代だった。
友人との約束で、葉山マリーナに出掛けた兼坂浩一。その目の前で艇が大轟音とともに爆破された。一体、何者の仕業か?そして友人の安否は?謎は謎を呼び、さらに浩一に死の恐怖が次つぎと襲い掛かる。そんな折、突然、祖母が不可解な死を遂げた。遺された古新聞に包まれた白いレース掛け。爆破事件と祖母の死は連動しているのだろうか?事件は、イワノフ王朝の秘宝をめぐり、国際的な、壮大な展開を見せてゆく…。ボルシェビキ革命直後の歴史的な謎を題材にした書き下し大長編。
新妻梶浦沙知子は怯えていた。この1カ月、毎週水曜日の晩に都内で放火事件が発生し、その日に限って夫の清彦が深夜、蒼い顔で帰宅するのだ。放火現場はすべて清彦が独身時代に住んでいた、沙知子にも馴じみの深い場所だ。〈夫は放火犯か?〉疑惑に取り憑かれた沙知子に追討ちをかけるように、清彦の知人が相次いで殺された…。そんな折、沙知子は清彦から木曽路への旅に誘われた。〈私は夫に殺される!〉恐怖に苦悩する沙知子だったが…。名手が書下ろしたミステリーの傑作。
「あなたには死相が見える。自ら死に赴く者を救えば、あなたも救われる」京都を訪れた折、占い師から告げられた予言どおり、氷川隆也は、相模湖で身投げした絶世美女を救った。やがて彼女を愛し始めた氷川は、悪妻京子の殺害を企てたが、計画は失敗に終わった。ところがその後、京子は大阪・道頓堀で何者かに毒殺された。だが、隆也をはじめ、殺害動機を持つ者たちには鉄壁のアリバイがあった…。古都の四季を背景に、驚くべきトリックを駆使して描く本格推理の傑作。
「ブルーダイヤはどこだ!」ある夜、ソープ嬢藤木美輪は、2人組の男に襲われた。失踪した美輪の兄が、強奪した50億のダイヤを独り占めしたという。半信半疑の美輪は、兄の一人娘良を預けてある探偵緒形に、ダイヤ探しを依頼。緒形は恋人の短大生温子、元警官でオカマの未宇と調査を開始した。マセチビ天使・良に振り回される大人たち。やがて、ダイヤを狙うもう1つの影が浮かび上がり、ついに殺人事件が発生した…。人気女流が書き下ろした傑作ユーモア推理。
西暦紀元前54年、エジプトの首都・アレキサンドリア。エジプトに滅ぼされた小国キルマの生き残りアシラスは、大商人イスペロに育てられ、野性的な13歳の少年に育っていた。ある日アシラスはプッチ、ペロポとともに、運河で溺れかけた少女を救うが、彼女はプトレマイオス朝の王女・クレオパトラだった。彼女との出会いにより、アシラスの不思議な運命の扉が開かれようとしていた…。