1989年発売
突然姿を消したコラムニストのバリーの行方を突き止めてくれ-ニューズ社から私立探偵エイモス・ウォーカーにこんな依頼が舞いこんだのは、彼とバリーがヴェトナム時代からの親友だからだった。まずウォーカーはバリーのオフィスを調べ、埋め草記事を集めたマニラ・フェルダーを発見した。空港に駐車された車のトランクから発見された死体、地元の労働組合の委員長の二年前の死亡記事、デトロイト市警の警視の早期退職の記事…。これら雑多な記事のなかにバリーの行方を示唆するものが含まれているのではないかと考えたウォーカーが詳細を知ろうと動きだした矢先、記事にでていた警視が自殺した。はたして、これらの記事の裏には、どんな繋がりが隠されているのか?そして、バリーの失踪はそれにどう関わっているのか?正統派ハードボイルドの伝統を受け継いだ、タフなデトロイトの私立探偵エイモス・ウォーカー再登場。
『ソフトウェア』の騒動から30年。スタアン・ムーニーと名前を変えて、月で探偵稼業にいそしむステイ=ハイに、ユカワ博士から女性助手の行方をさがしてほしいと依頼があった。遺法の麻薬“マージ”がらみの事件らしい。“マージ”は人体のタンパク質をどろどろに溶かし、この世のものとも思えぬ法悦境を味わわせるという代物。しかもロボットがこの麻薬を悪用し、人間・ロボット双方を超越する存在をつくりだそうとしたことから、ムーニーはとんでもない事件に巻きこまれていく…。ディック記念賞受賞のシュールでポップな正統派マッドSF。
1966年。アメリカ人ウォルター・エンディコットがフィラデルフィアのホテルに滞在中、部屋に異変が生じた。いきなり照明が消え、ラジオの音がとぎれ、フロントへの電話もまるで通じない。しかたなく下へ降りてみるとホテルの様子ががらりと変わっていた。設備はみすぼらしく老朽化しており、自分の泊まっていたホテルとは似ても似つかぬものだった。外に出てみると、そこにはホテルに着いたときとまるで違った風景がひろがっていた。そもそも、ここはフィラデルフィアなのか?真相を追求すべく、エンディコットは街をさまよい歩くが…?
エンディコットの入りこんだのは、彼自身の世界とは様相の異なる並行世界だった。並行世界の存在を知ったエンディコットはこの世界のアメリカ政府に、上院議員の地位と引き換えにその情報を売った。ほかの並行世界に通じるポイントを次々と発見したアメリカ政府は、各世界の資源・情報を収集すべく、現地に秘密工作員を送りこんだ。のみならず大統領ロビンソンは、並行世界の存在を利用して世界を破滅に導きかねない恐ろしい計画をひそかに進行させていた…。多重世界をめぐる国際的陰謀を背景に新鋭が壮大なスケールで描く傑作SF長篇。
幽霊退治ならまかせとけ!幽霊を捕まえるためならば、たとえ火の中、水の中、ヘドロやスライムだってへっちゃらさ。クリスマス・シーズンのニューヨーク、そのにぎやかな街なみの裏にひそむ恐るべき敵の気配を察知したゴーストバスターズは、ただちに活動を開始するが…最新のSFXとスリルにみちた展開で描きだす傑作映画の原作。
ある日、一頭の牝馬がビショップ親子の牧場につれてこられた。ダッチェスという名のこの馬、何かと厄介事を起こして他の馬となじまない。それもそのはず、実はダッチェスこそ、神話時代より、善と暗黒の馬との確執の中心であるアパルーサ種最後の牝馬だったのだ。彼女の存在に気づいた暗黒の馬は、アパルーサ種絶滅の格好の機会とばかりに〈死刑執行者〉を送り出した。片や善の馬の軍団の首領ダンサーは、ダッチェスを救うために神性を捨て、一介の馬として天界から俗界へと下るが…。『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』をしのぐ傑作。
時を同じくして妖魔の火円に灰を撒くという、義兄グラトンとの妖魔殲滅の計画は、タリオンがヴァンクリフによって帝国側に捕えられることにより頓挫した。タリオンはグラトン側の様子を探るべく心眼をこらすが、なぜか突然その心眼が閉ざされてしまう。グラトン側の様子のわからぬままに、タリオンは斬首刑に処されることになった。だが処刑の直前、ラトーと、謎の美髯の戦士デイオーザ率いる一団の戦士達の死を賭した活躍によって、無事に危地を脱することに成功した。そしてタリオンはディオーザから驚くべき事実を明かされたのだった…。
雨の夜、公邸へ帰る枢機卿の車が、暗殺者に襲われた。運転手の一瞬の判断で枢機卿は難をのがれるが、その運転手は死亡した。数時間後、災厄は再び訪れた。公邸へ戻った彼を公安警察と称する男が拉致し、人里離れた建物の中に軟禁したのだ。いったい何が起こっているのか?不安と疑惑の霧を晴らすべく、枢機卿は脱出を決行、独力で調査を開始する。執拗な追跡者の手をのがれ、闇の世界をさまよう彼は、やがて驚くべき事実を探り出した!東欧の一国を舞台に、国家を揺がす隠謀を描くベストセラー・サスペンス。CWA賞、ブッカー賞候補作。
