1991年5月発売
1949年英国。作家志望の若者オリヴァー・ショーは、除隊して故郷の田舎町へ帰ってきた。戦後社会からとり残され、前の保険会社の勤めには乗り気がしないオリヴァーは、女たちと寝ることに憧れと情熱を傾ける。年上の友人ジェイクに助言をあおぎながら、地元のダンスホールで出会う女たちに夢と快楽を追い求めるうち、別れや失敗を経てオリヴァーもじょじょに成長していく。学校教師の職を見つけ、すさんだ少年たちに手こずりつつ、同僚の女教師と大胆な情事を楽しんだり、人妻とつかのまの恋をしたり…。やがて、ヘミングウェイを目標としていた彼に作家としての転機が訪れる。英国冒険小説の巨匠が、ノスタルジックに、そして、時にポルノグラフィックに描き上げる自伝的青春小説。
日本有数の豪雪地帯、秋山郷。江戸の昔、かの地にわけ入った異才・鈴木牧之が『北越雪譜』『秋山記行』という書物をものした。トラベルライターの草分け・牧之氏は、いってみれば瓜生慎の大先輩にあたるわけだ。「鉄路」編集部から取材依頼がきたのもそんな縁からである。あたり一面雪景色のなか、辿り着いたノヨサ民俗館で、慎たちはいきなり老婆失踪事件にでくわす。隠居部屋の通用口は雪で塞がれており、人目につかずに家を出ることは不可能に見えた。これが秋山郷を襲った恐るべき殺人事件の幕開けだったのだ…。
春酣の宵、二郎は悪夢に悩まされた。夢の中の決闘で不覚をとったのだ。三尖刀の斬撃をかわした者は、五指と充たぬのに。その天敵は何者か?さらに意中の女玉蘭花までが遠ざかってゆく…。そんな不穏な夢を見抜いたのは、黄塵舞う城内・東の市で、二郎がごろつきから救った琵琶占いの妖艶な美女だった。この出会いが、夢魔の底なしの淵へ誘う機縁になろうとは。期待の彗星が放つ待望作。
半太の稼業は珍しい。十手を持っているわけでも、縄張りがあるのでもない。それでも、岡っ引と言うしかない。道中をかけながらでも、難事件で頭をかかえこんでいる親分の、助っ人を買って出るのだ。持ち前の頭の良さと、年季のはいった鉄鎖の腕を使って事件を解決しては、稼ぐのだ。三吉親分の助っ人に当ったのは、浅草の堀田原で殺された若い女の死体に、猿が乗っていた、という事件だった!?傑作捕物帖。
日本冒険作家クラブのメンバーが競作したオリジナル・アンソロジー第5弾!船戸与一「エドワルド・フェブレスの素描」など9篇に加え、北上次郎・志水辰夫・森詠による座談会「これからはハードボイルドの時代だ」を収録。
あたし、女子高出たてのホテルのメイドなんです。都心のホテルって、ほんと刺激強い。ドキドキ、ワクワクで、処女のあたしには恥ずかしいことばかり。新婚さんの泊ったお部屋からは、使用済みのゴム製品が3つも。ハイミスのお部屋からは、くたびれたヘンなものが。ほんとに助平なことばかりで、どうなっちゃうのかしら…。著者独壇場の長篇ユーモア・エロチカの傑作。
魔界の軍団動く。タケルは妖精界を守れるか?妖精たちに魔王退治を頼まれたタケルとリノ。経験値をふやし、美男エルフのアルフィル、謎の男ベリアルも巻き込んで、いよいよ魔王との対決が迫る。異次元世界の大冒険、てんやわんやの第2弾。
石山慎太郎の恋人である竹下好美は、寝床をともにした男に対して、予知が働く奇妙な能力を持った女だった。将来を誓い合った二人は、夜毎に慎太郎のマンションで愛の交歓を行なっていたが、ある時、絶頂を迎えた好美は、慎太郎が会社で主任に昇進することを予見した。出世内定を無心に喜ぶ慎太郎の傍らで、好美はなぜか悲しげに涙を流す。その理由は-。また、二重人格が高じてタイプの違う2人の男と付き合いだした女や、毎夜、夢で見る女と現実に出会って戸惑う男など、フツーと少しズレた癖を持ち、体験をする者たちの姿を軽快に描く短篇集。
