1993年発売
あたし、健康な女子高二年生。固肥りだけど、体臭が強くて、肌がところどころ、ざらついてるのが悩みなんです。一年のときから美術の先生が好きになって、ずっと、思いつづけていて、先生が結婚してから、とうとうガマンできなくなって、「一度、外で会ってください」と言ったんです。そして、とうとう先生にせがんで第三京浜ぞいのモーテルに連れこんで、もらったんです。先生ははじめ迷惑そうだったけれど、でも、あたしとベッドに入ると、先生、すぐ熱心になってきて…。
まだ武生が幼い頃、自ら命を絶った父。純粋な愛にすべてを生きて-。父の幻を追い求めるうち、いつしか武生は世界じゅうをあてどもなく彷徨う旅人となった。何かが満たされない。孤独な心が乾き疼く…、だが、タイの小島で野生のままに生きる青年ノムと巡り会い、彼の魂は初めて揺さぶられる…。
亡父の跡を継いで出版社社長を勤める四十歳の桂子さんは、夫の急逝に見舞われる。フロッピイに記憶された夫の遺言。彼との関係が疑われるどこか危うげな女たち。未亡人となった桂子さんの前に出現した謎の財界の大物と或るプロジェクトー。竹林の別荘、豪奢な邸宅、上流階級が集う秘密クラブで繰り広げられる濃密な〈交歓〉。華麗典雅な筆致で描く、知的刺激に満たち倉橋ワールド。
九歳の少年ルークは“悪魔の子”だった。これまで自分の弟や幼児を刃物でめった刺しにして殺していた。しかし、日頃はおとなしく、天才的なIQをもつ彼は、自分が殺人を犯したことを全く覚えていない。両親から凄惨な性的虐待を受け、その苦痛と恐怖がトラウマとなって多重人格者となり、自分の知らぬ人格が凶暴な殺人者となるのだ。むしろルークは、子供を弄ぶ残虐な大人たちの犠性者だった。ルークと同じように幼児虐待の辛い体験をもつ探偵バークは、治療センターに保護監禁されている少年のために敢然と立ち上がる。真の“悪魔”をさがしだし、彼らに代償を払わせなければ、バーク自身も自分の過去との決着がつかないのだった…。魔都ニューヨークに暗躍する無法の探偵バーク・シリーズ第6弾。幼児虐待をテーマに現代の犯罪と悲劇を追求してきた人気ハードボイルド・シリーズ最終作。
歴史・時代小説の魅力あふれる作品群を創造する巨匠・気鋭が、その知的想像力を発揮し、大きな感銘をあたえるべく力を込めた代表作を収録した年度版アンソロジー。
戦争と革命の世紀の口火をきったヨーロッパ大戦とロシア革命。ウクライナの古都キエフにはいずれの勝者になることもなく市街戦を闘った市民義勇軍がいた。20世紀文学に不朽の名をとどめるブルガーコフの世界を凝縮した処女長編。
黄色い煉瓦のオズの国、『ガリバー旅行記』の小人国…。多元宇宙を旅するぼくらが見たものは、かつて親しんだ小説そのままの世界だった。本の中の世界はみんな宇宙のどこかに実在していたのだ。だが、どんな宇宙に逃れても、邪悪な異星人は執拗にぼくらを追ってくる。ぼくら一家に安住の地はないのか?そんな時、ぼくらの前に思いもよらぬ人物が現われた…。巨匠が最大の情熱を傾けて描き上げた力作長編、ここに完結。
〈同盟〉には、アリの政治的立場だけでなく命まで狙う動きがあった。それを知ったアリは初代アリがコンピューター内にのこしたデータのすべてを手に入れ、後見人である叔父からさえも独立した勢力基盤をひそかにかためはじめる。おりしも首都ノヴゴロドで反体制派による破壊活動が頻発し、アリの身近はさらに緊迫するが…。人間製造の技術を手にした人類の姿をえがいて数々の問題を提示する傑作巨編、堂々の完結。ヒューゴー賞受賞作。
19世紀初頭のイングランド。結婚式を翌日に控え、友人たちと独身最後のパーティを楽しんでいた産科医クロフォードは、ふとしたはずみで、とある宿屋の中庭にあった石像の指に結婚指輪をはめてしまった。ところが、その石像の正体は眠りについていた吸血鬼だったー。クロフォードの行為は吸血鬼との結婚の儀式になってしまったのだ。目覚めた吸血鬼は、クロフォードを自分のものにしようと執拗に後を追いはじめた…。