世界の目が集まる華麗なパリのファッション界。今そこに、二人の女性がデビューを飾ろうとしていた。たぐいまれな美貌と天性の経営手腕に恵まれた日本人、中村由紀と、その娘ドーン。二人の斬新なデザインは、すでにパリ中の話題になっていた。だがファッション・ショウを目前にして、何者かが卑劣な妨害の手を伸ばしてきた。窮地に陥った由紀の脳裏に、五十年前、十六歳で上海に渡つた自分の姿が甦る…。戦火の中国大陸から世界のファッション界へのしあがつてゆく一人の日本人女性と、彼女をめぐる男達の愛と戦いを描く感動の大河ロマン。
1931年の上海で、由紀はアメリカ副領事のサムと激しい恋に落ち、愛の結晶を身篭った。だが自分との関係がサムの経歴に傷をつけることを恐れ、由紀は彼の前から姿を消す。身重の体で路頭に迷った彼女に手を差しのべたのは、サムの友人でもある日本領事館の伊藤大佐だった。やがて中国大陸の戦火が上海を覆い、激しい戦闘の中で由紀はドーンを出産。サムと伊藤が和平工作に全力を傾ける一方で、彼女は念願のファッション・サロンを開き、自立への道を歩みはじめるー。戦争の荒波の中で逞しく成長してゆく由紀の姿を歴史的事件を織りまぜて描く。
中国への侵略を止めるよう首相に直言した伊藤は満州に左遷された。彼とともに満州へ赴いた由紀とドーンは、太平洋戦争、ソ連軍の侵攻そして東京裁判と、数数の試練を経て、日本のファッション界で地位を築いてゆく。苦難を乗り越え、今パリの桧舞台に踊り出た二人は、ファッション・ショウに全てを賭けていた。その成功を妨害しようとする者は一体誰なのか?由紀は自分の夢を実現するため、立ち塞がる敵に敢然と戦いを挑む。二人の男性への愛の狭間で揺れ動きながら、自分の生き方を発見してゆく日本人女性の波瀾の半生を描く壮大なドラマ。
テレビ界の超大物プロデューサーが局ビルから転落死した。土曜の夜の人気番組《最後の笑い》放送後の、深夜の出来事だった。ゲストの大リーガーのお守り役で来ていた元大リーガーのハーヴェイ・ブリスバーグは、スキャンダルを恐れた局の副社長から警察捜査とは別の内密の調査を頼まれた。子役の頃からブラウン管の向こう側でつねにスターでありつづけた男に、どんな人生があったのか。番組の放送作家たちをはじめ、恨みを抱く者は業界に何人もいるが、観察と推理の果てにハーヴェイが到達したある真相とは。テレビ世代のための待望の新本格。
プロ・サッカー・チーム〈スターズ〉の花形選手が競技場の控え室で殺された。首の骨を折られ、全身を打撲している。しかしそれは事件の発端に過ぎなかった。数日後、死体発見者のカメラマン、マンクガイアのもとに犯人から奇怪なメッセージが送りつけられ、さらにチームから第二の犠牲者が…。スリリング、かつエキサイティングなスポーツ・ミステリの登場。
1950年代、ジョージア州の小さな町コトン・ポイント。自らの規範にしか従わない男パリス・トラウトがひきおこした黒人少女殺害事件は、パリスの妻ハンナ、弁護士シーグレイヴズなどを捲込み、やがて町を席捲する大きな渦となっていく。保守的な町で行なわれる裁判とその後の一連の事件が、さまざまな人々の愛憎、偽善、悲しみとともに明らかにしていく、アメリカ深南部の核。スリラー風の展開と深い人物造型で絶賛された1988年度全米図書賞受賞作。
モントリオールからヴァンクーヴァまで、ロッキイ山脈を越えて驀進するカナダ大陸横断鉄道。各地の競馬場でレースをしながら、車内ではミステリ劇を楽しむという趣向の特別列車が、競馬振興のためにカナダ・ジョッキィ・クラブの支援で企画された。ところが、乗客の中に危険な男が1人いた。英国人の馬主ジュリアス・アポロ・フィルマー。脅喝によって名馬をおどしとったり、さまざまな不正を働いている国際競馬社会の敵である。今度は何を企んでいるのか?かねてからフィルマーを内偵中の英国ジョッキィ・クラブは、保安部員トー・ケルジイをカナダに送った。ケルジイは身分を隠し、ミステリ劇の覆面俳優として、ウェイターに化けて特別列車に乗込んだ。馬、馬主、厩務員、競馬ファン、そしてひそかな陰謀を満載して、大陸横断列車はスタートした。行手には、ロッキィの大自然と大いなる危険が待ち構えている。サスペンスが鉄路を走る。待望のシリーズ第27弾。
混成浪士隊の分裂は早く、清河八郎は去り、やがて横暴を極めた芹沢鴨も、近藤勇の命で斬られた。殺戮が日常化するにつれ、総司の天稟の剣技は冴え、一方、新選組内には殺伐の風も吹き始めた。愛人おあいを冒した労咳は総司の頑健な肉体をも蝕み、ついに池田屋での乱刃の中で喀血、時代は総司を置き去りにしはじめる…。若き剣客・沖田総司の眼から時代の激浪を見つめた歴史長篇完結篇。
12月21日、大手スキーメーカー、エトワール社の社長・大河原剛司が、雪の志賀高原でガラン沢に跳び込み、そのまま行方不明になった。スキー歴50年のベテランとは信じ難い事故だった。翌年2月16日、剛司の妻・萌子が、谷川岳でスキーのエッジで頚動脈を切り、出血多量で死亡。3月末、今度は剛司の養子・恒介までもが…。事故か、殺人か。社長一族を襲った不幸の陰に潜むものは?長篇スキー推理。