1992年5月発売
イグニッションキーをひるねと、エンジンが吠え、ヘッドライトの両眼に灯が点ったー。ロータス・コーティナ、ヴァンデン・プラ・プリンセス1300、スカイラインGTB、キャディラック、ルノゥ5アルピーヌ、レインジ・ローヴァー、ダットサン510、フェラーリなど、14台の車には、同じ数だけのドラマがあった。様々なクルマと様々な人生が交錯する一瞬を鮮かに描いた14の傑作短編。
桜子とヤマトは、播州平野の小さな町で暮らす大学生。学生から社会人へのわずかに残された時間の中で、二人はあやふやな関係の答えを捜し始める。友達から恋人へ、たった30センチの距離を泳いでゆけない水槽の中の哀しい魚に心を託し、彼の本当の気持ちを探る桜子。三代続く女系家族の家で、自分らしく生きるために彼女が選んだ新しい道は…。22歳のせつないラヴ・ストーリー。
199*年、全体主義国家としてソ連は甦り、40年あまり前に立案されたユダヤ人追放計画を実行に移そうとしていたー。計画名は〈冬の宮殿〉。一方、元ナチス親衛隊将校はイスラム原理主義政権と結託し、ユダヤ人の完全抹殺という、かつて果たせなかった野望を遂げんとしていたー。計画名は〈ファル・ツィーオン〉。計画を察知したCIAは、元工作員サム・コールをモスクワに派遣する。
アリスンは演劇学校で女優を目指す20歳のニューヨーク娘。まるっきり違う人間になることが大好きな彼女に欠かせないものは、芝居とドラッグ、そしてセックスー。ボーイフレンドは山ほどいるけど、みんないいかげんだし、女友だちにも困らされてばっかり。やっとめぐり合えたディーンと純愛を育んでみようかなと思ったのに、やっぱりみんな、黙って見守ってはくれなかったー。
ウォール街の証券マン、ニックは、偶然巻き込まれた事故で突如“透明”になってしまった。透明になったら無限の自由が手に入ると思っているあなた、ちょっと待って下さい。透明な人生は決して楽ではありません。食事は?買物は?生活費は?でも見えても見えなくても、人は生きていかねばなりません。透明人間の苦難と哀しみの底から、不透明な現代が浮び上がってくる秀逸な作品。
安全なねぐらを求めてニューヨークの街をさまようニックの背後から、彼を万能のスパイとして利用しようとする秘密情報機関の魔手が迫る。透明人間には、仕事をし、食事をし、自宅で寛ぐというごく当り前の生活も許されないのか?それどころか、恋人と目を見つめあうことさえ不可能なのだ。苛酷な現実を、創意工夫と旺盛なチャレンジ精神で克服していく、透明なヒーローに拍手を。
古代マヤ文明展が引き金だったー。人類学者ケイトが「神への愛のため、生贅の首を斬り、背中の皮を剥ぐ」儀式について、メトロポリタン美術館で講演した同夜、儀式通りに殺人が起こった。偶然、この講演を聴いていたローク警部補は、生贅に指名されたケイトを護衛するが、いつしか二人はお互いに強く心惹かれていく。一方、数名にしぼられた容疑者は、次々と殺しの擬式の犠牲に…。
憤怒と憎悪が渦巻く荒廃した街、ブロンクス。その一角にあるラガーディア中学校で、黒人刑事による黒人生徒射殺事件が発生した。すでに死亡していた少女とともにトレーニングルームに立てこもっていた少年の動機は?刑事の正当性を主張する警察と、事なかれ主義を決め込む市当局を横目に、教え子を眼前で殺された教師ヒリヤーは真相糾明に立ち上がる。社会派小説の巨編、登場。
射殺された生徒が遺した詩にこめられたメッセージとは何か?そして死んでいた少女はなぜ下着を着けていなかったのか?必死に真相を探る教師ヒリヤーに、射殺した当人であるフランクス刑事も力を貸す。緊迫の度を加える中学校ではまたも生徒が殺害され、同級生たちが次々と拘引されていく。激情の塊となった生徒たちと警官隊が衝突するなか、ヒリヤーは真実に向かって疾走する。
「サウダージ」、それは失われたものを懐かしむ、さみしい、やるせない思い。地球上の各地から、人びとが流れつく都市トウキョウ 癒しがたい喪失感を抱えて生きる“旅の途上”の若者たちを描く、新鋭の異色長篇。
