1990年2月発売
人類初の恒星間宇宙船〈ディオゲネス〉は片道5万光年の旅に出た。だが、人類の壮挙ともいうべきこの旅の出発式は、驚くほど小規模なものだった。人々はすでに宇宙開拓への意欲を失っていた。フロンティア・スピリットにみちあふれ、選び抜かれた先鋭たち、とはいいがたいクルー6名が搭乗した〈ディオゲネス〉-しかし、それを見守っていたのは人類だけではなかった。異星生命体・見張り(ウォッチャー)もまた、人類監視のため、注視しつづけるのだった。異星体とのファースト・コンタクトを描く本格SF「見張り」ほか、7篇を収録。
アメリカは占領された!急激な軍備縮少と敵の策謀で、戦わずして敗北したのだ。ホワイトハウスの翻訳官ヒュウリットは、スラブ人司政官ザリンスキイの命令で占領軍への協力を強要される。やがて彼が見たものは、厳しい言論統制、ユダヤ系市民に対する弾圧などの過酷な占領政策。だが祖国奪還のため密かに活動を開始した者たちがいた。アメリカ最高の頭脳を結集した抵抗グループ〈ファースト・チーム〉。彼らの狙いは、恐るべき破壊力を持つ核ミサイル搭載原子力潜水艦を敵の手から奪取することだった。悪夢の事態を迫真の筆致で描く冒険大作。
綿密な計画の下、原潜奪取作戦は開始された。敵の裏をかき、潜水艦〈マグサイサイ〉は無事港を脱出。だが、敵も死にもの狂いで捜索を開始した。〈マグサイサイ〉が敵国を射程内に収めるには、難関ベーリング海峡を抜けなければならないのだ。一方、〈ファースト・チーム〉はヒュウリットを通じて敵に最後通牒をつきつける。アメリカから撤退しなければ、核ミサイルを敵国に発射するというのだ。だが敵はすでに潜水艦を発見、撃沈したと発表した。果たして〈マグサイサイ〉とアメリカの運命?占領者の圧制と戦う人々の勇気を描く感動の巨篇。
モスクワでアメリカ人を狙った連続殺人事件が発生した。アメリカは元CIAモスクワ支局長スターチャーを現地に派遣、彼はサーカスの花形である女性工作員と共に調査を開始する。そんな折、驚くべきことが起きた。闇の勢力の支配者ジャルコフが死の淵から甦ったのだ。彼は崩壊状態にあったソ連の秘密情報機関ニチェヴォを再建、再びその長官となる。一方、創造神ブラフマーの再来たるジャスティンは、ジャルコフ復活の報を知るや厳しい修行を積み、仇敵を倒すべくモスクワへ向かった…。MWA賞受賞作『グランドマスター』の待望の続篇登場。
連続殺人事件で揺れるモスクワに、さらに重大な事件が起きようとしていた。失脚した前書記長が、再び政権を握るべく陰謀をめぐらし始めたのだ。彼には強力な味方がいた。その人物、恐るべき魔力をを持つ少年シラーイはジャスティンの命を狙っていた。連続殺人事件を追うスターチャーと運命の再会を果たしたジャスティン、その彼を倒すべく執念を燃やすジャルコフ。-古来からの奇しき縁によって続けられた二人の抗争に、今、悪の化身シラーイが加わり、闘いはさらに、激化する。ファンタジィとスパイ小説を巧みに融合した一大エンターテイメント。
美術品密輸業のギルバート・ケンプにとって、それは朝飯前の仕事だった。ニカラグアの女富豪が、ヨーロッパ各国で買い集めた名画を輸出規制のないスイスまで運び込んでくれというのだ。高価なセザンヌの絵を抱え、ケンプはさっそくチューリッヒへと向かった。ところが駅に到着するやいなや、何者かの襲撃を受け、不覚にも輸送中の絵を奪われてしまった。あまりにも手際のよい襲撃の背後に潜むものは何か?プロとしての意地をかけ、ケンプは見えざる敵へ反撃を開始した。冒険小説の雄が美術界の裏側に生きる男の闘いをスリリングに描く。
ロンドンのビジネス街にあるささやかな煙草屋の二階に、切手商が間借りしていた。間借りといっても、切手商は週に二回しか部屋に来ず、しかも部屋には家具もカーテンも絨毯もなかった。ある日切手商のことを調べに刑事がやってきて、煙草屋の主人は俄然好寄心にかられた。切手商は、なんのために部屋を借りたのか。空っぽの部屋で何が行われているのか…築二百年を経た建物の意外な来歴が惹き起こした犯罪を描く表題作はじめ、ブラック・ユーモア、とぼけた味わい、あざやかなツイスト等、さまざまな趣好の逸品16篇を収録した初短篇集。
