1992年1月発売
女子供というけれど、引くに引かれぬ意地もある。メルをたずねて三千里、はるばる来たぜエルファンへ、敵はサウスの大神官、花をも欺く超絶美形。襲いかかるは大火災、降るは銀色涙雨。愛がいっぱい夢いっぱい、知恵と力と科学の子らの、冒険活劇スペース異世界ファンタジーこれにて一件落着編ときたもんだ。
ロシア革命直後、密かに日本へ持ち込まれたというロマノフ王朝の秘宝を狙って、ふたつのスパイ組織が日本に潜入した。敵の正体は、クーデター失敗後のKGBから分かれた〈ロシア共和国GA〉と超保守派の〈ソユーズ〉。共和国内での実権を握るための活動資金として、金塊奪還を企てたのだ。敵同士の暗闇に巻き込まれた秘密特務官・梨香は自らも金塊の捜索に着手、ついに東京湾に眠る秘宝を発見する。だがそこで待ち受けていたのは、同時に金塊へたどり着いていた敵組織とのみつどもえの海底戦だった…。
香港に赴任している私は、ここでの生活に満足していた。食べ物も旨いし、なにより美貌の中国人秘書との情事にすっかり溺れていた。次第に妻の存在が疎ましくなってきたある日、秘書が案内してくれた秘密パーティで食した超美味な特別料理に魅せられてしまった。そしてその日から妻が行方不明に…。全編を奇妙な恐怖で包んだ異色ショートホラー&サスペンス集。
1995年1月27日午後6時47分、第三次世界大戦勃発。6時51分終結。その間、わずか4分。そしてその実事を知っているのは、ワシントン郊外に住む一小児科医だけ。恐怖の核戦争をスラップスティック風に描いた快作「第三次世界大戦秘史」。終りのない内乱に明け暮れるベイルート。17歳の少年戦闘員ライアンは、停戦を実現するすばらしいアイデアを思いつくが…。中東紛戦を戯画化した表題作「ウォー・フィーバー」。エイズが蔓延した21世紀。低下する一方の出生率を上げるため、国家によるセックスの強制が実施される(「エイズ時代の愛」)。イマジネーションを刺激する14篇を収めた最新短篇集。
ラオス国境沿いにあるヴェトナムのアメリカ軍基地に一人の兵士が転属されてきた。男の名前はトム・ライト。敵襲を何度も生きのびてきた優秀な狙撃兵であった。だが、ライトの配属された部隊は常に戦死者が続出するため、誰一人彼の回りに近づこうとする者はいなかった。通信兵ジャクソンは、ライトの面倒を見ることを命じられたことから彼と親しくなり、〈スターライト〉と呼ばれる狙撃用の夜間スコープに隠された驚くべき秘密を打ち明けられる。なんと、ライトの持つ夜間スコープには次に戦死する人間の姿が浮かび上がるというのだ。一方、前線基地はすでにイカレた兵士たちの吹きだまりと化していた。M-16ライフルをギターがわりにして、ジミ・ヘンドリックスの歌詞でしか会話をしないロック狂の兵士レナルズ。雷が同じところには落ちないという俗信から、わざと弾痕の開いた戦闘帽をかぶっている分隊長のリアンダー。ライトにまつわる伝説を利用して、怪しげな保険を始めて一儲けをたくらむイカサマ師のラボウフなどなど。死の恐怖におびえる兵士たちは、さまざまな狂態を繰り広げていた。やがて戦況は悪化して、ライトはスコープに映し出される奇妙な《死者の棲む街》の話をし始め、ジャクソンも彼も、やがてその街の住人となることを告げたのだった…。ジョーゼフ・ヘラーの「キャッチ22」や、ティム・オブライエンの「カツィアトを追跡して」の流れに続く、新進作家による異色の戦争小説。
美術教師・桑野香織、社会科教師・早川美津子。2人の美人教師が、悪徳教師の毒牙にさらされる!豊麗な27歳の肢体を緊縛され、夜通し嬲り抜かれる香織。22年間、守りつづけた処女を、赤銅色の剛直で抉られる美津子。昼休みに、放課後に、今日もまた屈辱のレイプがはじまった。
奈緒子だけがもつ麗美な体臭…それは水仙の花の香りに似ていた。年若き叔母・奈緒子に思いをよせる少年。真之の一途な真情に迫られて、許されない背徳と倒錯の行為にのめりこむ叔母。少年の寝室で、トイレで、ベランダで、両親がいない白昼に、獣のように肉をぶつけ合う、激しくも甘い、ひと夏の体験…。
オレ、この手紙を読んでいるときって、28歳やろ。28歳ってどんな感じや?考えようとしたらツマ先がちょっと上がって、見上げるような感じになる。オレは10年後のオレに今のオレのことを教えてやる。オレがどんな生活をして、どうやって毎日を過ごし、どれくらいのことを考えているか、ここに書く。オレはオレやから、オレはオレのことを忘れるわけないけど、たとえば8歳のオレがどんなことを考えていたのか、ほとんどわからなかったりするから、オレはオレのためにきちんと書き残しておいてやることにする。-卒業を間近にひかえた高校生の日常をユニークな文体で描く、魂の冒険物語。
イエス・キリストと12人の使徒は、ローマ帝国の植民地支配に苦しむユダヤ民族解放に立ち上がる!ナザレの英雄伝承の中にキリストの愛と死を捉えた歴史ファンタジー。
戦争末期の離島での“特攻”命令を待つ若き特攻隊長と若い島の娘でもある女先生の、苛烈な非日常の中の“愛”。処女作「はまべのうた」から「島の果て」「徳之島航海記」「アスファルトと蜘蛛の子ら」を経、昭和24年末の名篇「ロング・ロング・アゴウ」まで、島尾敏雄初期秀作を収録。
20世紀ソヴィエト文学の「異端者」ザミャーチンの代表作。ロシアの政治体制がこのまま進行し、西欧の科学技術がこれに加わったらどうなるか、という未来図絵を描いてみせたアンチ・ユートピア小説。1920年代初期の作だが、最も悪質な反ソ宣伝の書として長く文学史から抹殺され、ペレストロイカ後に初めて本国でも公刊された。