1990年7月1日発売
流れる水、波立つ水、あるいは光り、たぎる水。さまざまな水の相を背景に、家族、男と女、また母と娘たちがたどる危うい生の実相を、迫真の筆致で刻みだした連作集。水がわたしに落ちてくる、早く眠らなければ…。
カクテルへのこだわりが殺人を招き、1杯のブランデーが秘密めいた物語を思い出させる。バーガンディやボルドーの豪華なワインの利き酒の裏で繰りひろげられる国際的陰謀に、5杯目のスコッチが明かす殺人のトリック…。エリン、コリア、ミルン、セイヤーズ、シスク、ブロックマン、ホールディングら13人の短篇の名手が描く、熟成した美酒をめぐる様々な犯罪の芳香。
「無縁坂で起きた人妻の自殺を洗い直せ」という密告電話がかかってきた。夫、青山の取材を進める新聞記者の白井浩介は、数年前にも彼の前妻が事故死し、多額の保険金を手にしていることを知る。その矢先、彼の愛人が惨殺死体で発見され、妻殺しと共に青山への容疑を深めた。だが、青山が完全な密室状態で殺害され、事件は振り出しへと…。地道な密室殺人の謎解きから、やがて意外な人物が浮かびあがってくる。長篇本格推理。
アメリカで、ボーイング747撃墜、ソ連大使館参事官補殺害、と重大テロが続発した。CIA長官はこの機に組織内の厄介者ティーム・ストライカーを一掃すべく、鬼道組を投入する。敵の本拠を襲撃し、連城たちは、ついに魔王の兵士ノーマン・J・ストライカーとの決着の時を迎えるが。
『週刊A』の編集長が就任13日目に車で事故死。次の編集長も13日目でサーカスを見学中、ライオンに食われた。社内にパニックが起きる。その直後、怪文書が届いた。犯人が動き出したのだ。と、三番目の後任も衝撃から自殺を。策に窮した社長が自ら編集長を買って出た。運命の13日が近づいてくる。推理界待望の新鮮パワーが爆発。
エリート銀行マン・相原のもとに突然かかった脅迫電話。“醜聞を公表されたくなければ、山に登れー”。奇妙な指示に従うと、山には女性の全裸死体が!電話の主は?目的は?やがて第二、第三の事件が相原にふりかかる。雪景美しい黒部山系を舞台に、山岳ミステリーの第一人者が仕掛けた巧妙な謎とサスペンス。
可愛い珍獣モグワイのギズモから小悪魔グレムリンが増殖し、田舎町が大パニックに陥った事件から6年後。ニューヨークのクランプ・センターに勤務するビリーとケイトは、その超ハイテクビルでギズモと再会。だが、またもやグレムリンが増殖してしまった。ビル内の遺伝子研究所で新たなる変化を遂げた新種グレムリン軍団の脅威。-スピルバーグの大ヒット作『グレムリン』から6年、待望の続編の完全小説化、ここに実現。
貴族的な端正な顔だち、とびきり美しいサファイア色の瞳。ナターシャは、目の前の客の顔を見て驚いた。なんと、少し前、ブラウスの返品に行き、その時の対応が不満でブラウスを投げつけてきた男ではないか。彼はナターシャを捜していたという。いったいなぜ?何の用があるというのだろう。しかし、勤務中では思うように訊ねることができない。結局、ナターシャは強引に閉店後に会う約束をさせられてしまうのだった。
交通事故で、足が不自由になったレスリーにとって心の支えは同じ出版社に勤めるジョエルの存在だった。絶えずレスリーを力づけてくれるジョエルは彼女にとって初恋の人であり、今もあこがれている人だ。しかし、この不自由な体では彼の足手まといになってしまう。そんな彼女に、医者は再手術を勧める。むずかしい手術に躊躇するレスリーをジョエルはやさしく励ますのだが…。
