1991年発売
港々を渡り歩いて気ままな“海のジプシー”暮らしを楽しんでいたジョン・ロセンデールは、母危篤の知らせを受け、故国イングランドへ向かった。じつは、彼は第28代ストウィ伯爵-没落した伯爵家から4年前に逃げ出した当主であった。彼の出奔は、1枚の絵が原因だった。ヴァン・ゴッホの初期の「ひまわり」。母の所有になるその絵は、逼迫した一族を救えるほどの価値のある傑作だったが、4年前に盗まれていた。疑いは絵の保管場所に入ることができたジョンにかけられた。身に覚えのない彼は、一族の白い目に耐えられず海へと逃げ出したのだった。母の死後、残された唯一の財産は精神薄弱である末の妹ジョージーナのための信託基金だけだった。ところが、それさえもジョンの双子の妹エリザベスが狙っていて、もし非情なエリザベスが後見することになれば、愛するジョージーナはどんな扱いを受けるかわからない。行方不明のヴァン・ゴッホを見つけ、コレクターに譲り渡して、ジョージーナの人生を守る。そう決意した彼だったが、何者かに命を狙われる羽目に…。ストーリーテラーの冒険サスペンス。
ネヴァダ州中南部にあるアメリカ空軍の極秘兵器研究所、ドリームランド。ここで、マクラナハン中佐を責任者として、科学技術の粋を結集した最新鋭機の開発が行なわれていた。その名は、XF-34Aドリームスター。コンピュータとパイロットの頭脳が一体化して飛ぶ、高機動性能を備えた夢の戦闘機である。ドリームスターには、傑出した飛行技術をもつ専属のテスト・パイロットがいた。だが彼は、KGBが送り込んだ長期潜入工作員マラクロフ大佐で、アメリカの軍事機密を本国に送り続けていたのだ。任務実行の機会をうかがっていたマラクロフ大佐は、警備の隙をついてドリームスターに乗り込み、母国に向けて飛び立った。強固な防空網を突破して進むドリームスター。ドリームスターの奪回に執念を燃やすマクラナハン中佐は、パイロットのパウエル大尉と共にチーターに乗り、追撃を開始した。炎の男マクラナハン中佐、その恋人ウェンディ、ドリームランドの司令官エリオット将軍など、『オールド・ドッグ出撃せよ』の登場人物がふたたび活躍。大空を舞台に、最新鋭戦闘機同士の壮絶な空中戦を描く航空冒険小説の最高傑作。
剣道三段でオートバイにも乗る渥美純子は、警視庁嘱託の探偵・尾高一幸の助手に採用され、学生時代の同窓生で奈良・吉野山の旅館の娘・井上美紀の所へ遊びにでかけた。そこに宿泊し、一目千本の桜を眺め、花見酒をあおっていた東京のカメラマン安部博が茶店の手すりから崖下に転落した。美紀にからんだのが原因だった。しかも死の前日、彼はかつてレイプした美紀の母で旅館の女将となっていた孝子と再会し、その醜聞をネタに恐喝していた。親友が容疑者となる事件に遭遇した渥美純子は尾高を呼ぶが、次なる怪死事件が。
不思議な賦活物質をもつダルマをわがものにする野望のために、この巨大植物と共棲してきた惑星プロトコルをも根絶した恒星間帝国に十五年の歳月が経った。帝国は倦み、国家の黄昏は万民の目に明らかだった。そんなある日、齢百六十五歳になったシュラクサイの元に皇帝シビルピューマ五世から招きの親書が届いた。狂宴と拷問と淫行で人生の老期を迎えた皇帝は、不死の妙薬のことを妄執して、かつて帝国に謀反したフレッチェル大尉とプロトコルの首長の娘ラブ=ラブとの間に生まれた男子を利用する話をもちだしたのだ…。
