1993年発売
わたしは恐怖を知っている。心理コンサルタントとして、患者に恐怖心を克服させるのが仕事なのだから。が、死体を切り刻み、その一部始終をヴィデオに撮る異常殺人鬼を追っている今は、湧き上がる恐怖を抑えることができなかった。しかし殺人鬼は必ずこの手で探しだす。殺された、愛するソニアのために…。心に傷を負った男の復讐行を描く鮮烈のサスペンス。
アマゾンの熱帯雨林で乱開発を進める業者が、首を切られて殺された。さらにオーストラリア近海で原油流失事故を起こしたタンカーの船長と石油会社の社長、事故対策責任者が相次いで殺された。環境破壊を引き起こした当事者が何者かに殺されるという事件が続発していたある日、環境保護雑誌「アース・マザー・マガジン」の女性記者テス・ドレイクは、テレビ制作会社に勤務する男ジョゼフに出会った。灰色の瞳をもつその男の謎めいた魅力にひかれ、テスはたちまち恋に落ちた。だが、その彼が突如姿を消してしまった。テスはニューヨーク市警の警部補クレイグの助けを借りて行方を追うが、数日後彼が変死を遂げていたことを知る。やがてジョゼフの住んでいたアパートが発見され、クレイグと共にそこを訪れたテスは、不思議なレリーフを見てそれを写真に収める。その時からだった。テスのまわりで奇怪な事件が次々と起き、やがて彼女自身も何者かに命を狙われ始めた。しかも奇妙なことに、その暗殺者を追って別のグループも動き始めたのだ。いったい何が起こっているのか?
時局は変遷し、第一次ソロモン海戦。少年向けの軍事冒険作家南郷武は、報道班の一員として、新設された第8艦隊旗艦鳥海に乗っていた。目指すはガダルカナル島ルンガ沖の米上陸船団だ。ミッドウェー海戦で日本軍の攻勢を食い止めた米軍は、早くも本格的な反攻作戦に着手し、ガ島への上陸を開始していたが、日本機の執拗な空襲で荷役作業は進まない。第八艦隊は豪州重巡キャンベラ、米重巡シカゴ等を次々に撃破し、幸運の女神は日本軍に微笑みかけていた。直後、南郷は見た。目前に陸のごとき巨大な氷山が迫るのを…。
フランスに滞在中のイギリス人を拘禁せよ-。戦争が再開されると、ナポレオンは命令を下した。ちょうどパリを訪れていたヴェルニータと両親は帰国もかなわず、官憲の目を逃れて隠れるほかなかった。しかも、父が急病で亡くなってからは、お針子をして得たわずかな収入で、やっと暮らす毎日。このままでは飢え死にしてしまう…。意を決したヴェルニータは、つくった服を高く買ってもらおうと注文主であるナポレオンの妹ポーリーンのもとに出向く。そこで彼女は、ひとりのエレガントな紳士に出会った…。
老中・松平定信の非公式な隠密巡察役として、肥前長崎の地を踏んだ絵師・朝霞桔梗之介。不義密通の仕置きで拷問と女郎務めの日々を送っていた女・ムメを郭から連れ出した桔梗之介は、高名な女流陶物師・咲弥の屋敷に転がり込んだー。雲仙から肥後熊本へ、今生の地獄を見た女を伴い、桔梗之介の憂世の旅は、またしても剣難・女難の連続となる。
いわれなき人殺しの罪を背負わされた京極斑鳩之介は、岐蘇福島の道場の師範代にと請われ、妻の志津を連れて江戸を背にした。しかし鬼同心鬼頭一角らの執拗な追跡は続き、志津は捕えられ、女郎屋へ売りとばされたあげく、自ら命を絶ってしまう…。鬼頭一味の斬殺を心に誓う斑鳩之介の活人剣が怒りの閃光を放つ。書下ろし長篇時代小説。
林市はなぜ夫を殺害し、その死体を切り刻んだのか?飢えのためにいきずりの兵士に身を任せ、一族により川に沈められた母と、少量の豚肉との交換で屠夫のもとに嫁にだされた娘…。嗜虐的な凌辱、獣のようなセックス、飢えと恐怖と絶望の果てに、林市が見たものは?中国社会の暗部を怒りと悲しみで描き、容赦なく人間性の最深部を抉る現代台湾フェミニズム文学の最高傑作。
岩手県沢内村の極貧農家に生まれた長作は、苦労の末に米作り日本一になる。しかし、減反政策により日本での米作りに失望した長作は中国に渡る。米作りに夢を求め続けた一人の日本農民の感動の物語。テレビドラマ「北の米」の原作。 プロローグ 中国への旅1 おんず2 炭焼き3 稗田4 戦争5 米作り6 日本一7 いのちの村8 苦悩の谷間9 再生10 黒滝江省方正県11 黄金の穂波12 日中友好水稲王13 老農の夢エピローグ およね地蔵
ワルシャワの一人のユダヤ人教師が、ナチの残虐を記録にとどめた。著者は、自分の周囲のできごとを冷静にみつめ、限られた情報を整理し、分析した。死の危険を賭して書かれ、保存された歴史への証言。
「ミステリー大賞」の受賞作品が作者不明。東京出版・文芸編集部の村瀬祐一は作者を探し出すよう命じられる。その過程で現れた妖艶な美女・結城真佐子。「あの作品はプライバシーの侵害です…」受賞作品には真佐子の人間関係が克明に描写されていた。いったいだれが何のためにこんな小説を書いたのか?謎を追う祐一は真佐子の魔性に引きずりこまれていく…。
春の訪れを待ちのぞむ二人の少女-。桜の花のように儚げな晴美と、蘭の花のように艶やかな美春。漆黒の髪と、その黒い瞳で少女たちの心を虜にする、弓削家の当主、葉月。亡霊のように現れては、晴美の心を見透かすように語りかける謎の庭師。四季の庭に、季節おりおりの花が咲き乱れる旧い館を舞台に、狂気の美が彩る殺人交響曲。新進気鋭が、華麗なる筆致で描く幻想耽美ミステリ。