1990年6月発売
端午の節句は武者人形に鯉のぼり。さあ、いよいよお江戸の夏。花火に映える両国の川開きに山王祭り、7月7日は七夕でそろそろ幽霊の噂が、八百八町の夜の闇を駆けめぐる頃…、懐かしい江戸の夏の風物詩にからむ怪事件・難事件に立向う半七・平次・佐七の三大捕物名人に加え若さま侍・顎十郎・ハイカラ右京・砂絵のセンセーも登場して、ますます好調。異色の捕物ミステリー・シリーズ第2弾。
同和証券・営業本部証券部長の道原浩は、偶然知り合った小牧真由美との情事を楽しんだ。だが、1年後、日本大衆党の“爆弾男”と異名をとる芝草謙三に呼び出された道原は、芝草の秘書である真由美が、“道原を強姦罪で告訴する”と脅された。困惑する道原に、告訴取り下げの条件として芝草でつきつけたのは、“裏情報の提供”であった。やむなく条件を飲んだ道原は、インサイダー取引に…。その裏側に仕組まれた二重の罠!?芝草の動きに気づいたジャーナリストの依田健吾が真相に迫るが…真由美が変死体となった発見された。インサイダー取引に絡んで永田町で繰り広げられる、“悪の論理”を鋭く抉った、長編推理小説の秀作。
小出達夫・39歳・塗装工として、川崎の工務店に勤めている。深夜、ホステスをしている愛人宅に向う途中、2人組の男と諍いになり、元プロボクサーの彼は2人をあっけなく倒してしまう。そのとき手に入れた挙銃が彼の人生を変えてしまった。殺戳と陵辱の限り、性と暴力の魔性にとり憑かれた男を描く。勝目文学の極み。
話題の洋画大作のロードショー公開を控えた映画館に、脅迫電話がかかった。公開を中止しないと爆弾を仕掛けるという。一方、脅迫とは別に配給会社の社員が殺された。そして、また1人。映画館側は警察と連携し厳戒体制をしいたが、公開の日時は刻々と迫る。映画界出身の著者が業界の裏事情を抉る、戦慄のサスペンス。
スラム街の医師・馬島〓@43B9は、貧困球済に産児制限の必要を痛感した。その先進国欧米に留学、日本で初めて産制思想の普及に乗り出すが、産めよふやせよの時代、風当たりが強い。彼の仕事は社会の改革である。そのため産制運動と共に幾多の社会事業や日ソ、日中交渉の影武者も演じた。長編ドキュメント・ノベル。
あたし、レイコ。人妻看護婦なんです。20年前、大学1年生の夏、軽井沢の別荘の浴室で上級生の和彦に処女を棒げる瞬間、暴漢に襲われ、彼と別離の運命に。娘はもう18歳。昔のあたしに似て、和彦オジさんにゾッコン。でも暴漢は許せない。あの男とあたしが結合するとアザが重なるの。これが鍵。持参のメスが血に飢えてるわ。
ケンタッキー州レキシントン。サラブレッド牧場に足を踏み入れたレアンナは、故郷に戻ったような開放感を味わっていた。と、柵の向こうに車が止まり男が降りてきた。あのひとは…あのひとは私が探し求めていたひと。そう、5年前のパーティの一夜、熱い抱擁とくちづけで私を酔わせたひと。男の名はトラヴィス・マーティン。この牧場の主だという。なつかしさに微笑みかけるレアンナにマーティンの瞳は一瞬輝いたが次の瞬間、マーティンの態度は冷たく-。
ケイトはニックとの共著でミステリーを書くことになった。そんな折、ケイトは亡くなった叔父からヴィクトリア調の屋敷を相続することになった。しかし相続のためには、シカゴ郊外のその屋敷に6カ月間住まなければならなかった。仕事を失いたくないケイトはニックと一緒に住むことを企てる。だが仕事のためとはいえ、知り合って間もない男と暮らすのは危険すぎる。しかも、ニックはあまりにセクシーすぎるのだった。
先代の伯爵親子の事故死という悲劇は息子の従弟にあたるロックブルック伯に突然の爵位継承をもたらした。由緒ある称号と莫大な財産を相続したロックブルック伯だったが心のうちは重い憂鬱に閉ざされていた。軍人時代一夜を伴にした公爵令嬢レディー・ルイーズがかれが伯爵になり富と名声を手中にしたと知るや公爵である父を通して結婚をほのめかすようになったのだ。執拗なレディー・ルイーズの求婚から逃れるため遠乗りに出たロックブルック伯は、落馬し、故クランフォード少佐の館にかつぎこまれた。少佐の妹プリラの手厚い看護に触れロックブルック伯はある決意をした。
鉢形城攻防を描く歴史小説。天正18年(1590)、北条氏邦(氏康三男)を城主に戴き、豊臣秀吉の大軍を迎え撃つ関東の名族藤田一族は、鉢形城(現・埼玉県寄居町)に拠って勇戦敢闘1ケ月、ついに落城する。その知られざる戦記、藤田一族の秘史を描く大型新人の力感溢れる長編歴史小説。
命を救ってくれた家族の離散により、レミは再び愛犬カピと放浪の身となる。そして懐しい養母に面会したレミは、実母が彼をさがしていることを知り、イギリスに渡るが、腹黒い叔父のたくらみで危うく投獄されそうになる。フランスに逃げ戻った彼は、愛する少女リーズとミリガン夫人を求めてさまよう。ようやく彼女たちに出会えた彼の前に明らかにされた真実とは…。
こんな小説はまだ読んだことがない。一風かわった、奇妙な、どっか変な、なんだかおかしい、それでいて忘れられない、シックでラディカルでスラップスティックで、どうにもエキセントリックな我々の時代の文学。総勢16人、選びぬかれた21作。世界が消滅する前に新発売。
ベルリンにあるアメリカ大使館にソ連の技術者と称する男が駆け込んだ。彼は政治亡命を希望し、その代わりにある重要情報を提供したいと申し出る。その情報とは、事故に見せかけてアメリカが構築中のSDIシステムを破減する計画に関するものだというのだ。相手をしたCIA要員のエイミーが引き留めるのもきかず、男はまた来るといって大使館を出たが、そのまま正面で車にひかれて死亡した。ハイテク軍事情報戦略ノヴェルの傑作。