1993年2月発売
工員浅辺宏一は病的なまでに嘘をつかずにいられない青年であり、自分の嘘を全うするためには会社を辞めることさえ辞さなかった。ところがそんな彼は、古代社会から脈々と続いた“嘘部”という集団の末裔だった。その才能を買われ、秘密結社「黒虹会」のプロジェクト・チームに編入された彼は嘘の才能を大きく開花させる…心理サスペンスの傑作。
江戸・寛政年間、幕府小姓組番頭の職を辞し、絵師となった朝霞桔梗之介は、艶の盛りの大店の内儀・万喜を道づれに、深山幽谷の木曽路を旅していた。かの地で人の首より樹木一本を大事とする世の不条理に激しい怒りを覚えた桔梗之介は、藩権勢を頼む山役人に凌辱されたいた娘を居合一閃で助ける。だが、礼を受けて訪ねた里で抱いた女は亡霊であった。
母は羊が二歳のときに死んだ。そして、小学校二年生になった羊の前に“新しいおかあさん”が出現する。作者みずからの生い立たちを素材に、血の繋がりのない母と子を、〈ほんとうの母と子〉に昇華させた芥川賞作家の感動の処女作。
趣味の競馬では、馬を見極める抜群の目を生かして行く度に大穴をものにし、淫らな女を見定める能力はさらにすごく、これぞと思った女はたくみに誘い出し、ベッドの上で調教師よろしく、自分ごのみの女に仕込んでしまう。今宵も性欲のおもむくまま、万馬券を狙って、牝馬に彼の鞭がはいる。最新ギャンブル官能長編。
モンスターが帰ってきた。ハリウッドに、スラムに、アジアの裏町に…。19世紀に描かれた物語は、今世紀の半ばにユニヴァーサル映画やその後継者によって姿形を得て、再びこの世紀末に甦るのだ。ヴィクトル・フランケンシュタインおよびその子供たち、そして原作者メアリー・シェリーに至るまで、創造主と創造物の織りなす愛憎のドラマが、SFやミステリーの鬼才たちによって紡ぎ出される。不死鳥の如く新たな翼を得て甦ったゴシック・ホラー・モンスターの傑作アンソロジー、最終章。