1990年3月発売
伊豆の豪族北条時政の娘に生まれ、流人源頼朝に遅い恋をした政子。やがて夫は平家への反旗をあげる。源平の合線、鎌倉幕府開設ー御台所と呼ばれるようになっても、政子は己の愛憎の深さに思い悩むひとりの女だった。歴史の激流にもまれつつ乱世を生きぬいた女の人生の哀歓を描いた、永井文学の代表的歴史長篇。
根室本線を走る二両編成のミニ急行「ノサップ」が、広大な根釧原野のまんなかで列車強盗に襲われた。シーズンオフで乗客は少く、犯人の奪った金額は拍子ぬけするほどわずかなものだったー。今どきめずらしい列車強盗事件の裏にかくされた意外な犯意を、十津川警部が解明する、大好評のトラベル・ミステリー。
パリに憧れる23歳のツアー・コンダクター湯川真美子の今度の仕事は香港パックツアー。いまいちノリのこない真美子が香港最初の夜に遭遇したのは、なんと殺人事件。伝説の秘宝・「キング&クイーン」をめぐる香港マフィアの抗争に巻きこまれてしまったのだ。スリルとユーモアと過激なアクション、そしておしゃれな恋もハイピッチで展開する。傑作ロマンチック・サスペンス。
洋裁学校の学生・恵子は、偶然モデルのゆい子と知り合う。華やかで容赦なく人を魅きつける彼女に誘われるままに恵子もいつしかモデルの道を歩き始めた…。その世界は強い個性をみせながらどこか虚無のかげれをみせる男や女たちがいた。女がいちばん綺麗で、可愛いらしかった1960年代。さまざまな伝説と神話が生まれた高度成長のさなか、キラ星のごとく輝き、70年代の夜明けとともに燃えつきていった青春の状烈な愛と死の長編小説。
暴力団浜内組の幹部を追跡中、同僚を誤射した志田司郎は、刑事を辞し、妻子とも別れ、たったひとりで、波止場に単喰う巨大な暴力組織に立ち向ってゆく。近代経営の仮面の影に巣喰う悪との凄まじい闘い。日常を捨て“追いつめ”てゆく異常な執念を描く、日本にハードボイルド小説を樹立した画期的長編小説。直木賞受賞作品。
国家権力の介入によって、岬一郎を応援していた町内の人々の心が離れはじめた。確固とした信念のもと、日本政府の呼び出しに応じない岬一郎。最後の理解者で元雑誌編集者の野口志郎とともに、彼は孤独に追いつめられていく…。「日本SF大賞」受賞の著者渾身の力作大長編。
舞台は新宿裏通りのバー街。「ルヰ」のバーテンダー仙田を主人公に、彼の前を通り過ぎて行く、いろいろな男と女の哀歓漂う人間模様を描き出す連作。直木賞受賞の表題作をはじめ、「おさせ伝説」「ふたり」「新宿の名人」など八篇を収録。
大学卒業間際、花咲美也は恋人の恋川圭介に絶交宣言をつきつけられる。唇は許しても、体は許してくれない美也に圭介は大不満なのだ。傷心の旅に出た美也だが、彼女の身辺で殺人事件が発生。その原因は、男と家を出ていった母親にあるらしいとわかって…。書き下ろし青春ロマン・ミステリー。
百将乱れ起つなか、ついに怪傑曹操が、劉備をはじめとする群を制し、天下一統を果たそうとする。だが、江南の雄孫権が立ちはばみ、流亡の将軍劉備もまた、名将孔明を得て、曹操反撃に決起する。戦機は熟し、世紀の大戦へとひろがってゆく。智謀・奇謀、密計・奸計をもって、時代の制覇をめざす英雄群を描いた、壮大無比の物語。
なぜ120年も前に死んだ人物を恐れるのか?矢的遥は、からくり人形のコレクターとして著名な加島大治が、「べんきちはゆるさないぞ」と記した紙を見て震えおののく姿に愕然とした。べんきちとは、江戸末期の天才からくり師大野弁吉のことだが、一代で巨万の富を築いた加島とどのような関わりがあるのか?そして加島の娘が不審な死を遂げ、「ぐうじんかんをわすれるな」という奇妙な脅迫文が発見された。“弁吉と偶人館”という手掛かりをもとに、矢的は意外な歴史の真相へと踏み込んでいった…。