1991年発売
白鳥雅也-表向きは輸入ブローカーだが、実の姿は国際刑事警察機構の秘密捜査官である。幾たびとなく任務で生死の境をくぐり抜けてきた彼に、新たな指令が下った。ハンブルグ港であがった東洋人女性の腐乱死体を捜査せよとのことだ。被害者はマダム・オカダと名乗り、ヨーロッパに長期滞在している若い日本人女性に目をつけては金になる仕事があると持ちかけていたという。背後に大がかりな人身売買組織の匂いを嗅ぎつけた白鳥はヒッピーに身をやつし、盛り場に潜入する。ハード・アクションの巨匠、渾身の力作。
日吉組の開帳する手ホンビキの盆に、胴師として招かれた達夫とその恋人花江は、組の幹部伊勢に呼びとめられた。姐さんの鶴子に手を出した達夫はあやうく大切な親指をつぶされるところだったが、友人の布村京吉に救われた。達夫の身代りとなって親指をたたきつぶされた京吉は、日吉組に盃を返し、沖津組に身を寄せたが、やがて賭場で伊勢と勝負する日がやってきた。「獣の倫理」他、七篇を収録。
好遇という文字につられてソープランドのボイラーマンになったボクは、入社したその日に童貞を奪われ、一日五人のソープ嬢の練習台にさせられる羽目になった。これじゃ体がもたないよ、と嘆いていたら、コワーイ女社長が今度はソープ嬢をスカウトしてこい、という。ボクはもう破れかぶれで街に飛び出し、女の子にアタック開始…。哀しくもおかしいボクのソープランド奮戦記。
ライターの大坪卓也は、北海道北士別町の通史執筆の依頼を受けた。酷寒だがいたって平和な町で、四十年前に起きた猟銃乱射事件だけが、「オンネベツの血の祝言」と呼ばれ、人々に語り継がれていた。気温が零下二十度をまわったある夜、一人の老人が凍死した。気温が下がるにつれ、死者は続いた。二週間で七人ー不審に感じた卓也は、ある日犬を追いかける龍巻状の吹雪を目撃する。超自然パニックノベル。
再建された西洋帆船の完成が間近に迫り、田沼意知は太陽丸と命名した。意次の意をくみ、船はロシアとの通商に使うことが決まった。この太陽丸を位内周助と鷹白らが襲撃した。なんとか焼失を免れた太陽丸は西廻りで蝦夷へ向かったが、途中またしても黒子の戦士・烏羽丸に襲われる。黒潮を血で染める戦闘が続く一方、白鬼の保護者・宙斎は黒子の於宇女に魅せられ、意知から離脱しつつあった。快調第四弾。
“わたし”のアパートの隣人モリーが何者かに絞殺された。しかも、三階に住むタロット占い師のアニヤがそれを予言していたという。“わたし”は調査を開始したが、モリーの別居中の亭主や、占い師のお告げを狂信する食料品店の主人などうさん臭い人物がゾロゾロー。チョコレート中毒で鳥恐怖症、八分の一インディアンの女探偵シャロンがLAを東奔西走して事件を解決する。微笑と涙が盛り沢山の、シリーズ第一弾。
春秋時代、鄭の繆公の娘夏姫が笄年を迎えた。娘たちは十五歳になると髪を結い笄をつけて成人を祝うのだ。宴も果てた夜半、星冠に羽衣をまとった偉丈夫が夏姫の夢枕に立った。その類まれな美質を愛でて合歓の術をさずけるという。寝衣をすべらせ、輝くばかりの裸身を偉丈夫の前に横たえた夏姫の耳に、やがて妙なる天上の楽が鳴り響きはじめた…。夢の面影を求めて旅する夏姫の愛と性の遍歴物語。
結婚に失敗し、精神的に疲れていたロバート・フォレスターにとって、幸せそうに生活する女性ジェニファーの姿をこっそり眺めることが、唯一のやすらぎだった。ある夜、ついに見つかってしまった彼を、意外にもジェニファーは暖かく迎え入れてくれる。その上、彼の孤独感に共鳴し、出会いを運命的なものと感じた彼女は恋人グレッグとの婚約を破棄してしまった。嫉妬と復讐にかられたグレッグは、ロバートを執拗にねらうが…。
