1992年5月発売
ヨーロッパに広く流していたお噺のなかから、表題作をはじめ「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン」などを著者ペローの文学観で編みなおした「昔話集」は、当時の社会に大きな影響を与え、現在も読みつがれている。本書はドレの画とともに、散文八編だけでなく韻文三編も加えた、そのすべてを紹介。
慢性腎不全を患うみずえに不審な生体腎移植の話が持ちあがった。時を同じくして起きた、みずえの実家、神田の古書店に対する地上げ攻勢、婦女暴行魔の脱獄、そして何者かの影に怯える美しいスペイン研究者・理絵…。神田界隈を背景に私立探偵・岡坂神策が錯綜する謎に挑む。大人のミステリー。ハードボイルド長編。
死体の傍にあったゲーテの詩は犯人を告発するダイイング・メッセージなのか?タロット占いをしていた二階堂日美子は彼女自身が死者になって驚く。身辺に何か不吉な犯罪を予感したとたん今度は親友門田京子が自宅密室で殺されたとの報せが。ゲーテの詩ファウストが事件の鍵をにぎる本格長編ミステリー。
長い人生の迷いを、夜の闇にたとえて生死長夜という。心ならずも男たちを不幸にし、その倍くらい不幸になった女、漂泊の涯てに行き倒れの死を願う女、偶然の再会にも、妻の顔を思い出せない老残の男、大僧都の身を捨てて恋に滅んだ因縁の男…愛憎の迷いの中で生きてゆく人間を描く、心にしみる傑作短編集。
隋の煬帝とは従兄弟、北朝の名門・李淵が挙兵し次男李世民の活躍で無血の政権獲得に成功。唐王朝がうぶ声をあげた。女帝武則天の周をはさんで、絢爛たる時代が花ひらく。玄宗皇帝の宮廷に楊貴妃の笑声が、乱舞する美女群の嬌声が、弦歌の音色とともにこだまするー。中国史の醍醐味の極みを描く。
東京に着いた寝台特急「さくら」に男女の射殺体、しかもスーツケースには5000万円の札束が残されていた。その札が4年前、少女誘拐殺人の身代金に使われたものと判ったから、捜査陣は俄かに色めき立つ。少女の父の復讐劇か?十津川警部が父親に迫るが彼には鉄壁のアリバイが。会心の鉄道ミステリイ。
令嬢探偵キャサリンは恋人の浜口とシンガポールに行く。そのツアーは新婚や不倫のカップルでいっぱい。不吉な予感のなか、二日目に新婚の沖田しのぶが浜で溺死体に。彼女は莫大な遺産を相続した直後だった。犯罪の匂いをかぐキャサリンは調べ始める。シンガポール、バンコク、香港を舞台の華麗海外推理集。
美人の女性警部の前に、猟奇殺人事件の死体がー。パディントン駅から遠からぬハムステッド・ヒースで、その腐乱死体が発見された時、なぜかMI5と英国公安部が動きだした。スコットランドヤードのブランチ・ハンプトンが捜査を進めていくとそこにはー。複雑な過去が鮮かに甦る傑作長編推理。
日常の深底に澱む不透明で苛酷な世界。人生の悲哀を呑みこんだ苦いユーモアと豊かな情感とに支えられる阿部昭の小説空間。「自転車」「猫」「窓」「散歩」「手紙」「童話」「道」ほかの短篇で繋ぐ『無縁の生活』、「人生の一日」「水のほとりで」「天使がみたもの」などを収める芸術選奨新人賞受賞『人生の一日』。二つの作品集から二十篇を収録。
「女人高野聖」として、法力を駆使して聖天院光悦と壮絶な戦いを繰りひろげる真王。突然、強力な霊力が真王に伝わってきた。「-我が名は織田信長…」なんと、本能寺の変で滅んだ信長の怨霊までが、この世を支配しようと蘇ってきたのだ。首都攻略を目指す信長は、黄金獣を操り聖天院を倒そうとする。黄金獣と悪霊獣ゴモラの対決で破壊されていく東京の街。2大悪獣に対抗するため、「鬼獣」を呼び出そうとする真王。だがそのためには、生きながら霊界に行かなければならないのだ。
ダンスこと団子翔市と、ゴールドこと金田辰巳の名コンビが、たまたま黄金探しにチャレンジ。こんどのターゲットは、サイパン沖に沈む、旧日本海軍の金塊2トン、時価数十億円だ!古代イスラエルの金貨でもうけた(「オレたちの黄金伝説」読んでくれたかな?)3億円も、バブルがはじけてスッカラカン。なけなしの三百万をはたいてサイパンに渡ったものの、詐欺にあうやら、幽霊騒動にまきこまれるやらで、前途は多難…。はたして、めでたく金塊を手に入れることができるのか?
かつての東京『中央』。この淫猥な街に一人の男が降り立った。エリス・レーザー、生命体の“魔”を生きる糧とする魔族である。強烈な“魔”の匂いにひかれて行った街の片隅で、エリスは同じ顔をした美しい女たちを見た。彼女たちをつくった医師ソイフォは言う、“街の支配者ディラン様は美貌を食すのだ”と。ディランの中の“魔”に食欲をそそられたエリスは、ディランの愛人で絶世の美貌の主、高月祭と共に動き出したのだがー。頽廃の香り漂う魔都に繰り広げられるエロチズム・アクション。