江戸川乱歩の未発表小説が発見された。雑誌に連載されたその小説の題名は『白骨鬼』-その内容は次のようなものだった。ある理由で南紀・白浜を訪れた乱歩は、自殺の名所『三段壁』で起きた首吊り事件に遭遇する。首吊り自殺した学生・塚本直は、死の直前まで怪異な奇行を繰り返し、自殺した姿も異様なものであった。その奇行を知り、自殺に疑惑を抱いた乱歩と詩人・萩原朔太郎は、強烈な推理合戦を繰り広げるが。-だが、作者名のないこの連載小説には、恐るべきカラクリがあった。衝撃の大どんでん返し、大胆かつ精緻なトリックで虚と実を融合させた、新鋭が描く新本格推理の白眉。
刑事安芸新八の妻・真澄は、一人息子の守介を連れて郷里の新潟県十日町に向かっていた。途中、豊富な金の産出で賑わう国分村に立ち寄った際、飢えた七人の少年に襲われ、守介は撲殺され、真澄は性交奴隷として飼われるはめに…。行方を追う新八も村人の罠に落ちた。復讐に燃え、鬼と化した夫と妻の凄絶な怨念を描く著者渾身のハード・バイオレンス衝撃作。
「あなたの一生は楽しかった?」玉井葬儀社のタマ子社長は霊柩車に同乗し、棺に向かって話しかけた。遺体は知り合いのフジキ製薬創業者の未亡人。ところが、中から男性の声がして、背広姿の若者が現われたのだ。誰が遺体を摩り替えたのか。おばあさんはどこに消えたのか。莫大な遺産を狙う企みに、ゴッドマザーこと玉井タマ子と逞しい五人の子供が再び正義の挑戦。
紅翔子は、新宿・歌舞伎町の寿司屋の一人娘。そして、花の新人スチュワーデスだ。ミステリー大好きで姐御肌の翔子は、いつも事件に巻き込まれて大騒ぎ!?厳しいチェックを通過して、憧れの国際線の初フライト。そのステイ先のロスで、翔子はなんと、連続スチュワーデス殺しの犯人に狙われた。恋と仕事と冒険のスチュワーデス探偵物語、シリーズ第一弾。
嘉手納広海、25歳、表参道にある広告代理店に勤めるコピーライター。ある日、彼女の企画したキャンペーンがボツだと告げられ、コピーの変更を指示された。クビを覚悟で断わった彼女は、制作局長からある特別な仕事を命じられた…。自分の“スタイル”を持つ大人の女を主人公に、スリリングにハードボイルドタッチで描く、著者新境地の書下ろし。
「女子大生誘拐事件」「熱海別荘殺人事件」「ローカル鉄道の怪事件」など12の難事件、怪事件をあなたの頭をフル回転させて解決してほしい。『おもしろ推理パズル』シリーズ6冊目のこの本では、ちょっと趣向を変えて、推理トリック研究家の久我京介氏に登場してもらった。
中山雅之は、売れっ子の音楽プロデューサー。もうすぐ40代に突入なんだが、ギョーカイ人にありがちなパターン、流行モノに詳しくてノリが軽いから、まだ20代に見られるのは珍しいことじゃない。おまけに裕福な家の次男坊で一流大学卒。独身。本人いわく「モテすぎて困る」ほどだった雅之が、本気になった相手は。男と女、恋愛と結婚を前向きに考えてみると…。
麻薬空港、離陸直前、ヘロインはどこだ?運び屋はだれだ?プレイボーイ、コランタンと気のいい愛妻家の相棒ブリショーのコンビが見事に解決してゆく兇悪事件の数々は、実はフランスで実際に起こった犯罪に材をとり、その生々しさは比類がない。夜のパリにうごめく性倒錯者の群れ、欲望に翻弄される歪んだ人間模様、悲鳴、そして血。残虐な犯人と魅力的な主人公の対決、彼を支える風俗取締部特捜課の面々、さらに全編をいろどるセクシーな女性たち-都市の生理をあばきながら巧みなストーリー展開をみせる本シリーズは、一度読みはじめたらやめられない面白さを持っている。
第4代オッターバーン公爵は、バッキンガムシャーにある城と領地を継承するため、東洋より帰国した。しかし、父の浪費によってオッターバーン家は破綻し、巨額の負債を負うことになった。途方に暮れた公爵に従姉のレディ・エディスが打開策を提案する。ヨーロッパの貴族の称号を手に入れようと野心を抱くアメリカ富豪の令嬢との結婚話だった。
深夜2時。ラジオから流れるDJの甘い声とショパンの調べ。そう、このDJ、ジョナサン・ウッズこそが私が今必要としている人だわ。クラシック専門のラジオ局WQPBから聴取率アップを依頼されていたキャシーは、ゆっくりとうなずいた。早速彼に会って、局のイメージアップに協力してくれるよう要請しなければ…。キャシーは善は急げとばかりにオンエア中のスタジオにかけつけ、そのドアをそっと開けた。