1992年1月発売
ある日故郷へ戻ってみると、そこは街並も住民も見覚えのない見知らぬ街になっていた。いまいる自分は一体何者なのだ?-光の神と闇の神の対決に巻き込まれた男を描いたファンタジー長編の表題作。そのほか、「奇妙なエデン」(本邦初訳)、「地球乗っ取り計画」など、初期の短編三作を併録。
舞台で端役をつとめながら「運命の男」が現れるのを待っている女優の卵ケイティ。運命の男は現れた、優しい仮面をかぶって。彼の子を宿しているとわかった時、彼が復讐と金への欲望にとりつかれていることを知る。「それでも彼を愛している」…。彼女は罠にはまってゆく-。小気味よいサスペンスタッチの表題作他、黒魔術のようなパーティーにまぎれこみ、そこから出られなくなる恋人同士を描く「蛙」、“精巧な美女人形”に翻弄される三人の男女の姿を描く「現場」の三篇を収める。
ヴェトナム戦争の英雄エリスは、やっと帰国したイギリスの人里離れた場所で孤独に暮らしていた。そんな彼の前に、突然自動小銃を持ったヴェトコン部隊が姿を現わし、有無をいわさず襲ってくる。わけもわからずショット・ガンで応戦するエリス。やがて意識を失った彼が次に目を覚ましたとき、隣りの部屋では彼の恋人と、命の恩人でもある親友が死んでいた…。どちらも彼のショット・ガンで頭を吹き飛ばされて。一体何が起きたのか?
死の直前に刊行された『天球の回転について』によって近世の宇宙観に大革命をもたらした地動説の主唱者、コペルニクス。だが果たして彼は真の宇宙像を表し得たのか?アイルランド・ポストモダン文学の旗手がさまざまな仕掛けをめぐらして描く新感覚の伝記小説は、読者を知的興奮の渦に巻き込む。
「アラジンと魔法のランプ」や「アリババと四十人の盗賊」「シンドバードの冒険」など『アラビアン・ナイト』(『千一夜物語』)の中には、我々になじみ深い話がたくさんある。恋物語、こっけい話、悪漢小説、教訓話。これら“人間臭さ”に充ちた壮大な物語の世界を、アラブ、イスラムの文化に目をむけながら、99の謎を手がかりに詳しく、楽しく解説する。
美濃明智城の落城後、光秀は若くして諸国放浪の旅に出た。知謀の将、北条氏康。上洛を窺う今川義元。天才武将、武田信玄。そして運命の人、織田信長。-権謀術数渦巻く戦国の英雄たちとの出会いの中で、光秀は何を見、何を学んだのか。優れた知性と誠実さとを備えた光秀を本能寺へと駆り立てたものは何だったのか。『明智軍記』にヒントを得、練達の作家が史実と想像力とを駆使して、新たなる光秀を描く。渾身の書き下ろし長編。
1年前、不慮の事故で夫を亡くし、行き場を失った相馬千鶴は小学1年の沙耶を連れて伯父の家に身を寄せる。子供のころ母と2年ほど過ごした田舎町。千鶴が戻ったことを知った幼なじみ5人が歓迎パーティを開いてくれた。懐かしい再会。が、話題は22年前のあのことに。寺の古井戸に幼女が扼殺され投げ込まれていた事件だ。実は仲間のひとり高村の子供も去年、同じ手口で…。そして今度は裕司の愛猫が首を絞められ川に。厚子の娘桜子が校庭の焼却炉で…。さらに奇怪な殺人が。
盛岡発の東北新幹線〈やまびこ〉が東京駅に近づいた時、マネージャーの古山博が女優の杉本美也子のいる個室を訪れると殺されていた。女優の死体の傍には古山が紛失したライターがあった。女優には江波浩一という歳下で俳優の恋人がいた。事件の二日後、やはり〈やまびこ〉に同乗していた女優の森啓子が密室状態の自宅で死んだ。警察の捜査とは別に、古山達は独自の捜査をはじめて、幾つかの成果をあげる-。芸能界を舞台に展開する連続殺人事件を描く書き下ろし長編ミステリー。
