1993年発売
お上の刺客をなんとかかわし、一行は八月霜柱立つニシベツで折り返した。喘息の発作に見舞われながら、息子の一途な恋に心を砕き、はたまた弟子の片思いから母娘の仇討事件に首を突っ込み、“臆病剣”達人の命の洗濯の会を開くなど、奥州百十一次、“全き善人”忠敬の一歩は事件をかい潜りかい潜り江戸へ。全五巻。
新婚旅行先のオーストラリアで、田川は七人の老人たちが断崖から次々と飛び下りるのを目撃してしまった…。それから十七年。中古マンションに引越した田川家の周辺に奇妙な事件が続発。娘・裕果の部屋に洋服ダンスから現われる不思議な少女は誰なのか。十七年前の事件がチラつくのは何故か。真相は?
懲りない面々がムショから出てきて、悪党退治の大活躍。もちろん主役は作家になった安部譲二。悪徳地揚げ屋を懲らしめ、新興宗教を粉砕し、賭場荒らしを撃退し、中学校の校長先生をやり込める…。長年のヤクザ生活で鍛えた手口とゲリラ戦法で胸のすく現代の必殺仕置人ぶりが楽しめる痛快長篇ピカレスク。
浪花の刑事・ブンこと文田は大阪府警捜査一課の若手で、総長こと総田部長刑事と名コンビを組んでいる。本部にバラバラ事件の報が飛び込んできて、エリート青年刑事五十嵐と競争になるが、ブンは京都風を吹かせる五十嵐と合わない。そこへ今度は心中事件。二つの事件は妙な所でつながりブンは振り回される。
虐殺されてゆく恋人の血まみれの姿を眼前に見せつけられたあげく、命を奪われた少女。その母親は次期副大統領候補と見なされている財界の大物だった。二人の殺害は最近起っている連続アベック殺人のひとつなのか?殺人訓練を受けているCIA内の変質者のしわざなのか?検屍官ケイの苦闘はつづく。アメリカ・ミステリー作家協会賞、イギリス推理作家協会賞受賞。
五人の日本人が、アフリカ奥地ナラザニアを探検して莫大な秘密を密かに持ち帰った。しかし、彼らはブードゥーの呪術で次々に殺されていった。所持していた黄金仏と一枚の地図は果して何を意味するのか?呪術師と死闘を繰り返し事件の核心に肉迫した地虫平八郎に魔手が迫る。伝奇スーパーアクション第二弾。
織田信長の時代、国家の政権は四人の手に握られていた。柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、そして滝川一益である。なかでも一益はひときわ武勇にすぐれ、関東の人々は滝川という名を聞いただけで恐れおののいたという。得意の鉄砲で武田軍を壊滅させ、勢いに乗る一益、しかし本能寺の変が彼の人生を狂わせ始めた…。晩年は出家の道に入り、越前で波乱の生涯を閉じた悲運の猛将の全貌。
失踪した息子の伝記を作り、自費出版したい-。ゴーストライター・島崎のもとにその話が舞い込んでから、彼は広大な館で残された資料の山と格闘することになった-。年譜、インタビュー、小説中小説、モノローグを組み合わせながら進行する、これは読者への挑戦状。
誘拐犯からの連絡が、こともあろうに警察に届くとは。約束の場所に、しかし犯人は姿を見せなかった。そしてそれっきり音信が途絶えて…。児童心理の恐るべき深さ、移植医学の陥穽。最果てまで行きついた現代社会の闇を背景に描く、不可解きわまる誘拐事件。
それは世界一ロマンチックな飛行機だった。第二次大戦の発端となった英仏の対独宣戦の直後、大西洋横断航路の豪華飛行艇パンアメリカン・クリッパーは、ニューヨークを目ざし、サウサンプトンを離水する。だが、同機の機関士エディ・ディーキンは妻を誘拐され、その生命と引換えに不可解な要求を受けていた。さまざまな乗客の思いを乗せて、クリッパーは嵐の大西洋上空を飛ぶ。
クリッパーを不時着させろ!エディはようやく知った。誘拐犯たちは、乗客の一人で護送中の凶悪犯を奪回しようとしているのだ。-母国を離れるイギリス人ファシスト政治家の一家、その娘に恋する逃亡中の宝石泥棒、アメリカ人劇作家と駆け落ちする人妻、それを追ってきた夫、ナチから逃れ亡命するユダヤ人科学者…。彼ら乗客の人生の落ち着く先は、そしてクリッパーの運命は?
極寒のタジク共和国山岳地帯から、必死の脱出行を続ける英国秘密工作員パトリック・ハイドは、ソ連軍用機の撃墜現場に出くわした。なぜかそこには顔見知りのCIA部員の姿も見えた。大がかりな陰謀の目撃者となったハイドは各国情報部の標的となる。孤立無援の彼は、かつて命を救った上司のオーブリーに助けを求めるがー。はち切れんばかりの迫力とサスペンスが溢れる待望の長編。
秘密工作員ハイドは謎の撃墜事件と、もう一つの旅客機墜落事故との関連に気づいた。陰謀の首謀者の手は、各国上層部にまで伸び、英情報組織の長オーブリーも完全に封じ込まれてしまった。彼の姪キャスリンは、罠にかかってFBIから追われる身だ。真相に近づいたハイドを守れるのは、今や彼自身のみ。心身を極限まで酷使するハイドの凄絶な孤軍奮闘ぶりを描く、冒険小説の決定版。