1991年発売
僕は、リー・マルコム。ケープ・コッドの近くの小さな町に生まれ育った。家族は、親父のフランク、長兄のポール、次兄のジョーイと僕の4人。あと、大きな雑種犬。母親は、僕が2歳の時に家を出ていったそうだ。僕に野球を教えてくれたのはジョーイだった。親父に話してグローブを買ってもらい、キャッチボールから教えてくれた。ジョーイは、高校卒業後1週間目に、交通事故で死んでしまった。町には草野球チームがあり、ケープ・コッド・リーグという野球連盟に属していた。ある日、僕のチームのコーチで、リーグの副会長をしていたジョー・マレッタに頼まれ、ジュニア・チームの審判を代役でやった。この審判ぶりがマレッタに認められ、僕は、1試合15ドルで、アルバイトでリーグの審判をすることになった。これが、すべての始まりとなった。やがて卒業の時がやってきた。僕は、州立大学へ進学するか、マレッタが教えてくれたフロリダの審判養成学校へいくか迷っていた。誰もが一度は通過しなければならない大人への入口。人生というゲームで出会うさまざまな出来事。アメリカが輝いていた50年代、素晴らしいアメリカ野球の世界を、審判という変わった視点から描く、爽やかな青春小説。
アモーレ化粧品会社に勤めるOL村上加奈子は同僚と共にゴールデンウィークにサンファンからカリブ海を一巡する豪華な船旅と島々の観光を楽しむ「カリブ海クルージング」に出かけた。ツアーのメンバーは加奈子たちと2組の夫婦、商社マン2名、添乗員の一行。客室400の豪華船「サンシャイン」号のクルージングが始まったが、加奈子は妙な胸騒ぎが…。南海の楽園に何かが起こる…。豪華なクルージングに忍びよる殺意。書き下し長編ミステリー。
夫の転職にともなって長崎にやってきた谷地万沙子は、祭で一心不乱に太鼓を打ち続ける信次の凛々しい姿に心惹かれる。したたり落ちる汗が太陽に輝く。男はこれほどに美しいものか。彼女のその一瞬の心の揺れが思いがけない悲劇を生んだ。不倫の汚名を着せられた信次は12年後の再会を誓って島を去った。そして今、約束の時が訪れる。-海沿いの町を舞台に描く大人の恋の物語。
美也子は33歳の普通のOL。この8年間いつも週末に流行作家の日比大作と密会してきた。最近、彼との愛人関係に充たされない何かがある…。ある日突然、彼の娘が2人の前に現れ、美也子は傷つきやすい魅力的なこの娘に、そして別居中の彼の自由奔放な妻にある嫉妬を感じた。そんな折、山で死んだ兄の友人に、美也子は心の安らぎと新しい愛の歓びを見つけはじめた。長編恋愛小説。
療養のため、とある温泉地に滞在している少女は、そこで出会った1人の青年に惹かれるが…。感受性の強い少女の清新の時を瑞々しい筆致で切り取ったデビュー作「サビタの記憶」。単調な生活に倦んだ人妻は、若い従弟との危険な時間に足を踏み入れた…。3組のカップルが織りなす妖しい愛のロンド「廃園」。ベストセラー『挽歌』刊行の前後に発表された8編を収録した作品集。
築地の料亭“花巻”で働きながら、地唄舞いを心の支えにして生きている30歳の有紀は、日本画家の香屋雅伸と知りあい、香屋の妻の敵意と嫉妬をよそに運命的に結ばれた。激しく愛しあった10年の歳月、香屋は50歳の男盛りをガンに冒され、有紀を残してひとりで逝った。それから1年、有紀は、永遠に愛する男のために舞台に上がり、幽艶な女の情念を秘めて「雪」を舞う…。長編小説。
