1992年2月発売
マスコミ関係者が相次いで怪死を遂げた。一人は宣伝部の伊沢、もう一人はカメラマンの斉藤。いずれも派手な死化粧が施されていたことから犯人は同一と思われたが、二人を結ぶ接点は見つからない。やがて浮かびあがった共通のキーワードは“アリス”。80年代を駈け抜けた青春の光と影のハーモニーは、遂にトレンディ犯罪をも生み出していたのか…。
身分違いの大名のお姫さまに一目惚れして失恋した次郎吉は、生来の敏捷さを買われて火消し人足になった。屋根瓦を音もなく走る練習を重ねながら、火付けで材木の高騰を狙う悪徳商人を懲らしめたこともあった。正義感が強かったのである。その次郎吉が、大名屋敷専門の盗っ人に身を落とした理由は…。ご存知“鼠小僧”誕生までの痛快時代娯楽。
パリスは和平とヘレネーの二つを賭けて、スパルタ王メネラーオスとの一騎打ちにのぞんだ。だが、闘いの最中、何者かが射た矢がメネラーオスを負傷させる。パリスの計略と誤解したギリシア軍との戦いは、避けられないものとなった。トロイアの財宝を狙うギリシア諸将の思惑どおり、戦いの火蓋が切られた。巨大な攻城櫓が次々に城壁に掛けられ、ギリシアの大軍がトロイア城内に攻め込んでいく-。
3世紀の大和を襲う脅威ー。それは、西の大国、倭の軍団と、闇と破壊の神。不思議な力を持つ少女・美々花と、大王一族の青年・鷹彦が、未曽有の危機に挑む。平和な大和の国に迫る倭軍の兵士、そして、天も地も呑み込む巨大な竜巻。はるか時間の流れの向こうから甦る古代ロマン、超SF伝奇シリーズ第2弾。
浪人よ起て!徳川幕府を震憾させた慶安の謀反劇。まるでソ連の政変のように、杜撰で、不安定で、不可思議だ。謎の人物、由比正雪は何を狙うのか。正雪を唆す妖艶な女、素心尼。老中・松平信綱との奇怪な繋がり。“疑惑”の男と女が虚虚実実の江戸に暗躍する、新しい時代小説。
老舗宝石店の美人女社長を奴隷調教したサドの淫獣たち。次の獲物は華道家元の若妻・美穂。その汚れなき若肌を淫靡な眼が舐めずりまわす。激しい肉の調教に呻吟する若妻の、豊かな双丘を割り、灼熱の剛棒が熟れ始めた蜜の源流を抉りまわす。柔肌におされた烙印は、一生消え去ることはないのか…?
1967年の第3次中東戦争以後、イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区。1987年、アラブ人とユダヤ人が最も激しく対立するこの地に、イスラエルの作家グロスマンは分け入った。難民キャンプ、ユダヤ人入植地、イスラエルとヨルダンに分断されてきた村-。ユダヤ人としての自らの存在を問いつつ、占領地に生きる人びとの怒り、絶望、狂信をありのままに綴り、中東問題、民族問題の核心に迫る渾身のルポルタージュ。
眼の前には雄大な青空があった。自分だけがぽつんとそこにいる-。だが、生きていくことは、とてもしんどい、けれど刺激的なエンターテインメントだ、と思いたい。家族の崩壊を前提にドラスティックに生きる高校生を描く期待の新鋭の中篇小説集。
ただひとつ、ずっとわかっていることはこの恋が淋しさに支えられているということだけだ。この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ。-絶対の愛の感情と喪失を透明な夜の夜間の中に描いた「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」の三部作。