1992年10月1日発売
高度に道徳的な思想に支配され、近隣同士の相互監視体制までもがゆきとどいた近未来社会。とある調査代理店の青年社長アレンは、ある夜、自分自身にも理解できない衝動にかられ、この世界の偉人ストレイター大佐の銅像を密かに破壊するという“いたずら”に及ぶ。この事件は世界に波紋を広げるが、一方彼の周囲にも…。独特の筆でディストピアを描く、ディック本邦初訳長編。
ふくらみのない腹部は、すぐその下に、恥骨の盛りあがりにふれる。薄く細かいヘアが、かすかに指先に触れる。だが、その先のやわらかい湿地に、指を刺すと、ヌルリとした愛液のたまりがやわらかな花弁を露のように濡らしている。もう男を知っている体なのだろうか。-恐る恐る指を深みに入れていくと、なんの抵抗もなく、第一関節、第二関節、やがては指一本をそっくり呑みこんで…。処女喪失から未亡人の性愛まで、さまざまな女の官能を大胆に描くエロチカ傑作集。
新幹線『ひかり277号』の個室で、中年男が殺され、若い女が姿をくらました。中年男は息を引きとる間際、車掌に「蝶々夫人に殺された…」と言い残す。たまたま警乗中だった鉄道警察隊の女刑事・香月美沙子はその謎の女を追って長崎へ。一方、美沙子の大学時代の先輩で元警視庁捜査官、現在はトラベル・ライターの花園千明も“おくんち”祭りの取材で長崎へ来ていて、その殺人事件解明に協力することになる。トラベル・ミステリーで定評のある筆者が放つ“終着駅シリーズ”第1弾。
人民共和国成立直後の北京。舞台は小さな文学研究社。そこでは老若男女、様々な世代の職員たちが、深刻かつ滑稽な悲喜劇を演じていた…。ヨーロッパ帰りの青年研究者・許彦成と美しい妻・杜麗林、そして若い図書係の女性・桃〓@4AA8。この三人が微妙に描きだす恋愛の行方を軸にして、研究社をめぐる幾つもの男女のドラマが、時に辛辣に、時にユーモラスに語られていく。愛と政治が優雅に張りめぐらされる蜘蛛の巣としての物語。今年フランスでも訳出された、注目の一篇である。
11歳の時、伯父とメイドの少女の性交を目撃したベティーは自分の中の性欲の存在に気づく。自分を汚れた者のように感じたベティーは汚れを求め、娼婦のように振る舞う。善良な夫との結婚生活にも飽き足らず、酒と男に溺れ、家を追われるが、親切な夫亡人ロールに助けられる。しかし、ベティーはやがてロールの情深さを嫌悪し、彼女の恋人に接近…。
ヒマラヤに魅せられた山岳写真家・和人の突然の死。典型的大学生活を謳歌する弟・秀人は、ある日、和人の遺言に従いやむなく兄の命の恩人であるシュルパ族のテンジンに、お礼の「自転車」を届ける旅に出る。ネパールの大地を背景に様々な異文化体験に遭遇し、自己に目醒めてゆく秀人の姿を、21世紀世代へエールを込めてシナリオ作家石森史郎が書き下ろす、感動のヒューマンドラマ。
人妻のベアトリスのアルバイトはヌードモデル。が、もちろん夫には秘密。男たちの視線の前におしげもなくさまざまな姿態をさらすたびに、彼女は生きる喜びにうち震える。そんある日、突然、…。ブリジット・ラエが、自らのAV女優体験をもとに、〈見られること〉で高まっていく女の官能を、大胆な描写とともにみごとに描きあげたエロティック小説。
1989年6月4日「血の日曜日」事件以来、事実上、発表禁止とされた莫言は、黙示録的小説「花兵を抱く女」をひっさげて、二年ぶりに文壇復活を遂げた。-地域共同体も血縁共同体も崩壊に瀕している現代中国農村の状況を的確に描き、新しい中国文学の胎動を伝える待望の第2短篇集。
レズビアン関係にある里佳子と有希は探偵事務所を開設中…、とはいえ、実際はカラダを張って罠にはめ、離婚を成立させてしまうのが本業である。男色の代議士夫婦、マザコンの夫に泣く妻、サドの夫を持つ女流評論家…。若い肉体を駆使して事件にのぞむ彼女たちと、合い間に戯れるふたりの迫力のレズプレイが見もの…。
モグラは最高の性を満喫する動物だという。同窓会で会った旧友の余りの若々しさやはつらつとした姿。それは性の歓びからという「性至上論」を聞き、美沙は、性に開眼する。夫にその性の至理を求め、遂に死に至るまで究極の性を満喫するモグラ以上の性技を会得する。
数々の性遍歴を重ねた大作は、「人見悟空」となって泣く泣く大作に従った、華族出身の冷ややかな妻妙子に、「女房に惚れられないような男は男じゃない」と言われた。そこで大作は、夫婦愛を得るためにあらゆる努力を重ねる。