世田谷区成城、高級住宅の自室で、若い女性が顔をつぶされて殺された。被害者は、長野県の成金大財閥の総帥・松平将史の長女、琴子だった。無残な死体の側には、クリスタルの将棋盤が置かれ、何故か盤上には詰将棋が…。第一発見者で松平家のお抱え運転手、平田均は、友人の推理作家・朝比奈耕作に助けを仰ぐが、残忍な殺人鬼の毒牙は美人姉妹に次々と襲いかかるのだった。大胆なトリックと息をのむサスペンスが激しく交錯する、スーパー・ミステリー。大好評、名探偵・朝比奈耕作シリーズ第二弾。
8月25日、静岡県由比町で発見された小松原功・美子夫妻の死体に駆けつけた捜査陣は当惑した。状況としては心中なのだが、28日から新婚旅行の予定だったことや美子がハンカチに口紅で“昌二郎あなたにも…”という謎の言葉を遺していたからである。美子の言葉から事件に巻き込まれた美子の従兄でフリージャーナリストの天知昌二郎は夫婦の不可解な結びつきに疑問を持ち、2人の過去を追った。
木星丸への突然の乗船命令を受けた陣内一等航海士は、急遽パナマへと赴くが、到着直後、東都物産駐在員の野方から積み荷の不正移動をもちかけられた。一方CIAとおぼしき人物が出現、さらに中南米に勢力を張る謎のドイツ人に拉致され、続いて野方が銃殺された。木星丸に何が起きているのか!?中南米を舞台に、軍事政権と革命ゲリラ、商社、各国諜報機関の凄絶な闘いを描く、長篇海洋冒険小説。
邪魔者は配下の「社員」を使って消す…海千山千の実業家・黒河は、例えば、保育園園長から高級外車を購入した際、その妻の美貌に狂い、自分の愛人を夫と関係させて、交換に女を手に入れ、とどのつまりは夫を殺害。一事が万事、相手の命と引き換え。不倫がばれれば夫を殺し、事業の競争者は次々に抹殺。だが「逆らうと殺される」との噂も立ち、破滅の日は意外に早く…。衝撃の異色犯罪ノベル。
南青山のなみだ坂を上ったところにある“ピエロ”は、メンバーが警察勤務のジャズバンド“泣き虫ピエロ”の溜り場。今日は、バンマスの小宮の三回忌。殉職した小宮警部補をスタンダードで偲ぼうというのだ。演奏でメンバーの気持ちがもり上ったその折、一人の危ない香りの女が店に顔を出した。ドラマーの白バイ乗り正木健が、その晩、女を泊めてしまったのが事件の始りだった…。書下し長篇ミステリー。
幕府小姓組番頭を失脚し、絵師となった朝霞桔梗之介は、絵修業のため奥の細道を旅していた。だが道程は、景観を画布におさめるどころではなく、群れるように現れる悪党を斬り、色香漂う女とたわむれる有様であった。一寸先も見えぬ旅空の下、桔梗之介が触れた人間の業と存在無用の武士。抜き討つ刀が悪を両断し、また新たな辻へと立ち入る…。
夢の酒を造るため、集まった江崎恭平、棚橋藤子ら十四人。いよいよ最初の吟醸酒ができあがった。ところが、その酒「修羅の露」に絡んで、密室状況で二人が殺された。さらに銘酒コンテストの会場でも、衆人環視の中、大胆な殺人が…。マスコミによってスキャンダルが仕立てあげられる中、江崎たちは真相を探る。しかし、容疑者は二転、三転。その間にも、さらに殺人が…真犯人の目的はどこに?日本酒をこよなく愛している著者が、深い造詣を傾けながら情趣豊かに描いた、まさに香り高く味わい深い本格ミステリー、渾身の書下ろしで登場!
西村香織。丸の内にある鉄鋼会社に勤める普通のOL。が、給料は同僚の女性たちよりもかなりいい。彼女の語学力が買われ、外国からのお客さんの接待係も任されているからだ。いつもは観劇などへの同行であったが、そのアメリカ人の場合は違った。米軍基地に連れていられた彼女は、銃を撃つように言われた。しかも全裸で…。