1993年2月発売
1944年6月1日、政治犯としてゲシュタポによって逮捕ー。言語を絶する災厄のさなかにあってなお「人間」という恐るべき種への透徹した、無私の眼差し。若い日をアンテルムとともに闘った妻マルグリット・デュラスの自伝小説、『苦悩』の原証言でもある戦時下ドキュメント小説の極北。
本書は、ある四合院を舞台に、そこに暮らすさまざまな人物がかかえる住宅、結婚、離婚、教育、差別、老後の問題等を織りまぜながら、庶民生活の喜怒哀楽と風俗を生き生きと描く。現代中国社会の深奥を知る、話題の長篇小説。
三百万年前に地球に出現した謎の石板は、ヒトザルたちに何をしたか。月面に発見された同種の石板は、人類にとって何を意味するのか。宇宙船のコンピュータHAL9000は、なぜ人類に反乱を起こしたのか。唯一の生存者ボーマンはどこへ行き、何に出会い、何に変貌したのか……作者の新版序文を付した傑作の決定版!
ガルヴァンが部屋の扉を開けた時、彼女は血の海に倒れていた…。世界最高の人気女優の命を狙う謎の組織の正体は?大統領の秘密に満ちた行動の真意は何か?驚愕の物語、遂に完結。
いつのまにか生れていた扇千造が、いつ手ひどくぶったたかれ蹴とばされて、どこでどうくたばることになるのか、だれにもわからない。ゆきあたりばったり、扇千造は、どこからともなく体当りしてきそうな人々に、他の誰でもない扇千造らしく応答をし、ふるまっていく他はなさそうなのだ。読者を小説世界の楽屋に招き入れて、対話に誘う〈ゆとり〉の一冊。
戦争で片脚を失い竹細工職人として寡黙に生きた父。美しいが土地の言葉を話さず、よそよそしかった母。いじめられた少年時代の孤独な日々の思い出。そして反権力を叫んだ紛争世代の決定的な裏切りの記憶。弱者としての自分を切り捨て、外資系企業の有望な管理職を務めるまでに十分な生き方を手に入れていた納屋増夫が、大学医学部のスターと謳われる旧知の男と再会した時、その華やかな転身と裏切りは許しがたいものとして映った…。
紋章上絵師の章次のもとに、かつて心を寄せあっていた女性から、二十年前と同じ蔭桔梗の紋入れの依頼があった。その時は事情があって下職に回してしまったのだが、それは彼女が密かな願いをかけて託した紋入れだった…。微妙な愛のすれ違いを描き直木賞受賞作となった表題作「蔭桔梗」。下町の職人世界と大人の男女の機微をしっとりと描いた11編の作品を収録した珠玉の短編集。
エリザベスは、テッドの喚き声が忘れられなかった。成功疑いなしの舞台初日前夜、大女優の姉はなぜか追いつめられ、深酔いし、テッドとの婚約を解消しようとした。そして翌朝、彼女の死体がテラス下の中庭にー。エリザベスは検察側証人として、その夜の記憶を失ったテッドと対決することになった。犯人は憎い、でもテッドは好き…。サスペンスの女王が描く華麗で怖ろしい世界。
確かに“狂犬”は狂っていた。女たちの手足を縛り、殺し、犯すことでしか彼は満たされない。しかも“狂犬”はインテリだった。計画は綿密に考え抜かれ、体毛を剃り、コンドームを使った。犯行現場にはただあざ笑うかのようなメッセージだけが残されていた。特別チームを組んだ市警本部の切り札はルーカス警部補。捜査に手段を選ばない辣腕刑事と連続暴行殺人犯の対決を描く長編サスペンス。
色の浅黒いローズと色白のレイチェルは同じ病院で生れた。誕生と同時に両親を亡くしたローズは、貧乏に耐え意地悪な祖母に仕え苦学して弁護士になり、レイチェルは、家族の愛情に包まれて贅沢に育てられ医者になった。情熱的な二人の出生の秘密を握るシルヴィの苦悩。愛の時が流れ、ローズの恋人ブリアンと男に裏切られたレイチェルは、ベトナムの戦地で運命の出会いをした…。
恋人ブリアンからの手紙はローズに届かず消息が絶たれた。九死に一生を得たブリアンとレイチェルは地獄のベトナムから奇跡的に脱出し強い愛の絆で結ばれた。作家となり成功した彼の幸福な結婚に絶望したローズが、過去の卑劣な男の報復で訴えられたレイチェルを弁護するという運命の皮肉。そして出生の秘密を明かすシルヴィ。二人の現代女性の真実の愛と友情を見事に描いた長編。
屋根裏部屋で見つけた催眠術の入門書。泣き虫の弟リトル・エディを実験台に、その恐るべき効果を試す少年ハリーを描くストラウブの「ブルー・ローズ」。マンハッタンを徘徊する悪鬼との対決を綴るバーカーの「魂のゆくえ」。他にも、18名の俊英たちが現代の恐怖を鮮烈に描き出す。『ナイト・フライヤー』『闇の展覧会』と並び称される傑作ホラー・アンソロジー、ついに邦訳版で登場。
1942年、第二次大戦の戦禍の及ばぬアラバマ州の小さな港町に、一隻のUボートが浮上した。沿岸に暮らす16歳の少年ビクターは、不気味な船影に遭遇するが、潜水艦は再び海中に姿を消す。自分を殺しかけた「巨大な黒い化け物」を追跡するうちに、ビクターはナチスの機密計画「カタログ」の存在を知り…。アメリカ南部の美しい自然を背景に、少年の冒険を描く青春小説。
本郷義明は外務省アジア局に勤務する若きエリート官僚という表の顔の裏に、イギリスの保険会社『コントロール・リスクス・リミテッド』の調査員というもう一つの顔を持つ諜報活動のエキスパートで、一撃必殺の武術“空拳道”の達人であった。日本のトップ商社マニラ支店長誘拐事件のおり大変世話になった美貌のマニラ娘ミゲールを香港に招待して休暇を過ごそうと訪れた本郷は、早くも謎の男たちから襲撃を受けた!その男たちは中国マフィア“十四K”という秘密結社のメンバーだった。なぜ…!?そして、彼らを操る黒幕の正体と、本郷・ミゲールふたりの運命は。
金沢発の寝台特急「北陸」の個室で首なし死体が発見された。被害者は東京に支店もある加賀料理店の経営者・関谷通利で、近く三度めの結婚をすることになっていた。現場には犯人のものと思われる毛髪が見つかり、その主は事件の翌日、上野に近い公園で死んでいた。容疑者の死に方に疑問を感じたその妹の奥山未知は、仲間と独自の捜査を開始すると、被害者の複雑な人間関係の中から意外な糸口が見つかった…。
大好きなアギーおばが食中毒で死んでしまった。原因はお手製の瓶詰めインゲン。事故のようなものと医師は言うが、ジェネットには納得がいかない。87歳とは思えないほど矍鑠としていたおばさんである。それに、食べ物に対する気のつかいようといったらなかった…。架空の田舎町を舞台に、マクラウドが別名義で贈る新シリーズ。不思議なおかしみが漂う、会心のユーモア編。
夜。ジョギングしていたわたしは一人の老人が轢き逃げされる現場に遭遇した。まもなく車の持ち主が判明、事件は落着したかに見えたが、犯人と目された不良少年の母親が、こともあろうに再調査の依頼をわたしの元に持ちこんでくる。かすかな疑念を掘り起こされたわたしは、困難な調査に着手するが…。幸運の女神に見放された女探偵ディライラの凛々しく健気な活躍。好評第2弾。