1991年発売
チヅルは小学4年生。これでもなかなかいそがしい。遊び場に突然やってきたヘンな転校生。おねえちゃんの長電話と初恋の予感。お母さんとオトーサンの秘密の取り決め。チヅルがみずみずしい眼で感じた家族や友だちのこと、かいまみた大人の世界-。夢みる少女の数々の体験を季節感豊かに描いた、甘ずっぱい連作短篇集。
夢を打ち砕かれ、わずか46歳で老人のように病み衰え、ひたすら死地へと、マグダレーナ河をさまよい下る報われぬ旅に出たシモン・ボリーバル。宗主国スペインからの独立を成し遂げ、〈解放者〉と呼ばれた華やかな面影はすでにない…。-失意のうちに没した実在の英雄を描く本格的“歴史小説”。
軍事施設なみの防護網。完璧にシールドされたコンピュータ制御機器。「不可能」のハードルを越えると、またひとつ「不可能」が二人の前に立ち塞がった…。超話題作『黄金を抱いて翔べ』から1年。高村薫は持ち前の科学知識を総動員して、原子炉に狙いを定めた。比類なきクライシス小説千枚。巨大な構築物に素手で立ち向かう男たちの、見果てぬ夢がここにある-。
ローダン一行はトルクタンでの作戦で、球状銀河M-87の支配的カーストに属している基地のエンジニアの存在を知った。かれらはM-87を支配する中枢部の設計者の側近だ。もしコンタクトに成功すれば、故郷の銀河への帰還も夢ではない。スコアルから得たデータをもとに、トルク星系から6718光年離れた休暇惑星ゲーギヴァルに潜入したローダンは、ロワ・ダントンやミュータントたちとともにとほうもない作戦を開始した。
太陽系のみならず近傍星系までもイスラム教勢力によって支配されている近未来ー。火星首長国では三十年ぶりに、首長の頭部を切断し、若いクローンの体に接合させる〈打首の儀式〉が行われようとしていた。クローニング技術者ハミード・ジョーンズは、証人としてこの儀式に参列した。ところが手術の最中に、客席にまぎれこんでいた過激派が銃を乱射。ハミード・ジョーンズの目のまえで、首長の頭部は鮮血に染まった。
瀕死の重傷をおった首長を見かぎり、太政大臣と宦官長官はクローンを用いて偽首長の擁立をはかった。偶然この秘密を知ったハミード・ジョーンズは大臣や長官、はては過激派から命を狙われる。そのうえ、砂漠に潜む王位僣称者アル・シャルク、イスラムの盟主を目指すアルファ・ケンタウリの帝王も、ハミード・ジョーンズの持つ情報を得ようと躍起になっていた…。気鋭の作者が壮大なスケールで描く奇想天外なイスラム宇宙。
1830年代、南北戦争前のアメリカ・ヴァージニア州の少年メイスンは、ひょんなことから殺人をおかしてしまった。逃げまわるメイスンが出会ったのは、なんと崇拝する作家エドガー・アラン・ポウ。この奇矯な天才と運命的な出会いが、メイスンを驚異の旅へいざなうことになったー地球内部にひろがる広大な空洞を探険する冒険旅行へと。鬼才が自由奔放な想像力で先達ポウに挑み、SF界の絶賛を博した傑作。
知性ある星々との共生関係こそ、巨大コンピュータ〈計画機械〉の支配から解放された人類の、宇宙進出への足がかりだった。ところが、知性ある星をみずから作ろうとした科学者の実験が失敗。すべてのものを敵視する災厄の星、ローグ・スターが作りだされてしまった。宇宙そのものを破滅に導きかねないローグ・スターを制御するため、人類は知性ある星々に助けを求めるのだが…。〈スター・チャイルド〉三部作ここに完結。
最愛の妻たる美女ヘレネーを誘惑されたことに腹を立てたスパルタ王は、トロイアに宣戦を布告。ふたつの都市の間に、ついに戦いの火蓋が切って落とされた。おりしも、滅亡の予兆のごとき大地震がトロイアの街を襲来。しかも不吉なことに、太陽神の神殿では神の御使いたる大蛇が死んだ。混乱の中で、カッサンドラーは、神々までがトロイアを滅ぼそうとしている夢を見るが…。トロイア戦争に想を得た大叙事詩、堂々の完結。
はたして人類は最初から神に選ばれし者なのか?他の動物が人類にとって代わっていたことはなかったのだろうか…。1億2千万年前、中生代白亜紀の頃、知性珠の力を借り、自分たちの種族の未来をかいま見た恐竜ラウレンティスは、自ら地球の首長となることを拒絶した…。表題作をはじめ、遡時人・時尼との純愛を描いて、第2回SFマガジン読者賞を受賞した「時尼に関する覚え書」など多彩な作品8篇を収録する。
周囲の反対を押し切って、先祖代代敵対するアラデック家の息子と結婚した妹ホリイ。ところが、何者かの扇動による中傷記事によって二人が営む厩舎が窮地に追い込まれてしまった。憎悪に満ちた記事を陰で操る黒幕は誰か?チャンピオン騎手のキット・フィールディングは、妹夫婦の唯一の味方として背後関係を調べ始めるが、やがて彼の身にも魔手がのび始めた。徒手空拳の騎手がマスコミ界を相手に奔走するシリーズ第24弾。
