1990年11月1日発売
腰まで届く黒髪に、かかとの太いハイヒール、日本人の血をひきながら血を吐くようにファドを歌い、熱く激しくフラメンコを踊る炎の女、カルメンシータ・マリア・ロドリゲス。失踪した恋人アンジェリータを追い、マドリから東京にやって来た彼女がスペイン・コネクションがらみのヤクザ抗争に巻き込まれる…。魅惑的なキャラクターがやさしく謎を解いていく、栗本サスペンスの新境地。
漂流している日本の自動車運搬船が発見された。船は完全に遺棄され、残されたままの死体は傷みが激しい。やがて、乗り込んだ男たちに変調が表われた。頭痛・目まい・吐き気…。死の船は謎の大爆発を起し、付近の船舶を道づれにして沈没した。近くの海底で秘かに海底資源の調査を行なっていたピットたちは、爆発で生じた海底地震のため、生命の危険にさらされることになったー。
日本経済を裏から操る実力者・隅坂秀太は、ある小島に秘密基地を設け、世界制覇を目論む拠点としていた。深海から奇跡の生還を果したばかりのピットは、息つく暇もなくドイツで起きた陥没事故現場へ向い、小島の位置を解く鍵を手に入れた。最新のハイテク技術を駆使して要塞化され、ロボットたちに護られたこの基地・ドラゴンセンターへ、いよいよピットは潜入したー。
ラルフ・ベア(36歳)は、マンハッタンを中心にビルを幾つも建ててきた。富と名声と美貌の恋人アマンダに支えられて華麗な人生を送る彼は、いま世界最高の住空間ベア・センターをニューヨークに建設しようとしている。それは、祖父からのベア家の夢である。そんな折、突然の父親の過去の告白を受け、父の友人の娘ゲイルとの2年間の結婚を懇願された。彼は術もなく承諾したが…。
ゲイルの父親は20年間ラルフの父親の罪を被り身代わりとなって服役した。離婚の際には莫大な財産がゲイルに入るとはいえ、ふたりの偽りの結婚生活は、憎しみ以外の何物でもなかった。しかし、ニューヨーク市長の陰謀に嵌められながらもベア・センター建設のために奔走するラルフの情熱と誠実さに、いつしかゲイルは彼を愛し始め、ラルフもまた彼女の中に真実の妻をみていた…。
旧友のウェスタガードが大統領候補に指名されようとしている、11月のある冬の日、ミネソタの森で、鹿狩りに出かけたフレッシャーは何者かに銃撃され、瀕死の重傷を負った。しかし、誰が何のために、彼を抹殺しようとしたのか…?5年前に妻を亡くし、山の中で一人、静かな生活をいとなんでいたフレッチャーだったが、彼は森を出て、見えぬ敵をあぶりだし、追いつめていく。
40歳を過ぎて、スズキさんははじめて休暇をとった。その朝届いた一冊の古本『ドン・キホーテ』。差出人の名前は奇妙に甘く懐しく、スズキさんは20年前の時間旅行へと旅立った…。一点突破全面展開を期す、優しく過激なファンタジー。
時は戦国時代。名将・武田信玄の三女にして、木曽義昌のもとへ嫁がされた“甲州御前”万里姫を、過酷な運命の数々が襲う。夫との不仲、姑との確執、そして、木曽家の凋落…。信長、秀吉、家康と、あいつぐ天下取りの荒波に揉まれながらも、誇り高く、気丈に生きた女の生涯を流麗な筆致で描いた歴史絵巻。
50口径ライフルの赤外線スコープが捉えた日本人少女の顔-ジャパンバッシングかまびすしいワシントンDCで起った不幸な交通事故を清算させるべく、元女性警官の指が引き金にかかった。護る側攻める側入り乱れて、聖夜のアメリカに展開する戦慄のサスペンス長編。
少女は必死に走った。最終バスに乗り遅れると、門限に間に合わない。だが、バスは無情にも目の前を走り去っていく。翌朝、少女は死体となって発見された。ノーフォークの連続絞殺魔“ホイッスラー”の4番目の犠牲者だった…。ダルグリッシュ警視長は、亡くなった叔母の遺産を整理するため、休暇をとってノーフォークの海ぞいの寒村を訪れた。青い海を背景に、午後の光を受けて金色に輝く松林や修道院廃墟。そしてその向こうには、ラークソーケン原子力発電所の巨大な灰色の建物が、岬を睥睨するように聳え立っている。この平和な光景に、“ホイッスラー”の影などどこにも感じられない。だが、それはたんなる幻想にすぎず、死の脅威がこの岬にも襲いかかろうとしていることを、ダルグリッシュは知る由もなかった。現代本格ミステリの頂点に立つ著者が人間の心に巣くう策謀と欲望を重厚な筆致で描きあげた話題の本格巨編。
