1990年2月発売
アリソンは戦略家だった。四人目の夫を失くし、娘たちも独り立ちしたいま、親友のプラムとジュインと一緒に老後を楽しく暮らそうと計画を立てたのも彼女だった。だが、いざオレゴンの海岸沿いにある〈ねじれた家〉で共同生活を始めてみると、お互いあらが目立って気に障ることばかり。そして、そんな三人の老女たちの生活を陰から監視する若い男がいた…。男の名はトミー。ねじけた性格でみみっちい悪事を重ねてきた彼は、〈ねじれた家〉に住む老女の一人が、過去に殺人を犯しながら捕まらずにきたのを知っていた。そしていま、それをネタに脅迫しようと、チァンスをうかがっていたのである。相手は女でしかも年寄り。金は簡単に手に入るはずだった。ところが予想に反して相手が開き直ってきたことから、事態は思わぬ方向へ…。孤立した家を舞台に老人と若者の対決を息詰まる緊迫感で描いたMWA新人賞候補の心理サスペンスの秀作。
悠久の時のかなたに滅び去った強大な星間帝国がつくった究極の戦闘マシンーバーサーカー。生きとし生きけるものすべてを殺戮することのみをプログラムされたこの自動戦闘マシンは、創造者たる帝国の滅亡後もはてしなく自己複製と改良をつづけ、やがて人類星域に大挙して侵入してきた!かくして、多様な形態と恐るべき武器をそなえたバーサーカーと人類の壮絶な戦闘が、銀河系宇宙全域にわたってくりひろげられることになった。シリーズ第3巻。
閑静なリゾート地に見るもおぞましい疑似生物が出現し、住民をパニックに陥れた。ほぼ時を同じくして、惑星サラクシの超能力者シャーマンが地球から帰還後消息を絶ったという報告が入る。かれははるばる地球の超能力研究所を訪問しながら、わずか一時間ほどで逃げるように立ち去っていた。コムコンー2〈異常事件〉部の伝説の男マクシム・カンメラーの指令を受け、調査員トイヴォ・グルーモフは次々とわき起こる不可解な事件の捜査を開始した…。ソビエトSFの雄が『蟻塚の中のかぶと虫』に続き壮大なイマジネーションを展開する傑作長篇。
この風光明媚な湖には何かがある。夜ごと水面を這う七色の怪異な色彩、生長過剰な動植物たち。あまつさえ、この湖で泳くと生気が吸いとられていく。この異変に逸早く気づいたのが二人の老学者。彼らは湖の監視員はもとより、付近のキャンプ場の人々にも事の重大さを説いてまわるが、耳を貸す者は誰一人いない。そうこうするうちに、ついに湖の犠牲者が出始めた。老学者たちは事の真相を究明すべく、ラヴクラウトと交流のあった画家を訪れるが…。ラヴクラフトの名篇「異次元の色彩」を現代に甦らせたコズミック・ホラー・ファンタジィ。
人類初の恒星間宇宙船〈ディオゲネス〉は片道5万光年の旅に出た。だが、人類の壮挙ともいうべきこの旅の出発式は、驚くほど小規模なものだった。人々はすでに宇宙開拓への意欲を失っていた。フロンティア・スピリットにみちあふれ、選び抜かれた先鋭たち、とはいいがたいクルー6名が搭乗した〈ディオゲネス〉-しかし、それを見守っていたのは人類だけではなかった。異星生命体・見張り(ウォッチャー)もまた、人類監視のため、注視しつづけるのだった。異星体とのファースト・コンタクトを描く本格SF「見張り」ほか、7篇を収録。
アメリカは占領された!急激な軍備縮少と敵の策謀で、戦わずして敗北したのだ。ホワイトハウスの翻訳官ヒュウリットは、スラブ人司政官ザリンスキイの命令で占領軍への協力を強要される。やがて彼が見たものは、厳しい言論統制、ユダヤ系市民に対する弾圧などの過酷な占領政策。だが祖国奪還のため密かに活動を開始した者たちがいた。アメリカ最高の頭脳を結集した抵抗グループ〈ファースト・チーム〉。彼らの狙いは、恐るべき破壊力を持つ核ミサイル搭載原子力潜水艦を敵の手から奪取することだった。悪夢の事態を迫真の筆致で描く冒険大作。
綿密な計画の下、原潜奪取作戦は開始された。敵の裏をかき、潜水艦〈マグサイサイ〉は無事港を脱出。だが、敵も死にもの狂いで捜索を開始した。〈マグサイサイ〉が敵国を射程内に収めるには、難関ベーリング海峡を抜けなければならないのだ。一方、〈ファースト・チーム〉はヒュウリットを通じて敵に最後通牒をつきつける。アメリカから撤退しなければ、核ミサイルを敵国に発射するというのだ。だが敵はすでに潜水艦を発見、撃沈したと発表した。果たして〈マグサイサイ〉とアメリカの運命?占領者の圧制と戦う人々の勇気を描く感動の巨篇。
