1991年発売
海辺の小さな町イーストウィックに住む3人の魅力的な現代の魔女たち。魔女といっても、いずれも30代の女ざかりで、離婚して子供を抱え、彫刻家、チェロ奏者、新聞記者と自立した生活を送っている。時には小さな魔法で恋のとりもちをしたり、意地悪をしてみたり。そんな3人の前に、いわくありげな中年の独身男が現れて…。女性の優しさと恐ろしさを映しだす大人のための現代の寓話。
自分の部下がCIAに駆け込むという致命的失態を演じたKGB第一管理本部長は、亡命者の信頼性を失墜させる起死回生の策として、自ら発案した偽装亡命者となってアメリカに赴いたー。国を裏切り、おのれも裏切られていくスパイたちの、孤独と悲哀に彩られた生と死のドラマ。表題作はじめ、モスクワ、ワシントン、東京、中東を舞台に手練の筆で描いた著者初の短編5作を収録。
父親譲りの刑事魂を持つパーマは、殺人課には珍しい女性刑事。悲惨な死体を見慣れている彼女も、今度ばかりは息を呑んだ。念入りな化粧、縛られた手足、全身に拡がる噛み痕、そして何とまぶたが切り取られている。同様の事件が続き、この種の犯罪の専門家、FBI分析官のグラントと協力して、パーマはヒューストンの上流階級に秘かにはびこる病巣に、足を踏み入れることになった。
ブルザールは裕福な女性ばかりを相手に成功している精神科医だ。患者は皆、幼い時に性的虐待を受け、その心の傷のために倒錯した性の世界に溺れ、苦しい二重生活を強いられている。ある種の先入観から犯人を特定しようとする殺人課の刑事たち、パーマに理解を示しながらもデータ分析の結果から犯人を捜すグラント、パーマは一人、犯人の気持に入りこみ、意外な真犯人を見つけ出すー。
ヨークシャーの農場主が首を切られて殺され、死体の傍らで彼の娘がつぶやいていた。「私がやった、でも後悔はしていない」-村人たちには彼女が犯人とは思えなかったが、娘は固く心を閉ざしたまま病院へ隔離された。その母と姉は過去に家出して消息不明だった…。既存のミステリーを超えて、平和な農村に起こった異常な犯罪とそれをとりまく複雑な人間関係を精緻に描く長編。
一緒に暮すことに限界を感じ、また人生の生甲斐をも見出せないポートとキットは、故国アメリカを捨て、本来の姿を取り戻そうという希望を抱いて、北アフリカへ旅立つ。夫婦と同行者タナーを待ち受ける時のない世界、サハラの砂漠は、彼らをそれぞれの苛酷な運命へと導いてゆく。圧倒的な自然の前に、脆くも崩壊する現代文明への鋭い批判に満ちた、戦後アメリカ文学の代表作。
姉妹のように仲良く育った、いとこ同士の美和子と梢の前に現れた治。治に魅かれつつ地味でおとなしい梢を気づかっていた美和子は、ある日突然、恋の鞘当てに敗れたことを知る。なぜ彼は梢を選んだのか?腑に落ちぬままに歳月を送った美和子はやがて意外な真実に驚愕する…。人生の岐路に立った時の人の心の七色の綾を鮮やかに描く連作短編集。
薬と暴力が疾走する砂漠に、謎の予言者が侵入した。だが、なぜ-。『ノーライフキング』の小説デビューから三年、いとうせいこうが、新しい時空の扉を開ける。
戦後すぐの東京に現れた「青銅の魔人」。その正体は-言わずと知れた二代目・二十面相。師匠の遺志を継いだ平吉の、やはり二代目・明智小五郎との宿命の対決は、クライマックスのどんでん返しへ。平吉を密かに応援するのは太宰治。その太宰の入水の報に、玉川上水に駆け付けた平吉は…。怪盗の側から綴る、奇想天外のニュー・冒険小説。
街も人も変わりつづける東京から、逃れるように渡ってきた南の島-。そこは政情の不安に揺れていた。秘密警察の暗躍、ゲリラの跳梁、そしてうさん臭い日本人の来島…。一触即発の危機的情況のなかで外部との連絡も断たれ、「理想の女性」と2人だけの奇妙で純粋な愛の時が。だが…。太平洋に浮かぶ小国を舞台に、笑いとサスペンスいっぱいに繰りひろげる〈陰謀と熱愛と冒険〉の物語。
なぜか九州平戸島に漂着した韃靼公主を送って、謎多いその故国に赴く平戸武士桂庄助の前途になにが待ちかまえていたか。「17世紀の歴史が裂けてゆく時期」に出会った2人の愛の行方を軸に、東アジアの海陸に展開される雄大なロマン。第15回大仏次郎賞受賞作。
優秀な成績をおさめ、奨学金までうけて大学に進んだ黒人青年ウイリアムは、はたから見ると、スラム街からの脱出に成功し、将来が約束されているようにみえた。それがなぜ、心理療法にかよい、ガールフレンドの白人学生ジェニファーを撃ち殺さなければならなかったのか?私立探偵ジョン・カディは、旧友のマーフィー警部補がウイリアムの母親の知合いだったことから、事件の裏づけ調査を依頼された。しかし、事件には疑問の余地などなかった。ウイリアムは催眠療法の席で殺人を告白し、凶器の拳銃をとりだしたのである。病んだ現代人の心の襞に隠された事件の真相に、ボストンの知性派探偵ジョン・カディが迫る問題作。
オクストーン人は、震動守護者アセル・キンを捕虜にして、いずこに通じているとも知れぬ転送機に震動守護者を送りこんだ。その転送先が、海王星の夢の海と呼ばれるメタンの海であるとついに判明した。そこでアセル・キンをあらためて捕まえるべく、レッドホース率いる突撃コマンドは海王星をめざす。震動守護者トロ・コンの操るオールド・マンとその超弩級戦艦群が包囲している海王星でかれらを待ちうけるものとは…。
ハイテクの粋を凝らしたインテリジェント・ビルが林立する大都市グレート・ロサンゼルスーだがそこは、脳に究極の快楽をもたらす電脳麻薬“テク”が支配する汚れた街でもあった。いまこの街に一人の男が帰ってきた。無実の罪で冷凍睡眠刑に処されたものの、友人の尽力で仮釈放された元刑事ジェイク・カーディガン。かれは私立探偵として働きながら、自分を陥れたテク・ディーラーの卑劣な罠をあばこうとするが…。
魔法使いを心よく思わぬ大法官アルウィルは、ルーディと魔法使いたちをなきものにせんと、暗黒の生き物の巣窟を探らせることにした。その無謀な偵察がいかに危険かを承知しながらも、大魔法使いインゴールドはルーディと仲間を連れて出発した。そのころ、ジルはある夢を見て、暗黒の生き物に関する古代の謎を解く手がかりを得るが…。ミステリアスな暗黒の生き物の正体がついに明かされる、ダールワス・サーガ最終巻。
舞台の上では白熱したアドリブが繰り広げられていた。リード・トーカーの駄洒落にアンサラーが駄洒落をもって応える。まさに超絶技巧だ。歴史に残る名セッションだ。そして、テツはメグとお喋りをしたいと思ったー。高度なテクノロジー社会で、他人と接触することを忌み嫌う人々の間では、お喋りはアートと化していた。だが一組のカップルがお喋りにめざめ人間らしい感情を取り戻した時…。表題作を含む書き下ろし短篇集。