男は、フロリダ・キイズの湖のほとりに一人で住んでいた。フィッシング・ガイドとフライ作りをなりわいとして。恋人がいたが、その女にも、ほかの誰にも心を開いたことはなかった。生まれたばかりの時に自動車事故で両親を失い、その事実を十代の終わりに知らされた時、彼は復讐を決意した。この湖で相手の男を殺し、事故に見せかけて逃亡してから、人目を避けるように生きてきたのだ。そして、母親代わりに男を育ててきた女性が、いま釣り船の中で殺された…。環境破壊の進む島々を舞台に、孤独な男の闘いを描く全米書評子絶賛のデビュー作。
倒産寸前の音響メーカーに革命的な新スピーカーを売りつけた老人が殺された。殺人の現場は完全防音された実験室で、密室も同然の状況だった。しかも老人が何者であるのかを知る者はなく、犯人の動機さえわからないー投資会社の社長でやり手の父親と哲学者で世間知らずの息子の凸凹親子が不可能犯罪の謎に挑む、ハートウォーミングな本格派パズラーの好篇。
子供たちの父は、チャンドラーだった。その友は、フィリップ・マーロウだった。彼らの熱い思いがマーロウをここに蘇らせた。レイモンド・チャンドラー生誕百年記念出版。
現代の気鋭作家たちの新たなストーリーに乗って、フィリップ・マーロウの心と時代が躍動する。画期的な試みで誕生した記念アンソロジー。レイモンド・チャンドラー生誕百年記念出版。
回峯修験道の新行満行を目前にした修行僧・昇運を襲った、信長の叡山焼討ち。阿闍梨への道を閉ざされた昇運の呪言が、焦土のなかに響いた…。彗星の如く時代小説界を駆けた隆慶一郎が描く壮烈な戦国絵巻。
結婚2年半の平井めぐみは、エース化粧品宣伝マンの夫、豊と、出張先の蔵王ホテルで落ち合うことになっていた。ところが一日遅れてくる筈の夫がその日、ゲレンデのスキー客の中にいた。待っていた温泉での一夜をスッポカされた彼女は、夫婦間に溝ができたことを自覚した。そんなある日、室に押し入った青木という男にレイプされためぐみは、心ならずも性の深奥を覗いてしまった。そのことを知った豊が家出して間もなく、青木は殺され、「あなたの夫は人殺しよ。あなたも殺されないようにね」と女の声で怪電話がかかり…。
京都3大祭りのひとつ、時代祭りの行列の中にヒロインの巴御前に扮した広川雪江がいた。雪江は東京・調布にある音楽大の学生で、3人の学友と家族、それに大学の講師で推理作家でもある朝見大介の目前にきて、ハンケチをふった。ところがその直後に落馬してしまった。30分後、「ハハガ…ハラガ…」の謎のメッセージを残したまま雪江は死んだ。大観衆とカメラの放列の見守るなかで、なぜどうやって雪江は殺されたのか?教え子の死の謎に敢然と立ちあがった朝見大介だったが…。書下し本格推理シリーズ第3弾。
ルポライターの実相寺貴之は、国労本部組織部長・木田島の書いた、元総理・角田力衛の上越新幹線私物化を告発する文章のリライトを手がけた。記事が週刊誌に発表されて1カ月後、木田島の娘・はるみが新潟で乗用車ごと転落死する。当の木田島は、娘は殺されたとの言葉を残し失踪。実相寺は、木田島の部下でありはるみの婚約者でもあった岩木とともに、木田島捜索と事件の真相究明に乗り出す。長篇サスペンス。
「よう、外池の旦那、君の屍体が赤坂の十番ホテルで発見されたよ」-警視庁の部長刑事戸田老人から外池洋祐に奇妙な電話がかかってきた。自分の名前をかたってホテルで消された男の謎を追う洋祐。細菌兵器の機密をさぐる秘密工作員。彼らをめぐる女たち。そして事件の陰には、いつも青いサングラスの男がいた…。洋祐は、彼の名前をかたった男に化け、謎の連続殺人とスパイ網の秘密を暴く。長篇推理。
独身OLの阿部純子は、3日続きの悪夢に悩まされていた。琴の音に始まり、法螺貝の響き、人馬ぶつかる合戦の轟き、そして首なしの鎧武者…。見かねた友人の勧めで手かざしを受けた結果、純子には戦国武将の怨霊が憑いているという。真相を突き止めようと探偵の尾高一幸らとともに、怨霊の武将の末裔にあたる九鬼家を訪れた純子の前で、次々と惨劇が始まった。長篇ホラー・ミステリー。