1993年5月発売
警視総監賞31回、指名手配検拳47件ー。すご腕の元警視庁刑事が書き下ろしたホンモノ警察小説。刑事のありのままの生態を描く。主人公の南郷大介は“チャンピオン”の異名をとる警視庁刑事。上背はたいしてないのに、立った姿は仁王のようだ。ちょっと厳つい顔も、見ようによっちゃ、筋モンそのもの。そんな南郷が、休む間もなく起こる殺人や強盗事件に全力ダッシュする。
一度仕事をしくじると編集者からゴミ同然に捨てられる雑誌ライター。かけだしとはいえライター北野弘に要求される取材内容は厳しい。棚ぼたなどあろうはずもなく、必死にスキャンダルを追いかける。その過程で彼は、特集記事の仕掛け、スクープの裏側、取材もなしに平然と記事を書く不良ライターの存在を知る。一度は出版社にほされた北町だが、懸命にライターの道を歩んでいく。ライターの心情と機微を現役ライターが描いた体験小説。
鋭く周密な観察で幼年期を綴る「千年」、漠然として白く燃え上り落着の悪い記憶の断片に纏る不安、恐怖・なつかしさを語る「桃」。心弱い父が美しく描かれ父と子の屈折した心情溢れる「父と子の夜」など、仄暗く深い記憶の彼方の幼年時代を、瑞々しく精緻に描出する阿部昭の秀作群。毎日出版文化賞受賞短篇集『千年』に「あの夏」「贈り物」を併録。
ある時は“コケティッシュ”な女、ある時は赤い三年子の金魚。犀星の理想の“女ひと”の結晶・変幻自在の金魚と老作家の会話で構築する艶やかな超現実主義的小説「蜜のあわれ」。凄絶なガン闘病記「われはうたえどもやぶれかぶれ」、自己の終焉をみつめた遺作詩「老いたるえびのうた」等、犀星の多面的文学世界全てを溶融した鮮やかな達成。生涯最高の活動期ともいうべき晩年の名作5篇を収録。 陶古の女人 蜜のあわれ 後記 炎の金魚 火の魚 われはうたえどもやぶれかぶれ 老いたるえびのうた
“歌に生き恋に生き”た世界的に名を馳せたオペラ歌手・藤原義江ー。スコットランド人の貿易商を父に、下関の琵琶芸者を母に持った義江の波瀾万丈の生涯を感動的に描いた第104回直木賞受賞作。義江、父リード、母キクそれぞれの“漂泊”の人生、義江と女性たちの華麗な恋の曼陀羅を、同郷人の目で描く。
不意に部屋に侵入してきたTVピープル。詩を読むようにひとりごとを言う若者。男にとても犯されやすいという特性をもつ美しい女性建築家。17日間一睡もできず、さらに目が冴えている女。-それぞれが謎をかけてくるような、怖くて、奇妙な世界をつくりだす。作家の新しい到達点を示す、魅惑にみちた六つの短篇。
謎の教団「マリアの部屋」と出会い、潜入取材を試みたフリーライターを待ちうける数奇な運命ー。「イエスの方舟」事件をモデルに壮大な構想力で、もうひとつの〈歴史〉を問う、新世代の旗手によるスラップステックス長篇小説。
那月の母・刹が遂に行動を開始した。その後を追うようにして那月も闘いの世界へと身を投じる。目前に立ちはだかるのは武術を極めた女子プロレスラー、煌鬼魔利。横浜アリーナを舞台にして、いま闘いの嵐が吹き荒れる。
大東京を恐怖のどん底につき落とす連続殺人が発生。犯行は金槌によるメッタうちと絞殺が交互する。犯人は一人か、あるいは別人か。現場には常に謎の数字を記したメモが…。被害者たちを結ぶ“失われた環”を探せ。ご存知速水三兄妹がつきとめた驚愕の真相とは?奇想天外な推理の新旗手の長編第三作。
日本のVIPの乗った航空機を墜落させた巨悪組織は、通信網の中枢を怪電波を使ってコントロールし、日本政府をパニックに陥れた。日本でただ一人、国家安全委員会から「殺しのライセンス」を与えられた世界最強の男・黒木豹介は、美貌の秘書・高浜沙霧と共に組織壊滅のため出動する。待望の黒豹シリーズ。
「頼子が死んだ」。十七歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて相手を刺殺、自らは死を選ぶー、という手記を残していた。手記を読んだ名探偵法月綸太郎が、事件の真相解明にのりだすと、やがて驚愕の展開が。精緻構成が冴える野心作。
二十数年にわたって、養父殺しの尊属殺人罪で獄窓につながれた美女が再審を請求する。司法界の名物老弁護士・猪狩文助は、不幸な女・香奈子を救うため、弁護に乗り出す。そして彼女が殺したとされる養父の遺体を土葬された棺の中から取り出し、再鑑定するように請求した。猪狩文助シリーズの長編傑作。