25歳の誕生日に春霞に沈んだプールでひとり泳ぐ美佐子。全身の感覚で水と光と風を楽しむ彼女の、プールの底に映る影は、いつもの冷静そうな影。心の動揺などまるで感じさせず、彼女の動きをそのとおりに映していた。周りのだれもが揺れ動いている時にも、あくまでもクールな美佐子。春から夏へと移る季節のなかで、いま静かに始まる彼女の、そしてあなたのためのラヴ・ストーリー。
芸者の子として生まれ、父を知らずに育った未知子は、学生結婚に失敗し、1人息子を連れて、東京・向島の花街に戻ってきた。座敷に出て間もなく、初老の紳士と知り合うが、父親にも似たその男との出会いが、未知子を惑わす。好きになってはいけない同士の、大人の恋のゆくすえは…。男女の胸の内を描いて定評のある著者が、変わりつつある花柳界を舞台に展開する意欲恋愛長編。
NATO(北大西洋条約機構)軍加盟の各国から優秀なパイロットが選抜され、改良型のトルネード戦闘攻撃機による特別飛行中隊が編成された。集まってきた彼らは、互いに競い合いつつ、厳しい訓練を耐え抜いていく。その間に起きる女性との恋、仲間の事故死、そしてソ連人パイロットの亡命…。大空を翔けめぐる若きパイロットたちの世界を爽快に描く、NATO版“トップ・ガン”。
世界的に有名なソビエトの作曲家ボリス・ニコライエフと妻ヴェラ、娘のアンナは、パリで亡命を企てた。しかし、決行の時、なぜかボリスは約束の場所に姿を見せなかった。苦しみと悲しみの20年が過ぎ去った。ある日、今はニューヨークに住む妻と娘は、ボリスがフィンランド音楽祭にやって来ることを知る。しかも、アンナの昔の恋人を伴って…。胸を打つ愛のサスペンス・ロマン。
1924年、ニューヨークは、金と権力で市議会と密接に結びついた政治結社、タマニ・ホールに牛耳られていた。タマニの実力者ウォレンの妻エミリーは、夫の無理解と暴力に耐え切れず、家を出た。幼い頃からの夢、ブロードウェーの女優を目指す彼女の前に、タマニと夫の恐ろしい罠が立ちはだかる…。愛する娘をとり戻すため、自分の身を守るため、エミリーの長い戦いが始まった。
タマニの罠に落ちたエミリーは、売春の現行犯で逮捕された。服役した彼女の再出発は苛酷だった。前科者に女優の口は来ない、勤め先もない。だが、無実を証明し娘をとり戻すには、莫大な訴訟費用が要る。悩み抜いた彼女は、ついに夜の世界へ足を踏み入れた。そして再び、タマニの摩手が…。華やかな20年代の風俗を背景に、自分の力で幸せを掴もうと努力する1人の女性の半生を描く。
10年の刑期を終えて出所した〈世紀の大怪盗〉ハドソン・ホーク。マフィアに脅迫され、盗賊稼業に舞い戻ったホークは、相棒のトミーとともにダヴィンチの騎馬像を盗み出した。騎馬像に隠されていた謎のクリスタル。このクリスタルには、大きな秘密が潜んでいるらしい…。ニューヨーク、ローマ、イタリアの古城を舞台に怪盗ホークが繰り広げる華麗なアクション・アドベンチャー。
CIAにまつわるとてつもない国家機密が隠されている小さな街、ウエストポート。ここでひっそりと暮らしている凄腕の元工作員ポールが、新聞記者のスーザンに恋したときから、波乱は始まったのだった。スーザンの父レスコーは元警官で、麻薬密売組織の大物美女との関わりをCIAに邪推されていた。組織と裏取引のあるCIA幹部は、ポールとその仲間を狙い始めるのだったが…。
野や山を蝶のように遊び回っていた自然児の響子は、望まれて結婚したが、一年たらずであっさり家に帰ってしまい、いぜん、村の掟やタブー、血縁のきずなを蹴っ飛ばして、奔放にみずみずしく生きつづける。響子に女性の“原型”を透視する作者が、生れたままの女の、とらわれない愛のかたちを追求した神話的な長編現代小説。