両親をトルコ大地震で亡くしたアスターラは父の親友であり、大富豪でもあるロードリック卿のもとに身を寄せた。この上なく美しく成人したある日、アスターラはヨーハン・ファン・アーヘンの描いた『パリスの審判』という絵を買った。その絵を見て、ロードリック卿は名案を思いつく。アスターラに3人の甥から夫を選ばせ彼の莫大な財産を譲ろうというのだ。しかし、ヘラやアテナがパリスに誘いかけたように、2人の甥は心をそそるようなえさを持ち出し彼女をつろうとするのだが、3番目の甥は黄金のリンゴをほしがろうともしないのだ…。
織田信長が天下を掌握した天正期、伊賀国の忍者の頭領として君臨していたのは藤林長門と百地丹波の2人であった。しかし、この長門と丹波が実は同一という秘密を探り出した人物があった。その男こそ出羽月山の修験者霧法師の倅、旅の忍者霧隠才蔵であった。その才蔵の背後に、百地忍党中で5本の指に数えられる手錬者、伊賀下忍石川文吾(後の五右衛門)の恐るべき殺刀が迫っていた。呼吸をのむ驚天動地の忍者合戦!そして、その隠し砦と、それを取り巻く迷路の秘密を才蔵に奪われた伊賀忍者の報復は、才蔵の新妻淡雪を奪い去ることであった。淡雪のうえに迫る怪しの忍法“夢殿しばり”、-猿飛佐助も登場。大坂城落城に至るまでくりひろげられる壮烈なる戦国忍法絵巻。
京の柳馬場の町医者猶崎将作宅を、ふいっと訪ねてきた風采のあやしげな若者があった。それは江戸での“黒船騒ぎ”を目撃して帰郷の途上にあった土佐の郷士坂本竜馬だった。この幕末の風雲児と、その妻となる将作の長女お竜との奇しき初対面のときであった。梅田雲浜を初めとする京の勤王家が一斉検挙され、将作とその仲間も囚われの身となり、しかも将作は遺体となっての帰宅だった。非運に陥った一家を支えてお竜は奉公に出た。そんなお竜に目をかける船宿『寺田屋』の女将お登勢との間に、いつしか竜馬をはさんでの女の葛藤が…。薩長を結んだ竜馬とお竜を媒酎したのは西郷隆盛だった。-“青春坂本竜馬”姉妹編。
すげえやつが帰ってきた。6年前に神奈川県警からパリの国際事機構に派遣され、そのままNY市警本部特別検察官に任命されていた伴大六警視が、日本に帰ってきたのだ。東京には警察庁の竜崎三四郎・壇竜四郎が、そして横浜には伴大六がにらみをきかすのだ。その伴大六が、帰国早々に県警本部の刑事部屋で外国人殺し屋集団に襲われた。何者?アメリカの大統領諮問委員会(PSB)のリタ・グレイからの通報によれば、その諸計画のことごとくをつぶされたマフィアの大ボスが、面子にかけて伴の生命をねらい、つぎつぎと屈強な殺し屋を日本に派遣しているというのだ。PSB日本支部も危うい緊急事態へ…。-熱血三四郎、快男児竜四郎、痛快大六の豪快極まる三者そろい踏みの快作戦だ。
恋人の死の真相を教える、という謎の男に呼び出され、シドは新縮歌舞伎町のバーにやって来た。だが店内は血の海と化し、直後、何者かにシドは狙撃された。恋人の死に何か巨大な陰謀が隠されていることは、もはや確実だった。時は2099年。高度に発達したコンピュータ・ネットワークを管理する「協会」は、ネットワーク内で発生した事故調査のため、サイバー=脳とコンピュータを繋いでネットワークに進入できる人間を雇っていた。そして、シドの恋人もその一人だったのである。やがてシドの闘いが開始され、露呈する驚くべき事実と、陰で蠢く黒幕の正体…。気鋭が書き下ろす渾身のクライシス・ノベル。