1993年11月発売
日本中のサラリーマンが夢中になっているコンピュータ・ネットワーク・ゲームがある。新入社員としてスタートしてキャラクターになりきり、幾多の苦難を乗り越えて、出世の階段を昇っていくー、その名もカイシャ・クエスト。だがある日、プレイヤーの一人である平凡なサラリーマン・村田は奇妙な事に気づいた。自分がゲームの中で作った資料が、現実の会議で他人の資料となって提出されたのだ…。傑作書き下ろし長篇。
心理療法士アランの治療していた患者カレンが自殺した。ある日、彼は新聞を見て愕然とする。自分と彼女の性的関係を示唆する事実無根の記事が載っていたのだ。身の証を立てるにはカレンの診療記録が必要だが、医師の守秘義務のためそれは公開できない。そんな折、女性患者二人が次々と奇怪な死を遂げる。患者の中に犯人がいると考えたアランは調査を開始するが、危険は彼の身辺に迫っていた。新鋭の精神医学サスペンス。
上陸部隊を従えた日本の巡洋艦戦隊が、南大西洋の英領フォークランド諸島に向かった。同島を占領し、英国の補給線を脅かすのが目的だ。英国海軍は南米南端のビーグル海峡で日本艦隊を迎え撃つべく、キャメロン少佐指揮するコルベット艦ブライアを派遣する。初の指揮艦を得たキャメロンだが、たかだか千トンの小艦に対して日本艦隊はあまりに強大。海峡の狭隘部を爆破して敵を阻止せんとする捨て身の攻撃は成功するのか?
クラシックを断念し、ジャズ・ピアニストに転向したジョニーは、無気力な毎日を送っていた。だが昔の恋人が何者かに殺され、彼の生活は一変した。彼女を熱愛していた骨董商が、ジョニーこそ殺人犯だと信じ、復讐してやると脅してきたのだ。数日後、彼は暴漢に襲われ、ピアニストの命である左手を砕かれた。はたして骨董商の差し金か?胸に怒りを秘め、彼は姿なき敵に立ち向かうー。気鋭の女性作家が放つ傑作サスペンス。
動揺するな。涙を見せるな。これが殺人事件を取材する記者の鉄則だ。だがホームレスの救援所で起きた凄惨な殺人に、わたしは思わず言葉を失った。ボランティアの女性が、傘で串刺しにされて殺されたのだ。いったい誰がこんなむごいことを。わたしは救援所にボランティアとして潜入し、ひそかに調査を始めるが、やがて次なる殺人が…。大都会の異常な犯罪を追う女性記者ナンの姿を、緊迫感溢れるタッチで描くサスペンス。
誰もが悪戯だと思っていた。荒野の岩山にペンキを塗りつけることに、目的などあるはずがない。チー巡査も同じ考えだった。だからこそ、犯人を見つけたと同僚が無線連絡してきたときも、すぐに駆けつけなかったのだ。だが、現場で彼が見たものは、炎上するパトカーと同僚の射殺死体だったー。アメリカ・ミステリ界を代表する実力派が放つ人気シリーズ第五弾。
一枚のフロッピーディスクに、ある大学教授の生涯の記録が打ちこまれていく-。彼の名はレオポルド・スファックス。フランスに生まれ、第二次大戦中には反ナチ運動に参加、その後アメリカに移民し、文芸評論集『悪循環』を発表して、一躍、時代の寵児となった。だが、彼の研究室に「彼女」が現われた日から、スファックスの栄光に満ちていたはずの過去は、もろくも崩れはじめる。そして、ついに起こった忌まわしき殺人-。英国文壇の俊英が技巧の粋を凝らして「究極のフーダニット」に挑む問題作。
ドイツとフランス、父と母、現在と過去、音と光、友情と裏切り、男と女…。主人公シャルルは親友とその妻との三角関係に悩み、ひたすら17世紀の音楽に没頭していく。鬼才キニャールが現代に甦らせる絢爛たるバロック小説。
(あれだけの規模の修理を、最前線で行うとは…。)海軍の艦上偵察機「彩雲」の機長・千早猛彦は、わずか三か月半前のトラック沖海戦で「大和」「鞍馬」と同等以上の被害を受けて着々と回復してゆく姿を何度か見ていた。だが、この日、メジュロ環礁内の雲下には一隻の艦艇、一機の戦闘機、一人の兵士の影も発見できなかった。米軍はどこに来寇するのか。呉鎮守府の作戦会議に居並んだ幕僚たちの表情に緊張が走った。「我が軍の全艦が修理を終えるのに、あと三か月…」それまでの迎撃は、航空機による戦艦撃沈しか途はなかった。
アメリカ独立革命、フランス革命につづいてヨーロッパではナポレオン戦争に突入、世は大動乱の第一幕が下ろされていた。本篇の主人公J・オーブリーは地中海のネルソン艦隊の小型補助艦艇ソフィー号の艦長に任ぜられ、商船の護衛や索敵作戦に当たっていた。艦長着任まもなく、ナオ岬沖を航行中、フランス私掠船に遭遇、奇襲攻撃を敢行し三隻を拿捕した。つづいてスペイン軍艦カカフエゴ号と死闘を演じ、ディロン副長の活躍でこの艦の拿捕に成功、しかし右腕とたのむディロンを失ったのだ…。ナポレオン艦隊と戦い、地中海を血で染める男たちの壮絶な日々。ネルソン艦隊の栄光と苦闘を描く。
ロンドンに帰る途中つかのま馬車をとめたステーヴァートン伯爵の前に若い娘が降り落ちてきた。娘の名はペトリナ、退屈な生活にすっかり嫌気がさして学校を脱走した、後見人は冷酷でまったく頼りにならない、という。しぶしぶペトリナを馬車に乗せた伯爵は、やがて自分がその「無責任な後見人」であることを知った。どうやら伯爵は、とんでもなくお転姿な被後見人を背負いこんだらしかった…。