モスクワでアメリカ人を狙った連続殺人事件が発生した。アメリカは元CIAモスクワ支局長スターチャーを現地に派遣、彼はサーカスの花形である女性工作員と共に調査を開始する。そんな折、驚くべきことが起きた。闇の勢力の支配者ジャルコフが死の淵から甦ったのだ。彼は崩壊状態にあったソ連の秘密情報機関ニチェヴォを再建、再びその長官となる。一方、創造神ブラフマーの再来たるジャスティンは、ジャルコフ復活の報を知るや厳しい修行を積み、仇敵を倒すべくモスクワへ向かった…。MWA賞受賞作『グランドマスター』の待望の続篇登場。
連続殺人事件で揺れるモスクワに、さらに重大な事件が起きようとしていた。失脚した前書記長が、再び政権を握るべく陰謀をめぐらし始めたのだ。彼には強力な味方がいた。その人物、恐るべき魔力をを持つ少年シラーイはジャスティンの命を狙っていた。連続殺人事件を追うスターチャーと運命の再会を果たしたジャスティン、その彼を倒すべく執念を燃やすジャルコフ。-古来からの奇しき縁によって続けられた二人の抗争に、今、悪の化身シラーイが加わり、闘いはさらに、激化する。ファンタジィとスパイ小説を巧みに融合した一大エンターテイメント。
美術品密輸業のギルバート・ケンプにとって、それは朝飯前の仕事だった。ニカラグアの女富豪が、ヨーロッパ各国で買い集めた名画を輸出規制のないスイスまで運び込んでくれというのだ。高価なセザンヌの絵を抱え、ケンプはさっそくチューリッヒへと向かった。ところが駅に到着するやいなや、何者かの襲撃を受け、不覚にも輸送中の絵を奪われてしまった。あまりにも手際のよい襲撃の背後に潜むものは何か?プロとしての意地をかけ、ケンプは見えざる敵へ反撃を開始した。冒険小説の雄が美術界の裏側に生きる男の闘いをスリリングに描く。
ロンドンのビジネス街にあるささやかな煙草屋の二階に、切手商が間借りしていた。間借りといっても、切手商は週に二回しか部屋に来ず、しかも部屋には家具もカーテンも絨毯もなかった。ある日切手商のことを調べに刑事がやってきて、煙草屋の主人は俄然好寄心にかられた。切手商は、なんのために部屋を借りたのか。空っぽの部屋で何が行われているのか…築二百年を経た建物の意外な来歴が惹き起こした犯罪を描く表題作はじめ、ブラック・ユーモア、とぼけた味わい、あざやかなツイスト等、さまざまな趣好の逸品16篇を収録した初短篇集。
男は、フロリダ・キイズの湖のほとりに一人で住んでいた。フィッシング・ガイドとフライ作りをなりわいとして。恋人がいたが、その女にも、ほかの誰にも心を開いたことはなかった。生まれたばかりの時に自動車事故で両親を失い、その事実を十代の終わりに知らされた時、彼は復讐を決意した。この湖で相手の男を殺し、事故に見せかけて逃亡してから、人目を避けるように生きてきたのだ。そして、母親代わりに男を育ててきた女性が、いま釣り船の中で殺された…。環境破壊の進む島々を舞台に、孤独な男の闘いを描く全米書評子絶賛のデビュー作。
倒産寸前の音響メーカーに革命的な新スピーカーを売りつけた老人が殺された。殺人の現場は完全防音された実験室で、密室も同然の状況だった。しかも老人が何者であるのかを知る者はなく、犯人の動機さえわからないー投資会社の社長でやり手の父親と哲学者で世間知らずの息子の凸凹親子が不可能犯罪の謎に挑む、ハートウォーミングな本格派パズラーの好篇。
一撃で相手を天国へ送ることから“パラダイス・マン”と渾名される殺し屋ホールデン。彼は請け負った仕事のために幼友達のギャングを殺し、その時助け出した人妻と恋に落ちた。やがてマフィアの抗争に巻き込まれた彼は何者かに命を狙われ、彼女とともに身を隠すが。NYの暗黒街に生きるクールな殺し屋の姿をハードに描き出すクライム・ノヴェルの力作。
異星文化のごった煮と化した都市ヤミナベ・ポリスで開かれた超人サミットに四十数名のスーパーヒーローが集結した。このスーパーヒーロー一網打尽の機会を逃してなるものかと、悪の組織〈希望抜きのパンドラ〉は爆弾テロを敢行。スーパーヒーローの体はばらばらに。だが、天才バイオ科学者ユノ・Kの力により、地球人のホテルボーイ、スイハラ・カズヒコの脳とスーパーヒーローの部分を集めた新スーパーヒーロー〈怪傑ミイラ男〉が誕生した。
子供たちの父は、チャンドラーだった。その友は、フィリップ・マーロウだった。彼らの熱い思いがマーロウをここに蘇らせた。レイモンド・チャンドラー生誕百年記念出版。
現代の気鋭作家たちの新たなストーリーに乗って、フィリップ・マーロウの心と時代が躍動する。画期的な試みで誕生した記念アンソロジー。レイモンド・チャンドラー生誕百年記念出版。