もともと人生が美しいものとは思っていなかった。だが、ドラッグ浸けの毎日がたたり、療養生活を余儀なくされた私に届いた知らせほど、そんな思いを強くさせる現実はなかった。ラテン系のオカマの世界を撮っていた女カメラマンが、麻薬の服用過多で死んだという。しかし、彼女は私の恋人で、麻薬に手を出すことなどありえない。かくて、私、新聞記者ダレノーは闇の彼方の真相を求めて夜のマンハッタンをさまよい始める。新鋭のセンチメンタル・ハードボイルド。
女カメラマン、デニースの死体が見つかった朝、同様に麻薬の服用過多でヒスパニック系のゲイの若者が死んでいた。若者は死ぬ前にエスメラルダという金持ちの女と一緒だった。しかも、デニースの手紙にもその女の名が出てきていた。新聞記者の私は、鍵をにぎる謎の女の行方を追う一方、若者と繋がりのある銀行家一族の中に足を踏み入れていく。チャンドラーの衣鉢を継ぐ新鋭が鮮烈な感性でアメリカ社会の裏側を描く大作。
真夜中にインディアン保留地の砂漠で、セスナが着陸に失敗して大破した。どうやら麻薬を密輸中だったらしい。しかし機の残骸から麻薬は発見されなかった。爆発の直後に何者かが持ち去ったのか?別件の捜査中に事件を目撃したジム・チー巡査は、連邦警察から疑いの目をむけられ、権限外の捜査に踏み出すが…。映画化も決定した全米ベストセラー作家の話題作。
ミドケミアを震憾させたリフトウォーが終結して20年が過ぎた。諸島王国の王弟アルサの双子の息子、ボリクとエアランドも、すでに19歳。平穏な日々をいいことに、二人の王子は、王家の一員としての義務もそっちのけで放蕩三昧の毎日を送っていた。そんなある日、隣国の大ケッシュ帝国から、女帝の誕生祝賀会への招待状をたずさえた使者がやってきた。ケッシュと友好的な関係を結び、同時に息子たちに王子としての自覚を持たせるチャンスとばかりに、アルサは、双子の兄弟を使節として派遣することに決定。王子一行は、意気揚々と砂漠の国ケッシュへと出発した。行く手に恐るべき陰謀が待ち受けているとも知らずに…。壮大なスケールでトールキンの『指輪物語』を越えた評判の〈リフトウォー・サーガ〉の世界を舞台に若き王子たちが繰り広げる幻想冒険活劇、ついに登場。
緑あふれる季節をむかえたヴァーモント-1984年。ニューヨークで大人気のシックな雑誌『カントリー・デイズ』の本社はここにある。人生相談のコラムを連載中のルーシー・スペンサーもここに住み、編集長のヒルドンと愛人関係を続けながら、手紙の最後にいつも「愛している」と書いてきた別れた恋人のことを忘れかねている。この静かな田園を、ある日突然小さなハリケーンが襲った。ルーシーの姪でハリウッドの子役スターであるニコルが、休暇で訪ねてきたのだ。テレビのソープオペラ『情熱の輝き』で有名になった、むずかしい年頃の14歳である。夫の浮気に気づいたヒルドンの妻、ホモの記者、雑誌の内幕を取材にきた女性ライター、ニコルのエージェント、『情熱の輝き』のノヴェライゼーション作家などがいりみだれて始まった、なつかしい1984年の夏の行方は…。ユーモラスにエレガントに、アメリカの時と人々を封じ込めた代表的長篇。
第一次大戦さなかの1917年。オスマン・トルコ軍は、劣勢に立たされながらも、イギリス軍と激しい戦闘を繰り広げていた。そんな中、トルコ軍の軍事機密をイギリス側に流し続ける美貌のユダヤ人女性がいた。彼女の名前はルース・メンデルソン。恋人サウルの影響を受けた彼女は、イギリスがパレスチナを解放した後、そこにユダヤ人の国家を建設することを夢見ていた。だが、その活動がトルコ側に知られてしまった。ルースとその父親を捕らえたトルコ軍の司令官ムラドは、即座に二人を抹殺しようとする。しかし、軍事顧問のドイツ人、フォン・トラウプ伯爵の策略を受け入れ、ルースをその道具にすることにした。彼女をトルコのスパイにさせて、イギリス軍のエルサレム進攻作戦を探らせようというのだ。別人になりすました彼女は、イギリス軍が駐屯するカイロに密かに潜入した。アラビアのロレンス、アレンビー将軍など実在の人物を巧みに織り込んで描く、絢爛たるスパイ・サスペンス。
「ヨットマンのエベレスト」と讃えられる世界一周の「ランカスター・グレート・サークル・レース」。イギリスのポーツマスを出発して大西洋を越え、ケープタウンを回ってシドニー、リオ・デ・ジャネイロ、そしてポーツマスに至る、雄大かつ危険に満ちた大ヨット・レースである。勝者の栄冠を求め、全世界からヨット乗りたちがエントリーする-。操船ミスの汚名をそそがんとするイギリスのエド・コール、豪放磊落なオーストラリア人チューブズ・マーフィ、祖父の代から海で生計をたてているアメリカ人アート・シャッカー、人気を取り戻そうとあせるテレビ司会者デイブ・ケリー、フランス貴族の末裔アンリ・ド・ロシャンボー、女性クルーのエミリー・デハビランドとハリエット・アグニュー…。それぞれの思惑を胸にスタートした彼らを待ち受けるかずかずの苦難。大いなる波涛を越えて、栄光のポーツマスに一位で辿りつくのは誰か?「海のディック・フランシス」と賞賛される気鋭作家が、海を愛する人々の勇気と連帯を爽やかに描く壮大な冒険小説。