1991年発売
KGBの命を受けて破壊活動を繰り返すテロリスト、フランク・バリイ。彼の暗殺を決意した英国情報部は、その実行者にバリイのIRA時代の戦友ブロスナンを選ぶ。だが彼はフランスの警官射殺の罪により、絶海の孤島で終身刑に服していた。釈放を条件に暗殺を請け負わせるべく、情報部IRAを引退したリーアム・デヴリンにブロスナンの説得を依頼するが…。『鷲は舞い降りた』のデヴリンが再び活躍するヒギンズの傑作長篇。
動物が重要な役割を果たす物語は3000年前も今も同じくらい好まれている。したがって、ミステリ作家たちが動物にある種の愛着を感じ、彼らが登場する物語をたくさん書いたとしても不思議はない。犬、猫、鳥、ハムスター、蛇…。自らも大の犬好きで知られる女性作家パレツキーが、さまざまな語り口の多様な動物観と多岐にわたる短篇形式の精華を、膨大な作品郡の中から選び抜いた、動物好きには読み逃せないアンソロジー。
クリスマスを控えてにぎわうマンハッタンに爆破事件が続発した。政治テロか?狂気の無差別殺人か?警察の必死の捜査を嘲笑うかのように犯人は爆破予告を送りつけ、次々と実行に移してゆく。街は恐怖に怯え、マスコミは〈クリスマス爆破魔〉と呼んで騒ぎ立てた。遅々として進まぬ捜査に、責任者のカウフマン警視はしだいに苦しい立場に追いこまれて行くが…。息もつかせぬスリルが横溢する大型警察小説シリーズ第二弾。
人気TVキャスターのエドワード・カーンが妻殺しの容疑で告発された。彼は強く犯行を否定したものの、数々の不利な情況証拠を前に、なぜかいっさいの証言を拒否していた。その心中にあるものとは?そして、彼を裁く立場に立った陪審員たちの揺れ動く心が下した評決とは…。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガーを受賞した緊迫感溢れる法延ミステリの傑作。
10の短篇の主人公は、チェコ出身、容姿端麗、頭脳明晰、お色気過剰とおせっかいが玉にキズ、のイヴ・アダム嬢。国営の芸能エージェントとの契約によって、世界をまわって巡業することになったナイトクラブ歌手だ。なぜか行く先々で犯罪にまきこまれてしまう彼女は、そのたびにブロンドの髪に包まれた灰色の脳細胞をうごめかして事件を解決していく。古典のパロディあり、パスティーシュあり、ゲーム的興趣を満載して、チェコの文豪が贈る痛快連作集。
茶色の目と髪、いつも地味な服を着ているサリー・ポーターは、ニューヨークで働くごく平凡なウエイトレス。だが、彼女には人に言えない悩みがあった。子供のときから、ときどき記憶喪失におちいるのである。それが原因で仕事も長続きせず、結婚も破局をむかえた。じつはサリーの心のなかには、あと四つの人格がすんでいたのだ-。サリーに起こったことはなんでも知っているブロンドで青い目の楽天家デリー、長い黒髪の教養あふれる画家のノラ、赤毛でいつも厚化粧、歌やダンスが得意で女優志望のベラ、すべての男を憎んでいる乱暴者、黒い服しか着ないジンクス。サリーは自分に耐えられない事件にでくわすと、無意識のうちにこの四つの人格にスイッチしてしまう。それがサリーの記憶喪失の原因だったのだ。ある事件のため、病院に運びこまれたサリーは長年にわたる記憶喪失の悩みをついにうちあけ、精神科医ロジャーの治療を受けるのだが…。ネビュラ賞受賞作『アルジューノンに花束を』であらゆる読者を魅了したキイスが、五重人格のサリー・ポーターの心の軌跡を鮮やかに描く傑作長篇。
ワシントン郊外のみすぼらしい小屋に、人の過去を見とおし、病をなおす説教師がいる-そんな噂を聞きつけて、ホーキンズ大統領夫妻は、謎めいたブラザー・クリストスを別荘に招いた。血友病の息子ジョージがなおるかもしれないという期待があったからだ。その矢先、ジョージが脚を切り、傷口から血が止めどなく流れだした。だが、クリストスが触れるだけで、出血は嘘のようにとまってしまったのだ。クリストスの神秘的な力に魅了された大統領は、やがて政策の決定にまでクリストスの意見を求めはじめる。一躍ワシントンの寵児となり、近づく女たちとつぎつぎに関係をもっていくクリストス。そんな事態に危機感を抱いたホワイトハウスのスタッフは、クリストスの暗殺を決意するが…。稀代のストーリーテラーが、権力の中枢を舞台に繰り広げる聖と肉欲のサスペンス大作。全米で二百万部を売った大ベストセラー。
