1993年発売
幕末、京の都に名を馳せた「新選組」副長・土方歳三、多摩に生まれ、薬行商をしながら剣を磨き、天然理心流の奥義を極めた剣の達人。さらに近藤勇と幕府の浪士組に参加、池田屋襲撃で一躍その名をとどろかせる。士道の美学に殉ずるべく、一人我が道をゆく若き剣士は、北辺の地に炎のごとき最期の咆哮をあげた…。断髪に洋装、進取の気風あふれる土方歳三の、波爛万丈の生涯。
僕は殺されることにも慣れてしまったが、同時にまた憎まれることにも慣れていた。子供の頃から、まわりの誰もが僕を憎み、そのうちの何人かが僕を殺そうと決心するまでにその憎悪を募らせたのだ。僕が自分でも気づかずにいるちょっとした目つきや小さな仕草だけでも人が僕を殺したいほど憎むことを、何度も殺されて僕は知りつくしてしまっていた。
アメリアは、あと八日で十歳になる女の子。ある朝、家族みんなとけんかして、部屋にとじこもります。泣きつかれたアメリアの目に飛びこんできたのは、赤ちゃんのころ、お父さんが作ってくれた木馬のエスメレルダ。何気なくエスメレルダのたて髪にふれたとき、突然強い風が部屋を吹きつけ、気がついたときアメリアは、ほんものの空飛ぶ馬の背にいたのです。
駐車場で車を修理していた男は、いきなり立ちあがると、ショットガンをかまえた。そして、私立探偵レイ・ソマーの目のまえで、親友の息子サリーに銃弾を浴びせかけた。無残な最期をとげたサリーは、大学を卒業したばかりで、父親のあとを継いで弁護士になろうとしていた。そんな前途有望な若者が、なぜ殺されなければならないのか?怒りに燃えたソマーは、自分で犯人をつかまえようと独自の調査にのりだした。サリーの車で発見されたコカインは、何を意味しているのか?殺される直前にサリーがもちこんできた娘の失踪事件は、今回の殺人事件と関係があるのか?そして、娘の行方は?娘の姿を捜査し求めて街にくりだしたソマーは、路地裏で何者かに襲われ、意識をうしなった。そして、気がついてみると、そばには死体が…。退廃と暴力の街ニュヨークで生まれ育った男が、死と隣りあわせの調査に執念を燃やす本格ハードボイルド。
不世出の天才軍師・孔明は、すでに四十歳を越えながら、その美貌にかげりさえ見えず…。今、漢丞相となった彼は、主力軍をひきいて南中の地に出兵し捕われの身となるが…。
組合闘争にゆれる本多銃砲火薬店。その工場に勤める花城由記子が、遺書をのこして失踪した。社長の1人息子・本多昭一と心中するというのだ。しかし、昭一の遺体が発見されてからも、その行方は杳として知れなかった-。ついに殺人犯人として指名手配をうける由記子。姿を消した姉を追って、花城佐紀子は必死の捜索をつづけるが…。本格、社会派、サスペンスの見事な融合。ロマンにあふれた作風で、笹沢ミステリの原点をなし、第14回日本推理作家協会賞を受けた傑作長編。
「親の敵…」夜の闇につつまれた猿子橋のたもとで、秋山大治郎は凄まじい一刀をあびせられた。曲者はすぐに逃げ去り、人違いだったことがわかるが、後日、当の人物を突き止めたところ、秋山父子と因縁浅からぬ男の醜い過去が浮かび上がってくる「待ち伏せ」。小兵衛が初めて女の肌身を抱いた、その相手との四十年後の奇妙な機縁を物語る「或る日の小兵衛」など、シリーズ第9弾。
SF作家のおれのところに歴史小説の依頼がきた。しかもおれの先祖であるらしい。洞ヶ峠の日和見で悪評高い筒井順慶を書けというのだ…。型破りの発想で小説のジャンルの壁を破壊した表題作。芸能プロのグロテスクさを際立たせた「あらえっさっさ」、連続殺人犯に群がり利用するマスコミの本質を突いた「晋金太郎」、新宿騒乱事件を戯画化した「新宿祭」。初期の力作4編を収める。
ワシントンの情報屋から送られた極秘ファクスは、蔵元、高原、外岡の3人の総理大臣秘書官に、次期支援戦闘機開発をめぐる政界疑獄の発生を告げていた。彼らは、腐敗した政治家を放逐し、新たな政治理念に依って政界再編の道を切り開くべく、決然と行動を開始したー。恋人との別離や愛妻の死など、それぞれに苦悩しつつも繰り広げられる、誇り高き平成の官僚たちの熱い闘いは今。
むごたらしい恰好で男は絶命していた。両手の爪を剥ぎ取られ、額には深々と釘が打ち込まれ、内臓を泥のように破壊されていた。同じ頃、ヒューストンのハイウェイでは六人の男が機関銃の猛射を受け全員が憤死する。殺人課の刑事ヘイドンは二つの事件の捜査線上に浮上した狂信的組織〈テコス〉への接近を試みるが…。都市開発に絡む習慣的腐敗と、凄惨な拷問劇を描く異色サスペンス。
核戦争で灰燼に帰した地球、疑似生命体へと進化していくロボット、社会システムのために踏みにじられてしまう人間の尊厳、相互に浸透し交錯しあう複数の現実、絶望的状況の中で苦闘を続けるごく普通の職業の主人公たちーデビュー以来、近未来を舞台に悲惨な人間の状況を書き続けてきたP・K・ディックの終末的ヴィジョンの数々。「戦争」をテーマにした日本オリジナル短編集第三弾。
ロープが食いこんでねじれた首、飛び出たグロテスクな目ー。子どもばかりを狙う連続殺人犯「エディンバラの絞首人」。行き詰りをみせる捜査に焦った担当検事は、優秀だが、凶悪犯を殺害したため停職中の刑事マクモランに捜査への参加を命じた。マクモランは同様の手口の殺人を調べるうち、二十数年前の殺人事件との微かなつながりを追いはじめる…。緊迫感溢れるサイコ・サスペンス。