1991年12月1日発売
ピザ・レストランを経営するニコラは、婚約者を亡くして以来素直に男性に心を開くことができない。そんなニコラに、祖母は言う。誰でもいいからある人を理想のタイプと思い込むこと。そうすれば、その人はあなたに夢中になり、あなたも彼を好きになるだろう、と。本当にそんなことがあるのだろうか。ニコラは、早速、店に来た客に試してみる…。
燃えるような赤毛にグリーンの瞳の美しいイヴァンジェリン。彼女はほとんど世間から隔絶された状態で養母に育てられた。やがて養母が死ぬと、予想とは裏腹に甥の外交官クリストファがすべての財産を相続する。イヴァンジェリンに魅せられた彼は結婚を申し込んだ。だが、彼女はそのプロポーズを退け、わずか1000ポンドとダイヤの指輪ひとつだけを持って「女冒険家」としてロンドンに向かった-。いつか愛する人に出会うために。
時は1803年、ヨーロッパ支配を狙うナポレオンの上陸を恐れるイギリス-。アルトン侯爵は、政府中枢部に潜むスパイを発見せよとの命を受ける。公私ともに暗澹たる悩みを抱えながら森をひた歩いているとき、かれは妖精のような不思議な雰囲気を漂わせた、美しい娘に出会う。しかし娘は素性も明かさず、その短い出会いさえも夢であったかのように、忽然と姿を消してしまう。その裏には思いもよらない秘密が隠されていた。
1750年。ベニスへ向かう航海の途中、サンタ・ルチア号は嵐にのまれて岩場に激突、海の藻屑と消えた。たった2人の生存者-ハーヴェイ卿と、彼に助け出された美しい娘パオリナを残して…。父を亡くし、お金も行く当てもないパオリナに、自称冒険家のハーヴェイ卿は大胆な企てを告げる。パオリナを自分の妹に仕立て上げ、ベニスの社交界で玉の輿に乗せようというのだ。偽りの兄と妹の華やかで危険な人生の賭けが始まる。
可憐な美女おりょうと、その出生の秘密を秘めるお守袋をねらって暗躍する忍者の群れ。その男の名は、片目の重兵衛という。忍者仲間でその名を知らぬ者ないこの男が、平家の落ち武者村といわれる草深い山中の小屋に隠棲する老忍の三左のもとへと訪ねてきた。その真意はいったい何であろうか…。老忍三左の手元で養われているおりょうは相良遠江守の側室美鈴の産んだ娘であったが、江戸の大名屋敷を荒らし回っていた夜あらし組の首領三左は、かつて相良屋敷に忍び込み、側室美鈴を犯していた。その秘密を知るものは…。
コロンビアの麻薬王ラモスと、東南アジア黄金の三角地帯の支配者クン・タンの両者が、メキシコの密売王ベルツの仲介で手を握り、世界制覇を企画した野望が、亮崎軍団によって長崎沖の一大銃撃戦の末に粉砕されて1年足らず、またしても不穏な動きが最大の経済大国日本の市場独占をねらって、血で血を洗う抗争が展開されることとなった。謎の華僑美人、香港の怪紳士、そして両派の精鋭殺し屋軍団が続々と日本へ上陸してくる。彼らを追って、PSB(大統領諮問委)の金髪美女リタ・グレイのひそかな来日、おりしも5年ぶりにアメリカ出向から岩弾健警部が帰国することになった。-熱血警視三四郎、快男児竜四郎ほか、おなじみのメンバー総登場の大暴れ、第21弾。
兄信長とお市御寮人は、14歳違いの兄妹である。共に信頼し合う最愛の2人だったが、お市が乞われて嫁いだ浅井長政と兄が対立し袂を分かった…。お市に恋焦がれる柴田勝家、妻帯の身でお市を狙う好色な豊臣秀吉。乱世を生きる男たちの権力と野望を縦糸に、美貌のお市と信長の、波瀾万丈の生涯を華麗に描く舟橋歴史ロマンの最高傑作。
19歳の冴子の運命は、上京直後、親切な男に声をかけられたことから大きく変わった。性のテクニックを仕込まれる奇妙な同棲生活。やがて、男に言われるまま美容整形を受け、見違えるほどの美女に変身した冴子は、銀座の一流クラブへ送り込まれた…。意外な殺人事件に発展する「腐爛死体の場合は」をはじめ、事件の裏に蠢く男と女の愛欲を抉る傑作推理。
日本の最南端、琉球諸島の小島に美しい女子大生が訪れた直後ー。波涛悠は、釣りに出掛けた父とリゾート開発業者が、巨大な鮫に食われる悲劇を目撃し、愕然とした。なぜ2人が海中に引きずり込まれ、鮫の餌食になったのか?一滴の血の臭いでもない限り、鮫はけっして人を襲わない。やがて悠の心に一つの疑惑が芽生えた…。長編冒険小説。
ニューヨークの空港に着いた47歳の福岡竜男は、入国審査官を前に青ざめていた。カタコトの英語しか話せない彼にとって、海外赴任は拷問以外の何ものでもなかった。が、社の命令である。最低3年間は頑張ろう…。これが悲劇の始まりだった。はたして英語ノイローゼに陥り、半年で帰国した彼を待っていたのは、アメリカ人が絡んだ前代未聞の連続殺人だった…。長編本格推理小説。
都立高校2年、惣菜天ぷら屋の息子、北村章。野球部投手ではあるが、年上の証券会社OLを愛人に持ち、汗と涙の球児像とはほど遠い毎日。「青春とはセックスだ」と叫ぶノイローゼ教師、不倫の恋に懊悩する女教師など、彼を取り巻くあまりにも人間的過ぎる男、女。愛人の妊娠告白、彼を慕う女子下級生の自殺未遂、蒸発した父との再会。そして男対男の対決…。激しく流れる時の果てに彼が見たものは…。誰にでもあった、けっして美しくはなかった青春の日々を描く著者会心の一作。
郁子は、雅人からのプロポーズを受け、幸福に酔っていた。ダイヤモンドの輝き。シャンペンを抜く音。二人だけの記念すべき甘い夜である。だが、それは雅人の前に現われた麻紀の存在によって崩壊した。彼女はすべての女性が密かに渇望する奔放な愛と、純粋な愛を同時にあわせ持った堕天使のごとき女だったのである…。
東堂太郎の回想する女性との濃密な交情、日常的に交わされる珍妙な「金玉問答」や「普通名刺論議」…。内務班の奇怪な生活の時は流れる。そして、しのび寄る忌わしい“事件”の予兆。「私は“あるかすかな予感のような物”を見極めるためにも戦争に出かけようとしているのかも知れない…」。
イギリス風ペーソスとユーモアでくりひろげられるクリスマスのお話二篇。原書の持つ雰囲気を生かした落語調の翻訳で、また違った味が楽しめる「クリスマス・キャロル」。クリスマス本の二冊目として熱狂的に迎えられた「鐘の音」。風刺雑誌『パンチ』の画家として有名なジョン・リーチらの幻想性に満ちた挿絵と現実が奇妙に溶けこんだ不思議なファンタジー。
イヴに間近いある夜。僕のもとに現れた少年は、サンタクロースの身分証明書を持っていた。僕の彼女への、クリスマス・プレゼント選びの相談にのるためにやって来たのだと言うが…。爽やかさNo.1の作家堀内貴和の、クリスマスと都市生活をめぐるショート・ストーリーズ。