1991年10月発売
豹の皮をまとい、斬馬刀を背負った大男、比叡幻視郎は、妖霊星にみちびかれ、草創期の徳川家が数日にして崩壊してしまう驚倒の事実を記した文書“信長秘文”を探す手がかりを得る。幻視郎を狙い、暗黒の淵から妖術を使う魔群が頭をもたげ始めていた…。豪奢なエロスと鮮烈のアクションで描く伝奇大作。
十津川警部は、高校時代の親友の宮下が復讐を企んでいると聞かされた。相手は、八年前、大型バンの事故で宮下が妻を亡くした際、車に同乗していた五人の同窓生。宮下を信じる十津川だが、その五人を乗せたC11型蒸気機関車の一両が、橋から転落したという情報が。犯人は本当に宮下か?十津川警部の推理が冴える。
六本木のシティホテル。P商事の課長・島崎俊彦は部下の西尾典子と歓喜の一夜をともにしていた。元上司の殺人事件への関わりを疑われたうえに、社内の問題児・専務の御曹子を部下にさせられた。「ああ、私、課長のものなのね」ストレスゆえに燃える島崎。ところが御曹子への不審電話。事件は意外な方向へ-。
ワンマン会長に懸命に抵抗する頭取、銀行離れをしようとする大企業に、必死に食いつく法人営業部ー。厳しい環境下で喘ぐ巨大銀行の内幕を描く。不良債権の回収に振りまわされる支店長の悩み、融資をめぐるライバルとの苛烈な競争など、生き残りに賭ける都市銀行のリアルな実態を浮きぼりにした経済小説。
死んでしまった老人の依頼でポルトガルまで人探しに出かけたり、ヤクザの勢力争いに巻き込まれたり、おれの仕事は幅が広い。“ありふれた愛に関する調査”のほうに、孤独な探偵の命をおびやかす危険が待っていることが多いのは、なぜだろう。硬質の文体に、あふれる日本的心情を包んで胸に迫る第一作品集。
雪を求めてゲレンデからゲレンデへと1年中放浪の旅を続けるタヌ公こと田沼義晴と白人のジムは、伊能御子と由香利という女子大生と知り合う。由香利はジムに熱を上げ、放浪の旅に同行、御子は由香利の親から頼まれて彼女を東京へ連れ戻すが、自分が2人と旅に出てしまう。自由を求めて生きる青春群像。
キューバの美しい海をバックに、自らに「沈黙」という抑制を強いた若きストリッパーが初めて口を開いた、その告白とは…。軽やかに、そして切なく踊るキョウコに、ルンバの強烈なリズムが絡みつく。その取材を通じ、ルンバのピュアなリズムに囚われた村上龍による書き下ろし小説。パーカッショニスト・YAS-KAZによるオリジナルCD。そして現地音源をCDシングルに収めたCD BOOKSスーパー・ヴァージョン。
『超魔』と『〓殺師』-両者は人知れぬ闇の中で、互いの生死を賭けて今も“戦い”を続けている。暁千剣波の家に超魔が現れた。暁の家には結界が張ってあるので、傀魔たちは中に飛び込もうとしても、火花とともに一瞬に塵と化してしまう。だが、傀魔たちは一向に怯む様子はない。そこへ一人の少女、沙輝が現れた。何者かは不明だが、超魔に敵対する者らしく、彼女は気光弾を放った。しかし、それは傀魔を吹き飛ばすと同時に結界をも破ってしまい、傀魔たちが中へ突入してきた…。
六本木のディスコで知り合ったおじいちゃん溝田清志は、典子と千尋の勤める白坂物産の筆頭株主、実業界の大物だった。その溝田氏が夫人ともどもふたりにある依頼をしてきた。『赤毛のアン』の舞台となったプリンス・エドワード島に行き、ある少女を捜してほしいというのだ。少女の名前はメグ・アルレー。アンのファンである夫婦が昨年島を訪れたとき、優しく世話をしてもらったという。消息の途絶えた娘を見つけようと島をめぐるふたりの前に「メグ・アルレー」は現れたのだがー。
ここは、ファルキオン大陸。はるか昔よりこの地では、魔皇デルゴーンとの戦いが繰り返されている。辺境の半島バグアーグで、しばらく鳴りを潜めていたデルゴーンだったが、今また、自ら産み育てた“混沌の獣たち”を使い、新たな攻撃を仕掛けてきた。そしてここに、シェナンド王国の青年コーヴェルが、特殊能力を持つ地下牢の重罪人たちと一団を組み、正規軍とは別に、バグアーグ目指し秘密裏に出発した。その前に次々と現れる魔皇軍の手強い怪物たち。果たして彼らの運命は…。
マリン・リゾート計画推進中に、作業にあたっていた潜水ティームが突然消息を絶った。「海の中で…戦車を見たんだ…」という言葉と1本のマイクロフィルムを残して。同じ頃、三浦半島とスウェーデンに漂着した謎のブイは、ソ連の新しい核攻撃システムであったー。国際的な危機を前に、KGB、CIA、そしてDIAをも巻き込んだ死闘が始まる。超迫力の近未来長編。
ソ連の新たなる核攻撃システムの全貌を収めたマイクロフィルムの行方をめぐって暗躍するKGB、CIA。謎のブイ、海底に残るキャタピラ跡、そして北米大陸沿岸に眠る沈没船に隠された物体“ポセイドン”の正体は?一方、「守るべきは…祖国」の思いを胸に、野望渦巻く巨大な謀略に立ち向かう名もなき男たち。第3次世界大戦勃発の危機が迫る。
ブナの原生林奥深く、物語の発生する気配がある。ひとつの謎の種子が虚構の大地に舞い降りる。近代小説のあらゆる夢をはらんだその種子は発芽し、やがて錯綜し繁茂する浪漫の森林となる。水底に沈む谷間の村。消えたコミューン。伝説のキリシタン集落。失踪した青春の恋人。茸毒の幻覚作用。予期せぬ殺人事件。謎を追う者は、物語の放つ霊気を膚に感じ、遠い音楽を耳に聴きながら、いつしか深い森に迷い込む。リアルな認識と知性の証である葦の森。遥かな憧憬の象徴である百合の森。その中心の場所、最も緑の闇の濃い処、夢の密かに生まれる場所に彼が到達するとき、永遠に女性的なるものが光のなかに姿を顕にし、すべての虚構の秘密が解き明かされるだろう。