西暦2020年、世界は混乱の極にあった。21世紀初めにアフリカで発生したエイズを凌ぐ疫病が世界中に猛威をふるい、ソ連ではゴルバチョフ失脚後、政治体制が二転三転し、国民生活は疲幣しきっていた。米国は経済力の極度の低下によってかつての超大国の面影はなく、ヨーロッパ各国はEC域内にとじこもっていた。いまや日本だけがハイテク産業を中心として隆盛をきわめ、ハイテク軍事国家として世界の超大国たらんとしていた。そんな折り、ソビエトで内乱が勃発し、日本はイスラム諸国とともに反乱軍支持にまわる。日本の狙いがシベリアの地下資源にあるのは明らかだった。窮地に陥ったソビエト首脳は、かつてのライバル、米国に救いを求める。米国初の黒人大統領ウォーターズは、ジョージ・テイラー大佐率いる最新鋭ウォー・マシン配備の第7機動部隊をソビエトに派遣することを決意する…。
西シベリア平原では、日・イスラム枢軸国軍と米・ソ連合軍の凄絶な戦闘が繰り広げられていた。次々と使用される日本製ハイテク兵器の前に、ソビエト軍は壊滅状態にあった。逃げまどう避難民の列に、イスラム軍の残忍きわまりない化学兵器が射ち込まれていた。20世紀末に起きた最後の中東戦争でアラブ軍が使用した核兵器によるイスラエル消滅と、2005年の米国による南アフリカの首都プレトリアへの核攻撃後、核兵器は全面撤廃されていたため、核による反撃はできない。皮肉なことに、崩壊へと驀進するソビエトの最後の望みは、米国陸軍第7機動部隊だけだった。第7機動部隊司令官ジョージ・テイラー大佐は、戦況を逆転させるために日本軍基地への奇襲攻撃を企てる。ついに、ノボル・カバタ将軍率いる日本軍との直接戦闘が開始されるのだった…。
女子供というけれど、引くに引かれぬ意地もある。メルをたずねて三千里、はるばる来たぜエルファンへ、敵はサウスの大神官、花をも欺く超絶美形。襲いかかるは大火災、降るは銀色涙雨。愛がいっぱい夢いっぱい、知恵と力と科学の子らの、冒険活劇スペース異世界ファンタジーこれにて一件落着編ときたもんだ。
ロシア革命直後、密かに日本へ持ち込まれたというロマノフ王朝の秘宝を狙って、ふたつのスパイ組織が日本に潜入した。敵の正体は、クーデター失敗後のKGBから分かれた〈ロシア共和国GA〉と超保守派の〈ソユーズ〉。共和国内での実権を握るための活動資金として、金塊奪還を企てたのだ。敵同士の暗闇に巻き込まれた秘密特務官・梨香は自らも金塊の捜索に着手、ついに東京湾に眠る秘宝を発見する。だがそこで待ち受けていたのは、同時に金塊へたどり着いていた敵組織とのみつどもえの海底戦だった…。
香港に赴任している私は、ここでの生活に満足していた。食べ物も旨いし、なにより美貌の中国人秘書との情事にすっかり溺れていた。次第に妻の存在が疎ましくなってきたある日、秘書が案内してくれた秘密パーティで食した超美味な特別料理に魅せられてしまった。そしてその日から妻が行方不明に…。全編を奇妙な恐怖で包んだ異色ショートホラー&サスペンス集。
1995年1月27日午後6時47分、第三次世界大戦勃発。6時51分終結。その間、わずか4分。そしてその実事を知っているのは、ワシントン郊外に住む一小児科医だけ。恐怖の核戦争をスラップスティック風に描いた快作「第三次世界大戦秘史」。終りのない内乱に明け暮れるベイルート。17歳の少年戦闘員ライアンは、停戦を実現するすばらしいアイデアを思いつくが…。中東紛戦を戯画化した表題作「ウォー・フィーバー」。エイズが蔓延した21世紀。低下する一方の出生率を上げるため、国家によるセックスの強制が実施される(「エイズ時代の愛」)。イマジネーションを刺激する14篇を収めた最新短篇集。