1991年1月発売
1980年11月、ひとりの老諜報部員がベルリンから消えた。彼の名はハリー・ローズーかつて数多くの諜報網を指揮し、ベルリンの帝王と恐れられた男。彼を捜すため2人の男が派遣されるが、彼らの調査は、しだいに欺瞞と虚偽に満ちた冷戦の本質を暴いてゆく…。第2次大戦後は連合軍に共同管理され、のちに壁で分断された東西対立の象徴ベルリンを舞台に、冷戦が産み出され、激化していった過程を諜報戦争の最前線から描く。
上院に打ってでようというアリグザンダー下院議員の警護を引き受けたスペンサーは、彼から驚くべき事実を打ち明けられた。何者かが妻のあられもない姿が映っているビデオを送りつけてきたというのだ。政敵の無言の脅迫か?打ちひしがれる議員を救うべくスペンサーは調査を開始した。スーザン不在のなか、ホークの友情、たくましく成長したポールに支えられ、スペンサーが政界を覆う黒い霧に挑む、好調シリーズ第10弾。
朝もはよから、白い毛皮の女がわたしのアームストロングに乗りこんできた。失敬、アームストロングとは愛車のロンドン・タクシーの名で、わたしはダウンタウンのパブでトランペットを吹いてきたところだった。その女はパブに客として来ていたのをわたしはちゃんとチェックしていた。あとは当然のなりゆきが待っていたわけだが…。ロンドンの軽口男エンジェルがお調子者ゆえにトラブルに巻きこまれる超ユーモラスな第一弾。
愛する父を殺した憎い仇がアメリカにやってくる。しかも相手は悪虐無道で知られる中米某国の独裁者。もちろんミス・メルヴィルが許すはずがない。彼女はさっそく復讐の計画を練りはじめた。しかし自宅の天井は水漏れするわ、義弟の妻は怪しげな新興宗教に凝るわで、私生活はトラブル続き…。お嬢さま育ちの元殺し屋が再び銃を手に悪を撃つ、シリーズ最新作。
2220年、人類は太陽系の各惑星の衛星軌道上に巨大な人工衛星をいくつも築いていた。それぞれが衛星都市と呼ばれ、独立した国家として繁栄している。しかし人口はますます増加してゆき、つぎつぎと作られる衛星都市で、太陽系は過密の一途をたどっていた。そこで衛星都市ローターは、新たな故郷を求めて太陽系を離脱した。それから十数年の歳月が流れた…ローターに住む天文学者の娘、十五歳の少女マルレイネはふとしたことから、たいへんな事実を知った。ローターが新たなる故郷とした恒星ネメシスが、地球をめざして突き進んでいるというのだ。このままでいけば、たとえ衝突しなくても、ネメシス通過の影響で地球の気象は大きく変化する。人類発祥の星である地球が、死の世界になることはまちがいない。だが、マルレイネをさらに驚くべき事件が待ちうけていた…。巨匠アイザック・アシモフが、新たなる構想のもとに、宇宙へと進出しはじめた人類の姿をいきいきと描きだす傑作長篇。
隆盛を極める大都・長安城内から天にむけて立ちのぼる霧のような妖気を感じる一人の風来坊があった。埃まみれの胡服を身につけ、伝法な態度。炯と底光りする眼の精悍な漢。しかし、どこか貴公子の微行姿に見えなくもない。妓楼の中でも誇る紅花楼に登ると、漢は捜していた人物と対面を果した。相手は唐朝の重臣、太宗李世民の片腕として世にかくれもない諌議大夫・魏徴であった。この奇妙な取り合わせ-漢は一体何者か?そして魏徴の口から語られた恐るべき呪詛の陰謀とは?瞠目の彗星が放つ書下し傑作。
朝生萌が通う向陽学園高校でミス新入生コンテストが開催されている最中、女王有力候補の仁科瞭子が血まみれの死体で発見された。そのとき萌は瞭子の体内に乗り移る超常能力をもつことを発見し、犯人は全女性徒撞れの君で生徒会長の泉麻沙樹であることをつきとめた。彼は憑依獣パゼスをあやつるイゴーラ、その双子の弟で、誘惑者の暗号名をもつ女たらしの一員だった。彼らは〈マドンナ作戦〉を計画し都内の女高生を狩り殺害してきたが、萌が目的のマドンナであることをつきとめたのだ。焦土と化した新宿・歌舞伎町が戦場となって、最後の戦争が火ぶたを切った。
『日記』に書かれなかったアンネの真実「ドアをしめて、ドアをしめて」それがアンネの最後の言葉だった-。『アンネの日記』が最後に書かれた1944年8月1日から、ベルゲン-ベルゼン収容所での死の瞬間までの七ヵ月間を、6人の「アンネ」が証言。
ガンに冒された妻を抱えるエリート・サラリーマン今泉裕司は、社長室の上崎恒子との不倫を楽しんでいた。恒子とは山歩きの趣味もあい、次第に深みにはまっていった。やがて妻が病死し、常務から再婚話がもち上ると、邪魔になった恒子を北アルプス・常念岳に誘い出し、濃霧の中、谷底に突き落したのだ。そして、今泉の結婚式当日、殺したはずの恒子から、祝電が届いた…。会心の長篇山岳ミステリー。
元シナリオライターの比留間悟は現在翻訳を生業としている。妻とは別れたが、17歳になる娘の由利とは月一回会っている。その由利にかつての仕事仲間だった映画監督の岡山から、由利の映画出演を申し込まれたが、娘と相談の上断った。そんなある日、突然由利が失踪する。同じ頃、岡山も音信不通となった。二人の失踪は無関係ではないと思い、捜索を始めた比留間の前に次々と意外な事実が…。傑作長篇推理。
二十五世紀、人類はかつて“神”として自分たちの上に君臨した者たちと大戦に突入していた。太陽系を植民化しようとする人類、これを阻むために銀河系外から飛来し、水星を要塞とする神々。人類と神々はすでに対等だった。私ハイパー・マグドナルドも地球防衛軍に志願、大戦に加わり、同僚の浄土一成らと共に人体強化処置を施されて、神々の砦・水星を目差した…。スペース・オペラ巨篇。
御家人の勝家は、世に容れられない当主・小吉の放蕩のゆえに貧の極みにあったが、長子・麟太郎は直心影流剣客・島田虎之助の内弟子として剣の道に打ちこみ、激変する世情のなか、やがて蘭学を志していた。他人の厚情にも助けられながら学問に没頭する麟太郎の姿は、いつか幕閣の目にもとまり、蓄所翻訳方に抜擢、そして講武所砲術師範、海軍伝習生師範と昇進していった。歴史長篇。
北国の冷たい夏に離農をよぎなくされ、二人の子供を置いて、妻に逃げられた男。男は焼酎を片手に出刃を磨ぐ…。過酷な自然を背景に、力強い文体で人間の内面を抉る、鮮烈なデビュー作「出刃」ほか、力作3篇を収録。
宮崎発東京行きの寝台特急「富士」の個室から女性の生首が発見された。そして、死体の一部が静岡の安倍川と東京の隅田川に浮かんだ。丸の内署の下川刑事は被害者と同じ車輌に乗っていたと思われる意外な人物を捜し出すが、死亡推定時列車は岡山ー名古屋間をノンストップ走行中で、下車することは不可能であった。消えた犯人の影を追って下川刑事は一人九州へと旅立つが…。時間のトリックを衝く会心の鉄道ミステリー。