1993年発売
江戸・寛政年間、幕府小姓組番頭の職を辞し、絵師となった朝霞桔梗之介は、艶の盛りの大店の内儀・万喜を道づれに、深山幽谷の木曽路を旅していた。かの地で人の首より樹木一本を大事とする世の不条理に激しい怒りを覚えた桔梗之介は、藩権勢を頼む山役人に凌辱されたいた娘を居合一閃で助ける。だが、礼を受けて訪ねた里で抱いた女は亡霊であった。
母は羊が二歳のときに死んだ。そして、小学校二年生になった羊の前に“新しいおかあさん”が出現する。作者みずからの生い立たちを素材に、血の繋がりのない母と子を、〈ほんとうの母と子〉に昇華させた芥川賞作家の感動の処女作。
趣味の競馬では、馬を見極める抜群の目を生かして行く度に大穴をものにし、淫らな女を見定める能力はさらにすごく、これぞと思った女はたくみに誘い出し、ベッドの上で調教師よろしく、自分ごのみの女に仕込んでしまう。今宵も性欲のおもむくまま、万馬券を狙って、牝馬に彼の鞭がはいる。最新ギャンブル官能長編。
モンスターが帰ってきた。ハリウッドに、スラムに、アジアの裏町に…。19世紀に描かれた物語は、今世紀の半ばにユニヴァーサル映画やその後継者によって姿形を得て、再びこの世紀末に甦るのだ。ヴィクトル・フランケンシュタインおよびその子供たち、そして原作者メアリー・シェリーに至るまで、創造主と創造物の織りなす愛憎のドラマが、SFやミステリーの鬼才たちによって紡ぎ出される。不死鳥の如く新たな翼を得て甦ったゴシック・ホラー・モンスターの傑作アンソロジー、最終章。
20世紀末ーー凄まじい超能力を秘めた竜堂家の四兄弟に魔手が迫りつつあった。竜堂始(はじめ)、続(つづく)、終(おわる)、余(あまる)の四兄弟の力をわがものにして、全地球支配を企らむどす黒い巨悪の野望。しかし、竜堂兄弟に屈伏という言葉はない。巨悪の挑発は、最大の潜在能力を秘めた末弟・余を覚醒させた。待望のシリーズ第1弾!
日本全図を作るため1801年4月第2次測量隊は伊豆へ。円周率に憑かれた若者を加え、せこいお上の予算に自腹を切る冒険が始まる。阿波の藍栽培の騒動に首を突込み、十辺舎一九の片棒担いで“飯盛歌舞伎”を作り、はては俳諧師殺しの詮索に夜も日もない。忠敬の一歩は、ああ道草喰いの旅とはなった。
泥に塗れても政商になる。若き野心家・高川吾一の“黒い野望”が弾けたとき、何が起こったか。政治を壟断し、巨利を窺う東大卒エリート。彼の仕掛ける〈悪の網〉に、誰がからめとられたか。永田町を震わせる日が近づく。ありとあらゆる手段を弄し、政商に成りあがろうとする男と仲間たちを描く悪漢小説。