酔って帰宅したダルジール警視は、裏手の家の寝室で展開される光景に思わず目をこらした。灯がともり、カーテンがひらかれたと思うと、裸身の女性があらわれたのである。だが、つぎの瞬間、女性のわきには銃を手にした男が立ち、夜のしじまに銃声が轟いた。女の死体をまえにたたずむ男は、現場に駆けつけたダルジール警視にむかって、妻の自殺を止めようとして銃が暴発したのだと主張した。しかし、目撃者のダルジール警視は、こいつは殺人だと自信満々だった。はたして、どちらの主張が正しいのか?一方パスコー主任警部は、つぎつぎと警察に送られてくる自殺をほのめかす手紙の差出人をつきとめるよう、ダルジール警視に命じられていた。内容からして、謎の差出人は今度の事件に関わりのある女性と推察されたが…。人間の生と死に秘められた苦痛と謎を鮮烈に描いた本格傑作。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞作。
故郷銀河からやってきた〈BOX 13111〉とテラナーを乗せたハルト船は、〈クレスト4〉のローダンたちとの邂逅をはたした。そこへ基地のエンジニア、キボシュ・バイウォフから交渉を求めるメッセージが届いた。人質をとるための罠の可能性はあるものの、交渉せざるをえない。そこでローダンは、チャイ・クールーを長とする交渉使節の派遣を決定した。クールーはコルヴェットKC-21でパルヤル星系へ向かったが…。
宇宙船〈シェナンドー〉は、ゆたかな自然のひろがる未知の惑星に到着した。キャリバンと名づけられたこの星で乗組員一行が出会ったのは、ヒューマノイド風知的生物だった。だが、記念すべき“最初の接触”の場で不慮の事故が発生、キャリバン人の一人が死んでしまった。両種族は、この悲劇を克服できるのだろうか?メンバーは必死で解決策を模索するが…。新鋭が宇宙における知性の意義を問いかける本格宇宙SF登場。
いつもどおり、研究室で心地よい昼寝を楽しんでいた数学者のぼくに驚愕すべきことが起こった。なんと、無意識に幽体離脱をやってしまったのだ!肉体を離れて意識だけになったぼくは、一冊の案内書に導かれ、ヒルベルト空間をー。数学の概念が文字どおり実体化した奇妙奇天烈な世界を目指した…。“無限”の実像を探求するため。鬼才の名に値する真の鬼才が怒涛のアイデアでSFと数学の極北を探求する超絶マッドSF。
かつては力ある魔道師ナカールのもとで栄えた都市カシュマラー。だが、そのカシュマラーもいまは大国ヘロデに征服され、市中にはヘロデ軍の傭兵として警備にあたるダルタル人があふれていた。そんななかで、子供だけを狙う連続誘拐事件が発生した。恐慌をきたす市民たちをよそに、カシュマラーの元軍人たちは、〈将軍〉と呼ばれる人物を中心に地下抵抗組織リヴィング党を結成し、政権の奪回をめざして画策をはじめた…。
リヴィング党の首魁〈将軍〉が暗殺された。犯人は、魔道師ナカールの城に隠れ住んでいる〈魔女〉だった。しかも〈魔女〉は、市中を騒がせている誘拐事件にもかかわっているらしい。彼女はいったい何をたくらんでいるのか?いっぽう〈将軍〉を失ったリヴィング党は、新たな指導者のもとでカシュマラー奪還に向けて最後の闘争を繰り広げようとするが…。都市の支配権をめぐる熾烈な争いを描く、人気作家入魂の意欲作。
ひとりの娼婦が殺された。嫌疑をかけられたイール氏は、隣近所の誰からも嫌われている孤独な独身男だった。極端にきれいずきな彼の唯一の楽しみは、アパートの向かいに住む若く美しい娘アリスを覗き見ることー。夜ごと部屋の明かりをつけず窓辺に立って彼女の様子をながめ、静かに恋の炎をたぎらせていた。ある夜、彼は恐ろしい出来事を見てしまったことから、人生の歯車を狂わせはじめる…。愛と誘惑、謎と裏切りの物語。
海底火山の爆発によって誕生した新島を、英国の領土にせよー海軍省の密命を受けたハーフハイド大尉は、帆船時代の遺物ともいえる老朽艦ヴァイスロイ号の副長として、フィリピン近海へと赴く。だが島は、すでにロシア海軍の誇る新鋭巡洋艦の戦隊に占領されていた。しかも戦隊司令官は、彼に敵意を抱くゴルジンスキー大公。ハーフハイドは大公の狡猾な罠に落ちて捕えられ、絞首刑を宣告された。海洋冒険シリーズ第2巻。