1949年英国。作家志望の若者オリヴァー・ショーは、除隊して故郷の田舎町へ帰ってきた。戦後社会からとり残され、前の保険会社の勤めには乗り気がしないオリヴァーは、女たちと寝ることに憧れと情熱を傾ける。年上の友人ジェイクに助言をあおぎながら、地元のダンスホールで出会う女たちに夢と快楽を追い求めるうち、別れや失敗を経てオリヴァーもじょじょに成長していく。学校教師の職を見つけ、すさんだ少年たちに手こずりつつ、同僚の女教師と大胆な情事を楽しんだり、人妻とつかのまの恋をしたり…。やがて、ヘミングウェイを目標としていた彼に作家としての転機が訪れる。英国冒険小説の巨匠が、ノスタルジックに、そして、時にポルノグラフィックに描き上げる自伝的青春小説。
日本有数の豪雪地帯、秋山郷。江戸の昔、かの地にわけ入った異才・鈴木牧之が『北越雪譜』『秋山記行』という書物をものした。トラベルライターの草分け・牧之氏は、いってみれば瓜生慎の大先輩にあたるわけだ。「鉄路」編集部から取材依頼がきたのもそんな縁からである。あたり一面雪景色のなか、辿り着いたノヨサ民俗館で、慎たちはいきなり老婆失踪事件にでくわす。隠居部屋の通用口は雪で塞がれており、人目につかずに家を出ることは不可能に見えた。これが秋山郷を襲った恐るべき殺人事件の幕開けだったのだ…。
春酣の宵、二郎は悪夢に悩まされた。夢の中の決闘で不覚をとったのだ。三尖刀の斬撃をかわした者は、五指と充たぬのに。その天敵は何者か?さらに意中の女玉蘭花までが遠ざかってゆく…。そんな不穏な夢を見抜いたのは、黄塵舞う城内・東の市で、二郎がごろつきから救った琵琶占いの妖艶な美女だった。この出会いが、夢魔の底なしの淵へ誘う機縁になろうとは。期待の彗星が放つ待望作。
半太の稼業は珍しい。十手を持っているわけでも、縄張りがあるのでもない。それでも、岡っ引と言うしかない。道中をかけながらでも、難事件で頭をかかえこんでいる親分の、助っ人を買って出るのだ。持ち前の頭の良さと、年季のはいった鉄鎖の腕を使って事件を解決しては、稼ぐのだ。三吉親分の助っ人に当ったのは、浅草の堀田原で殺された若い女の死体に、猿が乗っていた、という事件だった!?傑作捕物帖。
日本冒険作家クラブのメンバーが競作したオリジナル・アンソロジー第5弾!船戸与一「エドワルド・フェブレスの素描」など9篇に加え、北上次郎・志水辰夫・森詠による座談会「これからはハードボイルドの時代だ」を収録。
あたし、女子高出たてのホテルのメイドなんです。都心のホテルって、ほんと刺激強い。ドキドキ、ワクワクで、処女のあたしには恥ずかしいことばかり。新婚さんの泊ったお部屋からは、使用済みのゴム製品が3つも。ハイミスのお部屋からは、くたびれたヘンなものが。ほんとに助平なことばかりで、どうなっちゃうのかしら…。著者独壇場の長篇ユーモア・エロチカの傑作。
魔界の軍団動く。タケルは妖精界を守れるか?妖精たちに魔王退治を頼まれたタケルとリノ。経験値をふやし、美男エルフのアルフィル、謎の男ベリアルも巻き込んで、いよいよ魔王との対決が迫る。異次元世界の大冒険、てんやわんやの第2弾。
石山慎太郎の恋人である竹下好美は、寝床をともにした男に対して、予知が働く奇妙な能力を持った女だった。将来を誓い合った二人は、夜毎に慎太郎のマンションで愛の交歓を行なっていたが、ある時、絶頂を迎えた好美は、慎太郎が会社で主任に昇進することを予見した。出世内定を無心に喜ぶ慎太郎の傍らで、好美はなぜか悲しげに涙を流す。その理由は-。また、二重人格が高じてタイプの違う2人の男と付き合いだした女や、毎夜、夢で見る女と現実に出会って戸惑う男など、フツーと少しズレた癖を持ち、体験をする者たちの姿を軽快に描く短篇集。
江戸川乱歩の未発表小説が発見された。雑誌に連載されたその小説の題名は『白骨鬼』-その内容は次のようなものだった。ある理由で南紀・白浜を訪れた乱歩は、自殺の名所『三段壁』で起きた首吊り事件に遭遇する。首吊り自殺した学生・塚本直は、死の直前まで怪異な奇行を繰り返し、自殺した姿も異様なものであった。その奇行を知り、自殺に疑惑を抱いた乱歩と詩人・萩原朔太郎は、強烈な推理合戦を繰り広げるが。-だが、作者名のないこの連載小説には、恐るべきカラクリがあった。衝撃の大どんでん返し、大胆かつ精緻なトリックで虚と実を融合させた、新鋭が描く新本格推理の白眉。
刑事安芸新八の妻・真澄は、一人息子の守介を連れて郷里の新潟県十日町に向かっていた。途中、豊富な金の産出で賑わう国分村に立ち寄った際、飢えた七人の少年に襲われ、守介は撲殺され、真澄は性交奴隷として飼われるはめに…。行方を追う新八も村人の罠に落ちた。復讐に燃え、鬼と化した夫と妻の凄絶な怨念を描く著者渾身のハード・バイオレンス衝撃作。