我が親父・冴木涼介は、東京・六本木に事務所を構える私立探偵。だが実際はずぼらで頼りがいゼロ、そのうえ女好きという、まったくの不良中年、アパートの大家さん・圭子ママの特別優遇で健気に生きてる僕・隆が、適度な不良高校生なのは仕方がない。そんな親父が密かに狙っている、僕の家庭教師・麻里さんが奇妙な事件の依頼主を連れてきた…。痛快アクションミステリー。
東京デパートに就職した西沢雄太郎。採用理由は、最も女にもてそうにない醜男で女の職場に害を及ぼさない、というものだった。だが、会社の思惑とは裏腹に女運は彼に味方した。社員の姉妹や母娘、美人秘書たちの数々の名器、珍器をものにしながら、西沢はデパート内に異彩を放ち、着実に出世の階段を昇りはじめる…。官能サクセス・ストーリー
横浜の港の見える丘公園で、エリート社員・久保木が絞殺された。県警の薬師寺は、久保木のライバルに着目するが、彼には第三者によるアリバイが。数日後、長崎での久保木の葬儀前夜、第二の殺人が起きた。苦悩する薬師寺は、妹の友人・美緒とその恋人・壮に相談、新たな視点から事件に取り組むが、そこにも時間の壁が立ちはだかっていた。アリバイ崩しの本格推理。
遣唐副使として唐に渡ったまま行方不明となった父・石根を求め、道麻呂はかの地へ赴いた。20数年の歳月を経て、ようやく出会った父は、あまりにもおぞましい姿に変わり果て…。直木賞受賞の表題作のほか、オール新人杯第1回受賞作「子守りの殿」、異色作「水妖記」など初期の作品6編を収録。直木賞受賞までの歴史小説をすべて網羅した、巨匠の原点。
アサストン公爵は、結婚相手として女たちの憧れの的だった。モナコ滞在中女たちの執拗な求婚についに嫌気がさし、ひとり、アルジェに住む親友ニコライをたずねる。公爵は、ニコライ夫婦の愛に満ちた生活をまのあたりにし真実の愛を羨ましく思う。ある日、気晴らしに行った奴隷市場で競売にかけられていたイギリス娘セリナに出会う。
メアリーは、州立大学の図書館に勤めるため故郷ルイジアナに帰ってきた。出迎えたのは、母と祖母、そして幼なじみのキップだった。メアリーにとって、キップは兄のような存在だった。そう、7年前のある夜、抱きしめられるまでは…。
ソシアルワーカーのシンディは目の不自由な人が信号を渡るのを助けようと手を差し伸べた。ところが、彼はシカゴ市警の刑事でサングラスをかけて立っていたのは仕事のためだった。ああ、こんなセクシーな人が刑事なんて!瞳を輝かせる男には心ひかれたがシンディには、人に言いたくない過去があった。
文久三年騒然たる幕末の風雲に包まれた江戸に出現した怪しの結社卍組、神田お玉ガ池の広大な屋敷に住む卍組の党首は汐見田一笑、副頭領はその息隼人であった。水戸浪士で世に名高き兵学者市瀬右有斎の美しい娘お妙は、岡っ引き蜘蛛の長六にひきたてられ、卍組のもとに拉致された。隼人や一味の赤痣の男法川左近次の魔手がお妙のうえに迫ったとき、金泥をもって「八咫烏」と書かれた黒羽根の矢が飛来した。八咫烏の正体とは。そして、兵学者右有斎の秘書「築地図録」のうち欠損の一枚を入手せんと狂奔する卍組の一党のまえに立ちふさがる正義の若侍は、京より江戸へ下ってきた長門小次郎であった。舞台は日光へ!スケールも大きく展開する伝奇長編時代小説の雄編。
天保七年のころ、大江戸の闇の中で暗躍する隠れ切支丹の一味があった。黒神さまと呼ばれる首領の下に黒衣の忍者刺客団が江戸の町を恐怖のどん底に陥れていた。大伝馬町の太物問屋「桔梗屋」の娘お新を初めとしてつぎつぎに大家の娘たちが黒神さまの手によって掠われていた。六人目に狙われたのが水野家の八重であった。江戸へ戻った女賊女狐のお蝶は、黒神さまの秘密を探るため八重の身代わりに立った。お蝶の父親、目明かしの佐平次が黒神さまに殺されたことを知ったお蝶は、仇討ちのため敢然とこの危難に立ち向かった。島原の乱で滅亡した天草四郎の末孫という黒神さま一党の倒幕の隠謀を阻止するため、西郡伊太郎とその剣友の鬼同心茨三十郎とが立ち上がった。