1991年発売
《青春》は、みずからが、たゆみなく、みずからの情熱の全量で、磨き上げつづけていかねばならぬ。その強靭な志向は、誰もが負わねばならぬ痛ましい運命とは異って、やがて人格の正直な《無垢》へと通じ合うだろう。梶井基次郎と三好達治の二人の青春は、そこにつきあおうとするものの心に、新鮮な抒情の無垢の所在を、まるで腹立たしいほどの輝やかしい狂気のように、容赦なく突きつけてくるのである…。
グループのトップの座をねらう藤田は、桐子をスキャンダルに巻き込むため、巧妙な殺人事件を計画。しかし、そこは桐子たちの絶妙なチームワークで危険を脱出した。追いつめられた藤田は、自ら女社長へ魔の手をのばす。一方の桐子は思い深まり、恋人殺害を計画、でも桐子が真に愛するのは…。華やかな大団円、鮮やかなどんでん返し、毎日を精いっぱい生きる元気の女社長のラブ・サスペンス。
獲物を追って、この街へやってきた。そいつの人生に幕を引いてやる、それが仕事のはずだった。妙に気になるあの男と出会うまではー。惚れた女がやりたいと思うことを、やらせてやりたいーたとえ、それが自分への裏切りだとしてもー。あの男はそう言って銃口に立ちふさがった。それが優しさ?それが愛ってもんなのか?私を変えたあの日、裏切りを許せなかった遠い過去が心に疼く。殺し屋とピアニスト、危険な色を帯びて男の人生が交差する。ジャズの調べにのせて贈るブラディ・ドール、シリーズ第五弾。
現代版かぐや姫ともいわれる美少女が五人の求婚者の仕掛けた罠-それは被女自身を賭けた宝捜し。ヒントは竹取物語からとられた二首の和歌。密室状態の山荘中を家捜しして、見つかったのは宝ではなく白骨死体。怯える人々を尻目に、続いて起こる殺人事件。ファンタジックな舞台設定と本格推理が見事に融和。
三姉妹で、のんびり温泉へ…行けるはずないよね。出発直前、長女綾子が強盗に連れ去られちゃうし、父親に置き去りにされた女の子を保護してやれば、よりによってその強盗の娘だし…。次女夕里子と三女珠美は、犯人の逃げた温泉町へ大追跡。しかし、そこには喉を切り裂かれる恐怖の連続殺人が待ちうけていた。
父が不審な交通事故死をとげ、大学生の“僕”はそのときから「僕を知る」旅に出た。父の遺した一行だけの遺書「本当はお前も連れていきたかった」は何を意味するのか?推理作家でもある伯父の不可解な行動。“僕”の中に流れる殺人鬼の血。密室殺人事件ののち、驚愕の真相が。書下ろし新本格推理・三部作完結。
美しい海の町天草・牛深で特産の海産物加工品を本物の味に創り上げようとがんばる若き夫亡人千帆子。夫の面影に守られ、頑固な父親と名人肌の海女や慕って集まる若者たちに支えられて、ようやく彼女の努力が実を結ぼうとしたとき、純情な青年が現れて愛を告白する。自然と恋愛を大らかに描いた力作長編。
世界制覇を目論む幻の闇の世界政府を追って、鬼道タケルは南米から米西海岸へと赴いた。ウエスト・コーストの青空の下には謀略の闇が広がっていた。亡命KGBエージェント、その命を狙うソ連の超能力暗殺者、PSIを兵器とする戦士僧軍団。タケルとその美貌の恋人で優秀な記者のジルは死闘に突入した。
一時間五千円で、恋をお分けします。といううたい文句の喫茶店は、あやしげな風俗産業である。そこで出会う女性たちとの奇妙な交流、そして垣間みえる彼女らの素顔と仮面の距離。漂流する現代の若者とその危うげな人間関係を、繊細な感性でとらえて描き出す青春文学八編。
野心家のコンピュータ・エンジニア桂木勲を襲う銀行オンライン妨害の罠。背後に潜む謎を追ううちに、過去のえん罪が暴かれ、情報管理を狙う国家の巨大な陰謀に突き当たる。現代の錯綜したシステム社会のなかで、ビジネスマンが新しい愛と生きがいのある仕事に目覚めていく。感動的な社会派ミステリー。
自衛隊が極秘に開発していた特殊ヘリコプターが、試験飛行中に奪取された。唯一残ったヘリのパイロットは、辛くも逃れて帰還する。だがその直後から謎の諸機関から生命を狙われる。彼が生命を賭けて守った娘・美里にも魔手がのびる。決死の覚悟で富士の樹海へ潜った彼女の前に、恐るべき力の謎の男が。
幼女の自分を日本に置いたまま、国際結婚で渡米し、謎の死を遂げた母。その死の周辺を知りたくて潤子はアメリカ東海岸の港町を歩く。そして彼女にとって義弟にあたるアメリカ人青年が、母の故郷出雲に来ているとわかる…。日米ふたりの男との間で愛に揺れる三十代女性の姿を精緻に描き上げた長編。