1991年6月発売
聖なる大河を中心に、きらめく水晶山脈に囲まれた七王国のひとつ、デラン。クリスはデラン王バジの勇姿に憧れる、平凡な少年だった。だが、風変わりな男ダダに知らされた出生の謎が、彼の運命を変えた。水晶山脈が岩山にしか見えない目を治すには、魔界のミディネ神殿に行って女司祭に頼むしかない。ダダに教えられ、クリスは神殿への旅に出た。酔いどれの天才剣士を仲間にし、三つ目の鬼と闘い、たどりついた神殿には異変が待ち受けていた。新鋭・荒井潤が挑む、新たなファンタジー・ワールド。
十歳の少女だった〈私〉がみつめた高校生シェリルとリックのひたむきな恋。あれから数十年、自らの結婚に苦い思いをかみしめる〈私〉がいまいちど、あの愛を甦らせる。60年代初めのニューヨーク郊外の街を背景に、うつろいゆく愛のきらめきを結晶させた現代小説の秀作。
1812年10月25日、ディケーター艦長の指揮する合衆国フリゲート艦ユナイテッド・ステーツ号はイギリスのフリゲート艦マシドニアン号を激戦の末、捕獲した。その功績でファビアン・マーカム1席将校はブリッグ艦の将校艦長に昇進する。イクスペリメント号艦長ファビアンにあたえられた命令は大西洋岸をセント・ローレンス湾まで巡航し、敵の私掠船を捕獲あるいは破壊してアメリカ商船を保護せよというものであった。その作戦に従事していたある日、イクスペリメント号はバナナの皮などのごみが数海里の幅に広がって流れていくのにぶつかった。大船団がとおった跡だ。ファビアンは追跡を決意する。
アメリカの伝奇作家ナサニエル・ホーソーンには、ある作品の中でも書いている呪われたいくつかの現実があった。私(奈良井啓悟)は自分のルーツさがしの中で、それらを知っていくや、驚愕した。緻密に描かれたミステリーのパズル。全篇にちりばめられた〈37の謎〉はあなたの知識への挑戦状。
性のモラルを重層的に展開する表題作「藻を刈る男」をはじめとする「詩的恋愛」「上海から来た愛人」で、旧い伝統的モラルを批判し、また「春蚕」「質屋」で、世界恐慌と外国列強の中国侵略を背景に中国農村の疲弊を描き、力強い社会批判を試みる茅盾のリアリズム作家の本領を伝える待望の短篇集。
ダンディズムと軽さのエレガンスを基調とする渋沢文学の出発を告知する表題作ほか、才能の萌芽が燦たる処女作「撲滅の賦」、功緻で〓@56F5洒な小品「錬金術的コント」の三篇を収録する。著者自らが、死の直前に発掘を予言していた最初期作品集。
最愛の子を失い、夫の浮気も発覚して意気消沈するドロシー。そんな折りも折り、海洋調査研究所から逃げ出した謎の怪物「アクエリアス」が彼女の前に現われる。身長2メートルはあろうかという、海陸両棲の蛙男。ドロシーはその怪物を海に帰してやろうとするが…。哀しみの果ての優しさを描いた表題作ほか、倦怠期にさしかかった中年夫婦と新婚カップルの奇妙なやりとり(「聖ジョージとナイトクラブ」)、公園のベンチで終日夢想に耽る男の話(「置き去りにされた男」)の2篇収録。
1926年5月のある嵐の日、ドイツの小さな地方都市ピューリッツ(現在はポーランド領)で女の子が生まれる。父親のいない私生児。ポーランド人の祖母はマレンカ(雷)と呼び、ドイツ人の母はマルゴットと呼ぶ。1939年に勃発した第二次大戦終戦の混乱の中で、彼女は死んだ親友になりかわり、偽りの人生を歩むことになるが。-戦争によって国家も、家族も、自我さえも引き裂かれたドイツの悲劇を躍動感溢れる文章で描く、ベストセラー作家の代表長篇。
口からでまかせ、ウソ八百の父親と、そんな父親を軽べつし、他人を信用せず平気でウソをつく息子。史上最悪な親子がきずなを取り戻せる日は来るのか?東芝日曜劇場小説化。
東京・新宿のネオン街で起った夜の女殺しに続いて、旅客機爆発墜落事件が発生…。捜査線上に浮かんだ、数年前の自殺事件。一見何の関係もないかに見えるこの二本の糸を、刑事の常道、運・根・勘と最先端の科学捜査力で解決に挑む、本格推理長編。
現代アメリカ女流作家ユードラ・ウェルティーの壮年期の最傑作。時は20世紀前葉、場所はアメリカ深南部ミシシッピ州モルガナの町で、愛に、芸術に、冒険に生きる男女の群像。だが彼らの目をくらます謎の黄金の林檎は神話の昔から輝き、耳に響く音楽は星座のかなでるものだった-。狭小な時と場所に生きる名もなき人びとの情熱の中に、人類の歴史と宇宙の星々にまで及ぶ壮大なイメージを展開させるウェルティー文学の真髄。
兄光琳とともに多くの歴史的傑作を残した美の哲学者、尾形乾山の世界が今あざやかに甦る。元禄の京都を去り、江戸、佐野で創作にうちこむ老匠の魂はなぜこれほどまでに燃え続けたのか。没後250年を記念して書き下ろした長編時代小説。