1993年2月発売
日本全図を作るため1801年4月第2次測量隊は伊豆へ。円周率に憑かれた若者を加え、せこいお上の予算に自腹を切る冒険が始まる。阿波の藍栽培の騒動に首を突込み、十辺舎一九の片棒担いで“飯盛歌舞伎”を作り、はては俳諧師殺しの詮索に夜も日もない。忠敬の一歩は、ああ道草喰いの旅とはなった。
泥に塗れても政商になる。若き野心家・高川吾一の“黒い野望”が弾けたとき、何が起こったか。政治を壟断し、巨利を窺う東大卒エリート。彼の仕掛ける〈悪の網〉に、誰がからめとられたか。永田町を震わせる日が近づく。ありとあらゆる手段を弄し、政商に成りあがろうとする男と仲間たちを描く悪漢小説。
黄金の勃起仏と一枚の地図ー。アフリカ奥地の一大黄金郷に通じる二つの“鍵”。しかし、黄金仏を持ち帰った探険隊のメンバーは、アフリカの呪術師の怪異な術で次々と消されてしまう。事件に巻きこまれた地虫平八郎は、必殺の拳法で呪術師に立ち向かう。地虫は渋谷区最強から史上最強への道を歩み始める。
ハイドリラ星区から帰還する探険隊の一部を乗せてヴァルカンを訪れた航宙艦〈エンタープライズ〉。ところがスポックの故郷であるこの星は、先に帰還していた探険隊員によって運びこまれた精神寄生物に汚染され、悪の巣窟と化していた。人々にとりついて兇暴化させる寄生物の魔の手は、スポックの父母や〈エンタープライズ〉のクルーにまで伸びる。カークらは、狂気が蔓延するこの星に平和を取りもどすことができるのか。
宇宙軍のベッカーは、軍法会議の弁護人に任ぜられた。被告は、突如ふたりの部下を射殺した軍艦の艦長。目撃者がいたにもかかわず、艦長は“自分はふたりを殺していない”と主張しているー。彼らは異星人だったから、殺人ではないという理由で。宇宙軍に異星人が潜入している。半信半疑で調査をはじめたベッカーは、いつしか危険きわまる罠に足を踏みこんでいた。人気絶頂レズニックのエンターテインメントSF快作。
18世紀半ば、独立前のアメリカ。イギリスとフランスは、インディアンをそれぞれ味方につけ、植民地戦争を繰りひろげていた。この戦乱の中、父親が司令官をつとめるイギリス軍の砦へ向け、二人の姉妹は友人の少佐らと出発した。その途上、敵インディアン、マグワの罠にかかった彼らは、白人の猟師ホークアイ、モヒカン族の若き酋長アンカスとその父親チンガチグックに救われるが…。アメリカ文学史上に輝く名作。全訳版。
苦難の末に、姉妹は砦へたどり着き、父親との再会を果たした。だが、喜びも束の間、フランス軍に完全に包囲され、砦は明け渡されることになる。イギリス軍は砦を後にするが、そこへ敵インディアンの群れが襲いかかり、姉妹はマグワに連れ去られた。彼女たちを救うため、ホークアイ、モヒカン族の父子らは、追跡を開始する。が、行く手には大きな悲劇が待っていた。大自然を舞台に描き上げる愛と友情と闘いの壮大なドラマ。
初代清衡は波瀾の人であった。藤原秀郷(俵藤太)の血を引く父・経清は、蝦夷の娘を娶り、清衡を生した。だが前九年ノ役に義兄・安倍貞任と結んだ父は敗死、母は敵方の清原氏に再嫁した。清衡は父の仇を養父としたことになる。続く後三年ノ役。清原氏に仇を報いた清衡は、藤原氏に復帰し、父、養父双方の遺領をその支配下に置いた。奥州藤原王朝の草創であった。巨匠独創の史観で描く歴史巨篇。
藤原王朝の礎を据えた波瀾の人・清衡に対して、2代基衡は重厚の人であった。父の遺業継ぐ30余年の治政は、王朝隆盛と重なる磐石を誇った。荒む京を逃れ、陸奥に下向した貴顕を迎えて、政体は整い、軍備は拡充された。蝦夷に胚胎する内乱の兆しも間髪をおかず潰された。一丸の奥州王朝に、もはや朝廷からの容喙の余地はなかった。仏国土建設の父の遺志を体現すべく、基衡は仏閣建立に邁進した。歴史巨篇。
元治元年夏、京・祇園の料亭に集った勤皇浪士の中に、小柄で色白、剃髪頭の物静かな男がいた。河上彦斎ー近藤勇、中村半次郎と並び恐れられた剣客だ。この夜の会合で、“佐久間象山を暗殺すべし”が多数を占め、ならば自分が、と彦斎は自ら決していた。宴がひけての帰途、彦斎は若い芸妓に声をかけられ、妓の自宅に誘われる。そこで彦斎は奇妙な依頼をうける…。巨匠の時代長篇。
旧ソ連ウクライナ共和国キエフ北方130キロにあったチェルノブィリ原発の事故は、日本の原子力発電所建設にも多大な影響を与えたのだった。北陸地方の一漁港であった森尾町に建設された森尾原発も例外ではなかった。大浜栄吉は森尾町で発行される森尾新報の記者として、現在も続く原発反対運動の取材を通じてエゴを丸出しにする醜い人間を見た。
わずか2時間の間に1人は銃弾で、1人は絞殺とその殺害方法こそちがえ2人の最高裁判事が殺された。そのあざやかな手口からプロの殺し屋の仕業にまちがいない。だれがなんのために2人を標的に選んだのか?ロースクールの美人女子大生が書いた事件の摘要書〈ペリカン文書〉が見えない敵の存在をあぶりだす。彼女に危機が迫る…。
輝くような美貌と炎のように激しい気性のスカーレットは、アシュレにいちずに思いを寄せているが、彼は心優しいメラニーと結婚。スカーレットはそれへの腹いせに愛してもいないメラニーの兄と結婚。そして南北戦争では南軍が敗北し、スカーレットはわずか十六歳で未亡人に…。一族を飢えから救うために手段を選ばぬスカーレットを陰に日向に支えるレット。二つの強烈な個性は、互いに反発しあうが、スカーレットの打算から二人は結婚。穏やかな生活が訪れるかと思われたが、愛娘の死を契機に運命は暗転し、レットへの真実の愛に目覚めたとき、レットはスカーレットから去っていった…。南北戦争を背景に展開する一大ロマン。
アラベスクとジャパネスク大正浪漫とボンデージ。友愛、征服、そしてサディズムとマゾヒズム。相反する混沌が妖しく融けあい、少年たちの官能はやがて静かに薫りたつ。SFの異才が狂気とエロス渦巻く仮想空間にメタファーな眩惑を企む禁断の耽美冒険浪漫。
1944年6月1日、政治犯としてゲシュタポによって逮捕ー。言語を絶する災厄のさなかにあってなお「人間」という恐るべき種への透徹した、無私の眼差し。若い日をアンテルムとともに闘った妻マルグリット・デュラスの自伝小説、『苦悩』の原証言でもある戦時下ドキュメント小説の極北。