時は21世紀。地球はひとつの巨大な“ネット”に包みこまれていた。情報化と核兵器廃絶で力を失った国家にかわり、ネット上で活躍する多彩な多国籍企業が地球を動かしているのだ。そのひとつ《ライゾーム》社の呼びかけに応え、第三世界のデータ海賊の大物たちが、社のゲストハウスに集結してきた。違法なデータ盗用と無意味な武力抗争に終止符を打つのが《ライゾーム》社のもくろみだったー。だが交渉開始の矢先、会談の責任者ローラの目前で悲劇が起こった…。気鋭作家が近未来情報化社会をリアリスティックに描いたSF問題作、ついに登場。キャンベル記念賞受賞。
会談は決裂したー第三世界のデータ海賊のひとりが、正体不明の無人機械に殺されたのだ。疑心暗鬼におちいり、復讐にのりだすデータ海賊たち。だが情報社会に暴力が無意味であることを確信するローラは、彼らを再度交渉のテーブルにつかせるため、単身旅立つことを決意する。グレナダ…シンガポール…権力と軍、秘密警察が一体となってデータ海賊行為をはたらく国々。そこでローラを待ちうけていたのは、想像を絶する悪夢だった。90年代SFを担うスターリングが果敢に新機軸を切りひらき、キャンベル記念賞受賞に輝いた話題の傑作長篇。
ギリシアで紀元前15世紀のミュケナイ文命の遺跡を発掘していたボストン大学の美人考古学者クレア・アンダースンは、同僚のジョージとともに驚くべきものを見つけた。これまでミュケナイ文明の遺跡から出土したこともない遺物が、古代の王が埋葬されている墳墓に隠されていたのだ。それは、黒い石灰石でできた縦横1メートルの立方体だった。その側面には琥珀でできた長さ10センチほどの角が埋めこまれていた。これは3カ月にわたる発掘作業で最大の発見だった。だがこの苦労のすべてを水の泡にする事件がクレアたちを待ちうけていたのだ…。
アメリカとの共同発掘のギリシア側の責任者であるアレクサンドロス・コントス大佐は、突然アメリカの学者たちに2週間以内に調査隊を解散し、発掘現場から立ち去るよう要求した。しかも、コントス大佐は発掘続行の見返りにクレアにいかがわしい申し出までしてきたのだ。考古学史上前代未聞の出土品の調査をどうしても続けたかったクレアは、ついにとんでもない計画を実行に移したが…。恐るべき怪物を封じこめた古代の遺物をめぐるアメリカ・ギリシアの争いを、科学者作家ベンフォードが息もつかせぬ展開と壮大なスケールで描く傑作冒険SF。
考古学者エリザベスは、マヤのジビルチャルトゥン遺跡を発掘調査中、奇怪な現象を体験したー古代マヤ語を話す女の“幻”と遭遇したのだ。この女こそ、マヤに実在した女神官スーイー・カーク。壮大な使命を秘めて永劫の時を超え、マヤ暦の大いなる時の円環が一巡する現代にやってきたのだ。同じころ、長いあいだ音信不通だったエリザベスの娘ダイアンもマヤに姿を現わす。時を超えて3人の女が一堂に会したとき、古代マヤの恐るべき予言が着実に実現しようとしていた…。期待の新鋭マーフィーが華麗なる神話的小宇宙を紡いだネビュラ賞受賞作。
現実の世界から暗黒の生き物が人肉を求めて暴れまわる異世界へ転移した女子大生のジルと自動車整備工員のルーディ。ふたりは化け物と闘う間に、それぞれのうちに秘められた力を発見したージルは剣士に、ルーディは魔法使いになれる才能があったのだ。これに気づいた魔法使いインゴールドは、ルーディを連れてクオへと旅立った。その地にこそ、暗黒の生き物を退治する手立てを知る唯一の人物、魔法使い会議の議長ロヒロがいるのだった。だが、たどり着いてみるとクオには魔法がかけられ、誰も近づくことができない迷宮の都市と化していた。
1977年4月、モスクワのゴーリキー公園で雪の下から男女3人の射殺体が発見された。いずれも顔面を鋭利な刃物で削ぎ落とされ、指先も切断されていた。捜査を命じられた民警の主任捜査官レンコは残虐な事件の背後に見えかくれするKGBの影に当惑する。彼は人類学研究所に被害者の顔の復元を依頼する一方、被害者のひとりがはいていたスケート靴から運命の女性イリーナと出会う。反体制派の彼女に次第に魅かれてゆくレンコ。そして捜査線上に浮かぶアメリカ人の毛皮商…。不可解な事件の真相を追ってレンコはソ連社会の暗部へと迷いこんでゆく。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞。